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第39話 S級

 止めた。船代が高いので『ホワイト一角獣の角を捕獲』クエストは諦めました。


 結局俺たちはカナンの南西に位置する隣国までの商隊を護衛するクエストを受けた。


 途中魔物が多い森を通るので報酬が良かったし倒した魔物のドロップアイテムは自分で貰って良いそうだ。


 出没するモンスターとドロップアイテムを一通り聞いたが、狙い目はダークエンジェルという黒色をした天使擬きで魔法が一切効かないが、こいつが大量に落とす黒羽は矢に付けるとそのスピードを何倍にも早めるそうで、都市防衛軍が1枚に付き銀貨1枚の高値で引き取ってくれると言う。


◇ ◇


 宿に帰るとヨエ達はすでに昼飯を食べてリラックスしていた。


 俺たちが護衛で暫く此処を離れる事を伝える。そしてその間この都市にいるならばホテルは止めて安い家を借りろと言うと食事を作るのが面倒だ、動きたくない、などとブツブツ文句を言っていたのだが結局明日一緒に借家を探すことになった。 


 次の日は借家を借りると俺とクっ子は護衛クエストに出かけた。


 「俺たちが居ない間少しでも黒ローブの足取りを探して於くんだぞ?間違っても外食ばかりしてぐうたら家で過ごしたりするんじゃないぞ?!」


 ヨエは分かりやすい態度を取った。こいつの目が左上を向いている時は図星なのである。念の為にきちんと釘を刺して於いて良かった。


 馬車は置いて行く。集合場所には少し早く付いたが荷物を満載した8台の荷馬車と先頭と最後尾に荷物の無い馬車が止まっていた。代え馬も何頭か繋がれていて結構本格的な商隊である。


 道に座りボーと馬を見ていると一人の冒険者が近づいて来た。


 冒険者だと分かったのは無精ひげを生やして汚れた服を身に纏い腰には蛮刀を差していたからである。こんな汚いのが商人だったら誰も取引しない。


 「ようねーちゃん達。噂じゃあ結構強いらしいな?俺が今回の護衛を纏めるオブツーハ・シャ-ダックだ。」


 「…」


 汚物は無視した。クっ子は蝶を追いかけるのに忙しくて端から聞いて無かった。


 何やら悪態を喚いていたが俺の耳には届かない。ジロジロ体を見られて気持ち悪いという感想だけだった。どうも最近俺は妙だ。目の前の事に集中できないというか、時々現実感が薄く成り今自分が存在する事ですら真偽が分からなくなる。そしてラヘルを思い出す。化け物に変わってしまったラヘル。俺は黒ローブを見つけて彼女を助けなくては。なのに何故体に力が入らないのだろう?


 「ブラックサンダーベアだ!」


 先頭護衛が魔物と交戦に入った様だ。立ち止まった商隊に匂いを嗅ぎつけた付近の魔物たちが集まってくる。


 「ハリケーンボム!」


 風の中級魔法に無詠唱でボムの連続弾を乗せた竜巻を放つ。それは集まって来た魔狼や陸クラゲに大鶏達を巻き込むと、その高速回転する渦の中で彼らを螺旋の空へ舞い上げて行く。そして渦の中でボムを食らった魔物たちは次々とアイテムを落としながら消滅してゆく。


 「俺調子悪くて。クっ子悪いが拾って来てくれないか?」


 そう言って俺は馬車の荷台でごろりと横になった。


 

 「大変だガブ警備副隊長、シャ-ダック隊長がベアにやられて大怪我をした。荷物の期限が厳しくこのまま行くしかない。君たちが頼りだ。」


 そんな事言われてもなあ。取り合えず警備隊長は消毒しとけ。


 ランク的に仕方が無く副隊長を引き受けたが今度は隊長代行ですか。人使いの荒い商人さんだ。


 二度目の戦闘は細い森の街道で起こった。


 後方馬車に怪我をしたシャーダックとその仲間を乗せていたのだが、どうやら足の速い大型の蜘蛛に取りつかれた様だ。


 魔物が出て時の合図の大法螺貝が鳴り響く。


 前方にすこし開けた場所が見えて来た。あそこまで走り抜けたら加勢に行こう。そう決めた俺はクックに速度を上げる様に指示をすると並走する馬に飛び乗る。


 森の中にぽっかり開いた草原に出る。小さいが池と小川があった。


 池のほとりには馬車とテントが見えた、冒険者か?


 俺が最後尾に向かって馬を走らすと先頭ではクックが馬車の速度を緩める。


 蜘蛛は1mくらいの高脚蜘蛛だ。良かった、こいつらの毒は弱い。しかし馬車には2匹取り付いていて後ろからも網を引くように子蜘蛛達が付いて来ていた。


 馬車の蜘蛛が脚を切られ1匹落ちた。あっちは任せて於こう。俺は後ろから来る蜘蛛達に刃を向ける。


 時々蜘蛛が付き出す鋭く長い槍の様な前足を躱しながらバッサバッサと脚を切って動けなくしていく。呪文を使って一掃しなかったのは、森の木々が近いので火事を心配しての事である。きちんと威力を調節して倒せば問題ないはずだったが、最初の戦闘時に暴走気味の魔力を抑えるのに苦労した。こんなことは今まで無かった事だ。


 「助太刀しよう、強いお嬢さん」


 シルバーの胸当てをしたイケメンが長剣で加勢してくれた。恐らくあのテントの持ち主だろう。


 太刀筋は正当な剣士に見える。バッサバッサと蜘蛛の頭を割っていくその無駄のない動きは少なくともBランク以上に見えた。


 彼の後方から3人の女性達が駆け寄ってくる。


 一人は白魔導士風の白い長スカート姿、もう一人は魔導士風の灰色の服を身に纏っている、最後の一人は見た事の無い服装だった。薄く透けた露出の多い服を着た美しい娘だった。この娘だけショートヘアーである。


 蜘蛛の攻撃がイケメンの脚を捉えた。構わず蜘蛛を両断するがイケメンの動きが明らかに悪くなる。


「リノっ!」 白魔導士風がイケメンの名前を叫びながら回復魔法を掛けるとその傷口が見る見る間に塞がって行く。むっ!こいつは凄い、アンナ以上の使い手だ。


「助かったグラ。サラン踊りだ!」


 サランと呼ばれた娘は突然踊り出す。そしてどういう仕組みか踊りが進むにつれてリノと呼ばれたイケメンの速度が上がってゆく。あれも支援の一種なのか?


 ここでクックが走って加勢に来た。鉤爪でバッサバッサ蜘蛛を切り裂いていく。


 俺はリノと呼ばれたイケメンに向かって大声で叫ぶ。


 「おいリノとやら、仲間は水魔法が使えるか?」


 「男口調だな、お嬢さん。水ならカサムが得意だがどうした?蜘蛛には火の方が相性が良いと思うが」


 「あれを見ろ!」


 剣で指し示した先には森がこんもり盛り上がっていた。いや、それは地響きを立てながら此方へやって来る。


 「げっ、クイーンベナトリア!なんでこんな浅い所にSクラスの化け物が?!」


 そう、動く森の正体は高脚蜘蛛の親分、通称クイーンだ。


 「近づいたら炎魔法を撃つ。悪いが飛び散った火で俺たちが囲まれない様に消火をお願いしたい。」


 「いいぞ、だが少なくともAランク魔導士並みの火力が必要だ。君も見た所剣士だろう?」


 「いいから頼む。」


 「よし頼まれてやる!カサム、こっちへ!」

何時も読んで頂き有難うございます。

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