第37話 天に昇る
9/24 誤字訂正しました。力ず強い→ 力強い
サラとの結婚式があと3日と迫った日の事、その痛ましい事件は起こった。
「ガブ様、大変!ラヘルの部屋に化け物が!」
家政婦のエイミーさんが俺の部屋に駆け込んで来た。昨日からホテルを引き払って屋敷に来たばかりなのに。
慌ててラヘルの部屋へ駆けつけると既に剣を構えた執事がその化け物に斬りかかった後だった。
化け物の赤い血が床に飛散している。剣で斬られたそのその傷はしかしながら直ぐ塞がったらしい。
てかてかしたその体表には1本も体毛が無く、その肉体はブヨブヨと肉が垂れ下がっていた。足は4本に手が2本、口には2本の大きな鋏の様な歯を持っていた。胴体はずんぐりと大きく丁度芋虫と蜂を混ぜ合わせたような怪物だった。
俺はその怪物を一目見ると剣を床に突き刺して屋敷の者達へ部屋から出る様に言った。
化け物はギシャギシャと歯を鳴らす。
俺の目から涙が溢れだす。
何故だ?
俺は知らぬ間に跪いた。本能がこの化け物の事を”自分の女王”だと教えてくれている。
だが、なぜラヘルなのだ?
化け物の背から羽が生えて来くる。それは見る見る間に透明でしっかりした羽に変化した。
ギシャギシャとラヘルがサヨナラを言う。
待ってくれ!こんな事ある筈がない!
”ぶんっ!”
力強い羽音と共に、この世に新生した女王蜂が羽ばたく。
目指すは天高く聳え立つ霊峰。
窓ガラスの割れる音に人々が再び部屋へ入って来る。
「ガブ!ラヘルは無事なの?!」
サラが半狂乱で叫ぶがそこにラヘルは居ない。
「ラヘルはもう居ない...。そう、彼女は天に昇った。全て、全ては俺のせいだ…済まない。」
訳が分からず立ち尽くすサラを強く抱いて俺は泣いた。
そしてその夜、俺は屋敷から消えた。
そう卑怯な俺はサラから結婚式から、全てから逃げ出したのだった。
◇
「此のまま何処まで行くッポ?」
「北だ。黒ローブの所だ。」
「まあ私は北でも南でもどっちでも良いけど。」
「ヨエお前は危険だからどこか途中で降りろ!」
「やだ。私まで置いて行く気?危なかったらガブが守ってくれれば良いんじゃない?」
「煩い、その俺が一番危険なんだ。化け物になりたいのか?」
「ラヘルの事?さっき話では聞いたけど、ちょっと…ねえ。モンスターは生まれた時からモンスターで人間はモンスターに変化したりしないわ。」
所がそういう物を作る奴がいたのである。勿論黒ローブの男マスター・エノッシュである。
あの日俺は化け物になったラヘルと会って強烈に惹かれ合った。
ラヘルのギシャギシャという言葉も理解できた。
『ガブ喜んで?強い子を産むためにより高位な存在に進化できたの。』
そう言っていた。
進化?高位な存在?全てあの男が口にしていた言葉だ。
あの男がラヘルの体に細工を?あの筋肉達磨の少女達を作った様になにか改造を?
剣を握りしめ自問自答する俺にクックが放った一言が衝撃的だった。
「ラヘル女王蜂になったッポ。働き蜂のガブがラヘルに種付けしたから進化しちゃったッポ」
「クックー貴様ー!」
思いっきり殴った。クックは近くの岩壁に埋まって気絶した。
何でそういう大事な事を先に教えてくれないんだ。
...クックの所為だ...あの黒いローブ男の所為だ。いや全ては俺の所為だって分かっている。
もう如何でも良いと感じる程に頭が疲れていた。どういう理屈か分からないが此れからも俺が女性と親密になると第二第三のラヘルが生まれるかも知れない。この呪いを解くのには黒ローブを叩きのめすのが一番早いだろうという事だけは理解できた。
しかしやっとの事でアジトまでたどり着いたと言うのにそこには戦力外の美少女一人しか残って居なかった。少女は自分の事をハッシュ大尉と名乗った。
彼女に黒ローブの行先を尋問すると、意外な事にあっさり極東へ向かったと答えてくれた。そして役立たずの自分はここの番といつ形で体よく捨てられたとも。
俺たちはハッシュを乗せて馬車を東へ駆り立てる。目指すは東都の先、カナンの国だ。
馬車は野宿を重ね走ったが些細な問題を解決する為にレイバンの東である村に立ち寄った。
実は俺とクックが二人して服がキツくなってしまったのである。
特に尻と胸が。
ヨエがびっくりしていたがハッシュは冷静で「マスターの計算通りね。」と言った。
「テメー今度は何をしやがった!」
少し甲高くなったボーイソプラノトーンで俺がハッシュに掴みかかる。
クックはと言えばキツくなった上着を早々に脱ぎ棄ておっぱいを弾ませながら走り回っている。
「まだ攻撃的ね?マスターは我々キャプテンシリーズを生産する前に貴方達プロトタイプ戦士を作ったの。でもね、クックはあんな風だし記録によると貴方はそうとう暴れた見たい。要するに手におえない失敗作だったわけ。そんな貴方達にマスターはキャプテンシリーズで培った技術を応用し女性化の改造を施した訳。目論見的には穏やかになってマスターの命令を聞く様になる筈なんだけど、どう?穏やかな気持ちになれた?」
「この状況で穏やかになんかなれる訳無いだろう!本当に馬鹿かお前ら!」
「あら良いじゃない。女で有る事の何処が行けないのよ。でも進化遺伝子の研究の為に生殖機能は残しておくって仰って居たから正確には女性で無くてフタナリってやつだけど。」
俺は急いでズボンを降ろし自分の股間を見る。あっ良かった、ある。ある。あるけど…。
そして白目を剥いて仰向けに横転した。俗にいうショックで昇天したと言うやつだろう。
「なに?どうしたの?あら、ちっちゃーい。赤ちゃんのみたい。」
「どれどれ、ほほー。これは愛らしい。記念にスケッチして残しておこうか?」
何時も読んで頂きあ有難うございます。




