第46話 コーコーヤ戦役
カナン国の進軍は遅々として進まなかった。
直ぐに食料の減りが目に見えてきた。すると行く先々で食料を調達するという指示が出た。
最初は正当な対価を支払っていたのが、それも乏しくなると二足三文のはした金で領民の食料を略奪する様になる。コーコーヤ国が国境大橋を落としたので橋を仮設するのに随分な足止めを食らったのが大きかった。
コーコーヤに侵軍してからは魔物との戦いだった。
数に劣るコーコーヤ軍が魔物を焚き付け、若しくは自身が囮となり魔物を引き連れ襲って来た。
日増しに怪我人が増えて行った。
「今日は我が隊が食料調達の番である。この山中に村は無いと思われるので動物を狩る事にする。」
勿論他にも調達部隊はいる。捜索範囲が被らない様に俺たちは南と決められた。
しかし弓も無しに剣と槍だけでは不慣れな兵共にそうそう狩りなど出来る物ではない。
皆空腹を抱えながら足元の悪い山道を無言で歩く。
すると一人の男が走り出した。
その先には粗末な山小屋。
男は勢いよく扉を開けると中に居た木こり風の親父を背中から行き成り斬りつけた。
木こりは逃げ出したが直ぐに倒れて動かなくなった。
切った男は小屋にあった干しイモをガツガツと食らい始める。
「おい、てめーだけ狡いぞ。俺らにも食わせろ!」
兵達は我先と群がり小屋に会った僅かばかりの食料はあっという間に無くなった。
”ガラガラ”
薪が落ちる音がした。音の方向には若い村娘が一人怯えて立ち尽くしていた。その目は斬られ、うつ伏せに倒れてピクリとも動かない男を凝視している。
いきなり兵の一人が娘に飛びつき服に手を掛けた。
首筋と違い日焼けしていない白い胸元が露わになり兵は理性を失った獣の様にゲラゲラと笑う。
一人、また一人と兵達は娘に群がり、あっと言う間に着物の下に隠されていた白い肌が白日に曝された。
そして男達によって大きく開かれた娘の股に赤だらけの体が押し付けられ、黒ひげ口を大きく開けた下品な兵の顔が娘の胸に迫る、
そしてボトリと落ちた。
「…」
ゴロンと自分の胸で転がった生首を見て娘は声に成らない悲鳴を上げて失神した。
後ろから首を落とされた胴体からは血が滝の様に溢れだし娘の体を真っ赤に染める。
「手前!」
未だ生きている兵の一人が俺に切りかかって来た。
そう、未だ生きているだけだ。悪いが全員死んで貰おう。
見て見ぬふりをする積りだったが気が付いたら首を刎ねていた。
俺は先ほどまで兵士だったならず共に人生の終点を与えると娘を抱いて山を下りた。
◇
暫く下るとまた粗末な小屋が見えて来る。うっすらと煙が立ち上っている所を見ると誰かいる様だ。俺は警戒されない様に鎧と剣を置くと血まみれの娘を抱いて近づく。
「姉ちゃん!」
そこに居たのは大小5人の子供達だ。皆女に見えるが一番下は良く分からない。
「親は何処だ?」
「とっ父ちゃんは姉ちゃんと山に行って、母ちゃんは去年死んだ。」
真ん中くらいの女の子が教えてくれた。
「済まんが湯を沸かしてくれないか?体を拭いてやりたい。」
俺が上着を脱いで胸をさらけ出すと皆は警戒心を解いてくれた様だ。こんな風に女体化が役に立つとは予想もしなかった。
湯に服を浸し気絶した娘の体を拭いてやっていると娘が気が付いた様だ。
起き上がるなり、裸のまま妹達を抱きかかえると狭い小屋の片隅で震えながらこっちを睨んだ。
「俺はカナンの兵だ。父親の事は済まない事をした。だが奴らは始末した、と言っても死んだ者は戻らないよな...。」
最後は独り言の様に呟くだけだ。
「明日他の兵が来るかも知れない。奴らはコーコーヤへ進軍中だから2~3日もやり過ごせば通り過ぎるだろう。それまで成るべく煙を炊かない様にしてここに居る。」
そういって俺はそのままごろりと眠る。
しかし、朝起きると粗末な布が体に掛けてあった。
◇
「ほら」
小さい組の娘が俺に粗末な器を差し出した。中身は日根びた芋の尻尾と名も無き葉っぱが入った塩気の薄い汁である。俺は有難く頂いた。
その後、山に登ると昨日の兵士達の死体を見に行った。
捜索隊は未だ来ていない様だった。そして死体はかなり食い荒らされていた。
魔物が血の匂いを嗅ぎつけて降りて来たのだろう。この様子だとすべて魔物の所為にする事もできるかも知れない。
途中、鹿が居たので魔法を使って1頭だけ仕留めた。フレイムランスを小さく小さく絞ったフレイムアローが鹿の首を討抜く。腹を捌き、内臓はその場に捨てると肉塊を担いで持って帰った。
内臓を撒いたのは魔物が依って来ることを願っての事である。きっと魔物達は捜索隊の足止めになってくれるだろう。
現在カナン軍は今縦長に伸びた状態にあり、最後尾がオクが率いる近衛部隊となる。
奴らが通り過ぎら後方から突入する。そうする積りだった。
◇
「ほら、熱いから気を付けろよ。」
「ほふーほふー」
「あちゅい」
「うまぁ」
鹿の焼肉に子供達は夢中にかぶりつく。この分なら干し肉にする分は半分程しか残らないだろう。
大きな杭に刺された肉塊が焚火で焼かれていった。焦げる前に表面を剥いでドンドン粗末な木の器に盛ってやる。
「ガブ姉ちゃん毎日これ取ってきてくれよ!」
「ダメだ、毎日取ったら居なくなってしまう。」
長女が何か言いたそうだ。彼女はまだ父親の死や乱暴されかかったショックから立ち直っていない。
「どうしたカゴ。何か言いたそうな顔だな。」
「ガッ ガブさんが居なくなったらこの子達を食べさせていけるか不安になって。」
ふと、一人の男が頭に浮かんだ。
「一人心当たりがある。お前たち、一緒にカナンに来い。俺が何とかしてやる。」
◇
翌日、
日が高く成った頃に山肌を切り開いた小さな畑でチビ共の相手をしながら草を毟っていると小屋に兵が押し入った。だが彼らは隠して於いた食料を探し当てる事はできずに、万が一の為に表に出していた僅かなイモ類を一通り持ち出すと直ぐに兵達は山を下って行った。装備が上等だったから正規兵だろうか?カゴが妹達に何かあっても絶対に逆らわない様と言い聞かせていた事も功を奏した。
その兵達は更に麓のごく小さな集落で更に食料をかき集めると急いで戻って行った様だ。
俺はカゴ達に、2~3日で帰ってくると伝えると背後から兵達を追った。
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