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第49話 筋トレ(再)

 俺は荷台で腕立て中である。


 隣ではルシ夫が同じく腕立て中である。


 こいつ一般的には物凄く強いんだけど一緒にいるのが俺とかアローケスみたいな化け物だから目立たなくて可哀そう。


 アローケスの黒体を二つ奪って頂いた結果俺の体に変化が出た。それも二つも。


 一つは胸がAカップくらいまで小さくなった。もう一つは何とは言わないが赤ちゃん位に縮こまって居たのが小学生くらいにまで戻った。


 アローケス曰く黒体のエネルギーで俺の体が強化された事により女性ホルモンを滝の様に生産させるというエノッシュの施術が抑え込まれたのだろう、暫くすれば完全に元に戻る可能性がある。との事!有難い事だ。


 夜中こっそりカナン国へと戻ると集合場所である借家に向かう。


 子供達はもう寝ていたがカゴが俺に飛びついて来た。よしよし可愛い奴め。それに何とも心地よい抱き心地になんかムラムラ…。ムラムラ?


 負けじとさっきまで一緒に歩いていたカサムが抱き付いてきて引き続きアンナ、クッ子、ハッシュにルシ夫。最後のが余計だったが俺たちは無事帰って来た喜びを分かち合った。


 アンナと一緒に来たオマイニーというエルフ。乗りが悪かったのでちょっと揶揄ってやった。


 「ピュレーンはどうした?もしかしてオマイの奴と良い仲になったか?」


 「それはありませんね。」


 むうぅ。すかした娘だ。


 「そうだろうな、あのオマイという奴は高笑いしながら危ない攻撃魔法をバラまく様な野郎だ。奴を乗りこなせるのは俺ぐらいの物だ。」


 「乗りこなすとか...厭らしい。ぶつぶつ…」


 「なんならお前も乗りこなしてやろうか?」 そう言って両手をグッパグッパすると汚物でも見るような目で見られた。


 あっしまった。口が滑った。あれ程反省したのに男に戻りかけた矢先にセクハラ発言するなんて。俺は何て業の深い男なんだ。


 「馬鹿!ガブってホント昔から女の子の気持ちが分かんない人だね!」


 素直に謝りました。


 しかし困った。えっ?何がって?


 ムラムラするんですよ。


 周りの女性陣全てに。黒体を2つ失っても尚ムキムキマッチョなアローケスは除くけどね。


 クッ子が上半身裸で飛び回っているのを見ただけでムラムラする。なんでソンナニ弾ンダ。むう、男って救いようが無いね。いつ天罰が当たっても文句言えないや。


 俺は自分の体に腕を突っ込むと黒体を一つ取り出し、走り回っているクッ子の尻に突っ込んだ。


 「クゥゥゥゥーーー!」


 妙な叫び声が部屋に響き渡った。


 アンナがカサムが。ヨエがオマイニーが挙句の果てにはルシ夫パーティーのナアさんまで手に持った杖や棒で俺の頭をタコ殴りにする。むむむ、クッ子め既に此処まで女性陣のハートをガッチリ掴んていたのか。


 暫くすると俺の胸が膨らみ始め、クッ子はクックに戻った。


 俺は黒体の効力とエノッシュに掛けられたという女性化の説明をしたのだが聞く耳を持っては貰えず、変な所に入れるんじゃないと散々お小言を言われた挙句やっと解放された。


 やれやれである。



 翌日、簀巻きにして馬車に転がして於いたオクを連れて王城に出かけた。


 鎧は其のままで後ろ手に縛り歩かせた。


 守備兵達はあからさまに異常な光景ではありながらも大臣であり征服軍の将でもあるオクの命令で次々と道を開けた。


 初めて会ったカナン王は太った男だった。5万(実質は3万しか集めれなかった。)もの大群で攻めたにも拘わらず大敗して戻って来たオクに激怒し、縛られている事にも激怒した。


「その者たちを捉えよ!」


「おっと王様。こいつが殺されても良いんですか?」


「構わん!」


”ぐあしゃ”


「おっと、動くから狙いが外れちゃいました。」


可哀そうに俺に近づいた兵は壁まで吹き飛んで床に崩れ落ちた。


「なっ何が望みじゃ。」


「リノ皇太子の無実の証明。全てはこの男の策略です。」


オクも渋々認めると王は半信半疑と言った風だがリノ達の釈放を命じる。


久しぶりに牢から出されたリノ達と俺たちは再会する。


「ガブ!やっぱり俺の事を愛してたんだな!」


馬鹿が治る様に右フックでグーパンチしてあげました。


「じゃあその男は置いて帰りますので。」


捉えたカノーケスからエノッシュの居場所は聞いたから此奴はいらない。


そう言って俺たちが帰ろうとすると王兵により戒めを解かれたオクが大声で笑いだした。


「はははははは、この国はもう終わりだ。植民地化も果たせずにカノーの加護無き今、此れからは衰退の一途を辿るだろう。俺は衰退したカナン等見たくは無い!」


そう言うと兵士に襲い掛かり呆気に取られている兵士から剣を奪うと自分の首を刺して自害した。


「悪党にはお似合いの最後だったね。」


カサムがポツリと言った。



「…と言った事が有ったのだよ。」


カノーがため息を付きながら出された暖かい紅茶を啜る。とても香りが良い。


「そう言えば貴方は何故経済を発展させようと?」


ポットを持った若い女性がカノーに聞いた。二十歳前後だろうか?長く美しいストレートブロンドが魅力的である。


「さあ何故だったかな?とにかく僕は生まれつき経済という物に興味があってね。もしかするとあの大恐慌の原因を理解したかったのかも知れんな。」


「あれは国家間の通貨取引に唯々お金を生むだけの仕組みを組み込んだからじゃなかったかしら?それにその記憶は貴方本人の物ではないわ...。貴方。」


「そういう君。僕をそう呼ぶその記憶こそ君本人の物ではないね。お前。」


「古い記憶の中に貴方と夫婦だった女性の物があったの。」


「僕の記憶の中にも昔君と添い遂げた記憶が…」


二人は静かに見つめ合った。


「そう、じゃあ折角ですから明日目が覚めるまでは夫婦でいましょうか?」


「良い提案だ!じゃあ俺は仕事に失敗して家でくだを巻くダメ亭主だ。」


「ふふふ。そんな風に見えるわ。じゃあここに居る間お金を入れてくれるのかしら?」


「ぐっ出世払いで頼む。それより酒だ。冷たいエールとホットドック!くそう、忌々しい。カナンにはもう少しでベースボールスタジアムが出来る所だったと言うのに!」


「はい、エール。氷魔法で冷やして於いてあげたわ。ベースボールを広めたの?私たちの知識を広めるのはご法度よ。それに野球と経済と何の関係が?」


「スポーツだってプロリーグが出来れば経済効果は莫大だ。音楽はもっとすごいぞ。全ては経済だ。」


美しい女性はクスクス笑いながらソーセージを茹でる。


「そうそう貴方に忠実だったカナンの民は誰かに踊らされたみたいね。」


「分かっているコーヤ、奴らに僕を閉じ込めるほどの結界は作れない。まったく昔から自分の実験の事になると俺たちに迷惑ばかり掛けやがって、あの進化オタクめ。」


「あら今日はコーヤじゃ無くて貴方の記憶の中のサリディーと呼んで。」


カノーはホットドックを受け取ると、テーブルにそっと置くと優しくコーヤを引き寄せキスをした。


閉じた目を開けたコーヤはニッコリ笑った。


「それに悪戯エノッシュには私からお仕置きしてあげるわ。彼どうやらこっちに来たみたいなの。」


読んで頂き有難うございます。

誤字訂正しました。

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