第48話 冥府のイカヅチ
「クッ子 何時までうっとりしている! チームデュークトライアングルフォーメーションだ!」
半分ヤケクソで叫びました。
川から上がってきた鎧武者はもうダメージから立ち直っていた。タフ過ぎである。此奴を100体量産すれば大陸を制覇できそうだと詰まらない事を考えながら蹴りを繰り出す。
足を掴まれた俺が放り投げられている隙にクッ子のクロスチョップが決まった。
フル支援を貰った二人掛かりで攻撃するが決定打が無いまま時間が過ぎる。
◇
結局鎧武者は一言もしゃべる事無く撤退した。
正直ホッとした。
俺は急いでカゴ達を迎えに行くとクッ子を荷台に押しやり子供達を馬車に詰め込みとカナンのヨエの所まで送る様依頼した。
そしてオクの足取りを追う。
翌日コーコーヤ平原に出る手前の山中にてクイーンベナトリア&ブラックエンジェルズと交戦中のカナン軍主力部隊に追いつく。前方とは遮断されている様だが褐色の鎧武者が戦闘に立ってクイーンベナトリアを1刀毎に削って行く。彼奴は止めようが無い。逆転の為にはオクを探して捕まえるしかない。
急いで接近しようとすると茂みに敵が潜んでいた。手とうで気絶させたが妙な顔で気絶しているそいつには見覚えが有った。ルシ夫だ。
「おい、おい!何こんな所で寝てるんだ!」
「あっ師匠!師匠を訪ねてみたら出かけた後で、ヨエさんから事情を聴いて助太刀に。そうしたら今誰かに物凄い攻撃を首に受けて。」
ドッコイセンさんやナアさん、ニジさんが集まって来た。
「ルシ夫大丈夫?回復を掛けてあげるから。」
ドッコイセンさんがルシ夫の涎をハンカチで拭きながら回復呪文を掛けてあげている。名前は変わっているけど可愛いし良く気が付くし抱擁揚力があってついでに胸も大きめである。いいなあ、ルシ夫には勿体ないくらいだ。
「助太刀感謝する。俺が周りの兵を片付けるからあの中にいるオクを捕まえて降伏させるように指示させてくれ。」
「師匠、オク大臣があの中だって分かるんですか?」
「おう、影武者の可能性もあるが一度見た。同じ気配だから間違いない。」
「俺が行って良いんですかね?あっ後、師匠に言い忘れたんですけど…」
「馬鹿、ルシ夫の手柄の為なんかじゃないから!プイ!」
ルシ夫が突然の俺の豹変に驚いて目をぱちくりさせているが意味は無い。ちょっとツンッってのをやって見たかっただけです。
「冗談だ。お前ではあの化け物を止められないだろ?さあ行くぞ!」
攻撃されているクイーンベナトリアは脚がもう2本しか残っておらず、腹も何か所も裂け其処から体液が噴き出し虫の息である。まあ元々虫だがな。最後の抵抗か尻から20cmくらいの子蜘蛛をわんさか吐き出した物だから子蜘蛛に襲われた敵軍は混乱を極めていた。ブラックエンジェル共も中々良い働きをしているが化け物武者がそっちに回れば10分も持たないだろう。
上級将校らしき兵を切り倒した俺に続いてルシ夫達が走り抜ける。
気が付かれた!
鎧武者が大蜘蛛に止めを刺さずに引き返してくる。
「ウオーター・ドラゴン!」
空中から巨大な質量を持った水流がまるで螺旋を描く龍が如く褐色武者を突き倒す。
「カサム!」
褐色武者は叩きつけられた状態から水龍をも受けとめるとその狙いを術者に向ける。
もう気絶しても知らん(俺)!
「トルディオンインフェルノ!」
魔石なしでこの魔法を使うのは初めてだ。空がポッカリと口を開き召喚された冥府の稲光が三又の槍となって敵武者を射貫く。無論属性は雷。しかし此奴はオマイにだって使いこなせないだろう。冥府の雷はどんな攻撃を与えても皹一つ入らない鎧をすり抜け中の若武者にかつて無い程の雷撃を与える。
「きゃあぁぁぁ」
女の声だった。まあ予想していた通りハッシュの後継機だろう。
初めてダメージらしい物を与えれたが残念ながら之でもダメだ。なぜって俺の方が先に昇天しそうだ。
「皆の者剣を収めろ!将軍のお達しである!」
ルシ夫がオクを羽交い締めにして喉元に刀を当てている。
鎧武者の動きが止まった。これが最後のチャンス!
力を振り絞り最大速度で鎧武者の背後を取ると、猪かと思うほど太い首をスリーパーホールドに掛けるて耳元で怒鳴った。
「大人しくしないとオクを殺すぞ!」
いやあ、どっちが悪人が分からないようなセリフである。しかしそうでもしないと勝てない。こいつらはエノッシュから何か命令をされて来ているはず、それがオクを守る事なら判断に迷う筈だ。そこに全てを賭けた。
”ずしーん”
文字通り地響きを立て鎧武者が地面に倒れ込んだ。
◇
俺はくそ重い鎧を脱がすと手を当てて体の中を探る。
これは傍目には体を撫でまわしている様にしか見えないのが難点である。やっぱりカサムが杖で後頭部を殴って来た。痛い!地味に痛いから!
「変態!触りたいなら私の体にしなさい!」
「師匠、俺の体でもいいですよ。」
煩い!集中させてくれ。
ハッシュから取り出したのと同じ魔力の超圧縮体、黒体を体内から浮かび上がらせるとそのまま自分の体にぶち込む。
一つ、二つ、三つ。こいつ3つも持ってやがった。ハッシュの3倍のパワーか?勝てない筈だ。
問題は三つ目を押し込もうとしても俺の体が拒絶して入らない事だ。仕方が無い戻すか。
「なぜ敵に情けを掛ける?」
もう気が付きやがった。
「お前、名前は?」
「私の名はアローケス。ハッシュお姉さまの妹でありキャプテンシリーズの栄えある4号機だ。」
あれ?1号と2号は知らないぞ。
「ハッシュが寂しがっているからさ、良かったら家に来いよ。」
ごめん、正直な所エノッシュの所に戻られてまたパワーアップして帰って来られるのが只々怖かっただけです。
「可哀そうなハッシュ姉さま、あれ程美しい筋肉をお持ちだったのに。お前に全てを奪われた。」
「来るの?来ないの?」
アローケスは「敗者に選択の余地も有るまい」と潔く軍門に下った。良かったー単純な奴で。
後はコーコーヤ国軍に任せて大臣を引き連れカナンに戻るぞ!
大臣自ら罪を告白させれば王も間違いを認めざる得ないだろう。
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