第35話 人体の秘術
天幕の外では真っ黒な化け物執事が騎士達をなぎ倒していた。
今日は支援魔法無し。勝てるか?
そう自問しながら化け物に斬りかかる。もちろん手にしているのは前回勝利した時に用いた不思議な鉱石、鋭利な破片である。
こちとら此奴が出てくることをお見通しだ、準備に抜かりは無い。
数合打ち合うが筋肉少女から奪ったエネルギー体が効いて居るのか力負けしていない。勝てる。
逆に敵の方は敵わないと悟った様で早々に黒竜に跨り逃げ出した。
俺はこの時の為に借りて来た小型の翼竜に跨り後を追う。
ほら、準備に抜かり無いと言っただろ?
そいつはどんどん西都からも遠ざかり北東へ逃げていく。
後ろからクックが乗った翼竜も追ってくる。
やがて黒竜は山中にある滝の中へ姿を消した。
◇
”ざぶ!ざー”
叩きつける滝を潜るとそこは鍾乳洞になっていた。
翼竜を降りクックと共に奥へと進む。
大広間に出た。
其処には、黒い化け物と共に大尉と呼ばれていた現在は可憐な元筋肉少女ともう一人筋肉ムキムキの少女?が待って居た。
俺たちが正面から近づくと黒い化け物と少女のイカつい方が襲い掛かってきた。
俺と筋肉少女、クックと化け物が互角に渡り合う。
そこへ、大きく良く通る声が聞こえた。
「よく戻ったな、我が息子たちよ!」
◇ ◇
それは黒いローブを羽織った男だった。
なんとそいつはクックにこう命令した。
「戦士クックルスよ、戦士ガブリエルを押さえつけるのだ!」
「うおっ、クック何をする。放せ!」」
クックが俺に飛び掛かって来たせいでおれは三人を相手する羽目に成り、力ずくで取り押さえられてしまう。
「ガブリエル、心配する事は無い。ちょっとお前をお淑やかに作り直すだけだ。」
縛られた俺はそのまま緑色の液体の中に放り込まれ、直ぐに意識が混沌となり間もなく失神した。
◇
目が覚めた俺は両手両足を鎖で繋がれた状態でベットに横たわっていた。
「目が覚めたか。」
俺とクックを息子たちと呼んだ黒ローブの男が立っていた。クックも隣に立っている。
「お前は誰だ!なぜ俺たちの事を息子と呼ぶ?」
「文字通り私がお前たちを作ったからだ。メルクルもここの娘達もすべてだ。」
「人間にそんな事は出来はしない!」
そう、人には人を作る事等出来ない。そんな事が出来るのは神だけだろう。しかし目の前に居るのはどうみてもフードを被った唯の人間である。
「...お前の体にすこし手を入れた。効果は徐々に現れるが1か月程であの娘達の様に従順になるであろう。そうそう、忘れている様だから思い出させてやろう。我は不老不死を探求する者の一人だ。創造主より受け継いだオーバーテクノロジーを駆使して神秘の謎を解き明かしている。我は弟子たちの中では出来のいい方だった。そして何時の日か全ての神秘を解き明かし、この世で初めて人を超越した高位な存在へと進化する者である。」
それだけ言うとフード男は去っていった。俺は縛られたまま放置され隣にはクックが座った。
当然俺はクックに文句を言う。
「おいクック。お前、村の近くで腹ペコで彷徨って居た時に豆をやったのは誰だ?」
「忘れたッポ」
「俺の事も全部忘れたのか?だから黒ローブの手助けをしたのか?」
「マスター・エノッシュはクックの主人ッポ。だからいう事を聞いたッポ。」
「ちっ。じゃあなんでその主人をほっぽらかして俺たちとつるんでたんだ?」
「マスターがガブを連れ戻して来いと言ったッポ。それで探していたら腹が減って...。豆を貰ったからガブと仲良くなったッポ。」
「おいクック。少ない豆を分け合った俺とお前の仲じゃないか?助けてくれよ?」
「良いッポ」
なんとクックはあっさり俺の縄を切ってくれた。
「おっと、また黒いのが出て来たら俺を捕まえるってのは無しだぜ?」
念のために言って於いた。
「うーん、それは分からないッポ。だから会わない様に隠し通路から逃げるッポ。」
そう言ってクックは絵画の後ろにある秘密通路へ俺を案内した。
真っ暗な洞窟の様な通路を手探りで出口を探す。
◇
「マスター、逃がして良かったんですか?」
ゴスロリ服の少女が言った。以前俺に敗れた元筋肉少女だ。
「うむハッシュ大尉、奴に施した術が完成すれば自然と大人しくなるだろう。今無理に取り押さえる必要も無い。」
「マスター、それでは何時になればハッシュお姉さまの体は元の素敵なお体に直して頂けるのでしょうか?」
ハッシュの後ろに控えていた筋肉少女が言った。
「これ、アローケス。藪から棒になんですか?マスターに失礼ですよ。」 ハッシュが窘める。
「アローケス。ハッシュの体を元に戻すには大地の精気が不足しておる。だから戦を起すのだ。そうすれば大地からもっと蜜を取る事ができる。此度のハニーランドでは少し失敗したが、いくらでもやり直しは効く。」
マスター・エノッシュは何もない空間から輝く剣を1本取り出すとアローケスに授けると言った。
「カノーが納める東に行け。決してカノーに悟られるでないぞ?」
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