第43話 それぞれのハーレム
ルシ夫がドッコイセンさんの腰に手を回しながら歩いている。反対の手ではニジさんと腕を組んで両手に花である。
そっちではリノがサランとイチャイチャしている。
おっ二人の視線があった。いや、お互い横を向いた。何反目してるんだあの二人は…。
俺も朝飯を取りに人だかりへと向かう。後ろからはカサムがピッタリくっついて出て来る。
リノがカサムを見ると眉をひそめた。
「カサム、ガブ、お前たちは将来俺のハーレム傭兵軍に入るんだぞ?」
ふんっ!だから何?女性同士の恋愛は禁止なの?俺本当は男だし。
ルシ夫がすかさず意見する。
「師匠の将来は俺の嫁になるんです!」
俺はため息を付きながら諭した。
「はぁー、ルシ夫。お前はもっと今のPTを大事にしなきゃ駄目だ。失ってからでは遅いんだぞ?
リノも王子なら国軍の将になる道だってあるだろう?王子がフラフラしていて国が傾いたらどうする気だ?俺が居たハニーランドなんか王とその取り巻き共がしっかりしないから戦争になって危うく国土の一部を持って行かれる所だったんだぞ。」
「国軍は第一王子の直轄で俺に統帥権は無い。」
リノが面白く無さそうに言った。
「じゃあその兄の下で働くことは考えないのか?」
「ビナ王子は偉大な学術家なんです。この国や大陸を作った歴史等を研究されていまして国内に多くの図書館や博物館を建設されました。正直戦争や国軍の維持には無関心なお方なのです。」
サランが説明してくれた。
「そうか何処も難しいのだな。口を出して済まなかった。」
俺はそう詫びるとスープとパンを持って天幕へ戻る。
「リノも国軍の弱体化には心を痛めているの、それで自分の傭兵団を作ろうと言い出したのです。」
そうカサムが説明した。
そうか...接頭語に『ハーレム』って付けなければ応援してやったのに、残念だ。
「カサム、お前は何故リノに付いて行く?」
「リノは馬鹿で心配だったから。それに今は感謝しているわ。お陰で貴方に会えたし。」
「俺はお前を幸せにも出来ないし一か所に落ち着く気も無い。」
「良いのよ、私は私の好きにするから。」
そう言ってカサムは俺に寄り添う。
正直一人でいるよりも心が落ち着いた。しかしカサムに対して何も約束しようとしない自分は卑怯だと心の中で誰かが言っていた。
◇
カナン国に着くとリノ達はさっそく贈り物を持って王城へ向かう。きっと、生き物だから早く渡した方が良いのだろう。
俺とクッ子はギルドで報酬を貰うとヨエ達が待つ貸家に向かった。
てっきり屋台の食料を包んだ紙袋で溢れているかと覚悟して扉を開けたのだが、意外と奇麗な状態で驚いた。昼間はヨエが似顔絵屋、ハッシュは家政婦として働いているという。
あのハッシュが家政婦ねえ...。
「ねえ私の似顔絵が凄いって貴族の人が認めてくれて今度その人のペットに素敵な模様を付ける仕事を貰ったの。金貨3枚もくれるっていうのよ。」
「そうかそうか、それは凄いな。これはクエストの報酬に途中倒した魔物の素材を売ったお金だ。次の旅分を残して銀貨1800枚あるからお前に渡して於く。」
「そんなにあるなら今日は外食しましょうよ!私、お肉が食べたい!」
ハッシュが目を輝かせて割り込んで来た。やはり中身は肉食系女子か?
「外食しても良いがエノッシュを探す方はどうなった?」
「この地はエノッシュ様の兄弟弟子でカノー様という方が納めているの。あっ表面上はカナン国王が納めている事になっているけど実権は無いに等しいから。」
国王に実権が無いとかそんな事があるのか?
「そのカノーという奴は悪なのか?」
「カノー様を悪かと聞かれれば善寄りね。でもあの方々は善悪の基準が普通と違うのよ?エノッシュ様は進化の秘密を解き明かすことが善でその為なら戦争も引き起こす。でもそれは善の為に必要な事になるの。」
「?? 進化と戦争は関係ないだろう。」
「貴方が私から奪った黒体ね...。あれってエノッシュ様が大地の精気を集めた物なの。相当量の魔力を含んでいるから魔気と呼んだ方が良いのかもしれないけど。」
「ふむ、その魔気と戦争が関係あるのか?」
「人の血を大地が吸うとその多くが魔気に変わるらしいわね。私も詳しい事までは分からないけど」
「魔気を使うと進化するのか?」
「少なくとも貴方や私の力はそのおかげでしょう?」
俺はクッ子を見た。奴も俺と同じはずだ。
「エノッシュはこの地で何をしようとしている?また戦争か?」
「ええ、恐らくはそうでしょう。でも此処にはカノー様がいる。そう易々とは行かない筈なんだけど。」
その予想はやはり甘かった。直ぐにその事を俺たちは知る事になる。
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