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第34話 天幕会議

ここは西都から北へ行った平原。


 その一角に白い天幕が4つ。


 3つは中央の大きな天幕を囲うように設けられ、それぞれに国旗が掲げられている。


 太陽に葉をあしらったエルフ国の紋章。鉄の盾に両派剣が一本はジュア帝国。六角形が規則正しく7個並んだ模様がハニーランド王国である。


 今この中央天幕ではハニーランド王国によるエルフ・ジュア連合への降伏調印が行われようとしていた。


 「まず全てに先立ちハニーランドの国王には今回の責を負っての潔い退位を望む。その後、新国王との間で補償問題を交渉したい。」


 エルフ軍を束ねるミシル将軍が開会早々に言い切った。


 まあ筋書きは打ち合わせされていてここらは出来レースである。


 現ハニーランド国王ハニー14世は緊張の面持ちで退位を宣言する。居並ぶ3大公達も顔色が白い。


 「では続いて補償問題だ。我がジュア帝国は北部地域を植民地として頂く。これに答える新しい国王は誰だ?」


 ジュア帝国軍を束ねるグリューエン将軍がテーブルに置いた兜をコツコツ叩きながら言った。


 「王位継承権から言うとブリッツル皇女が次期女王に。」


 パプティムス大公が一人の少女を招き入れて言った。おい、そいつがお前の孫娘か?可愛いじゃ無いか?


 「お待ちください!継承権一位はこちらのイシュア皇女です。」


 そこへマタロンがイシュアを連れて雪崩れ込む。


 「なにぃ?家格の低い出の娘が何をでしゃばる!」


 パプティムス大公とその取り巻きは口から泡を吹きながら反論を始めた。


 その時俺は魔女の一人を優しくエスコートすると喧噪渦巻く天幕に入って行った。もちろんマスクは着用させて頂いている。


 「何だ貴様らは!ここは平民が入って良い場所では無い!下がれ!」


 もの凄い剣幕で貴族共ががなり立てた。


 面倒なので一人適当に頭を掴むと片手で天井まで放り投げてやった。落ちてくる?そりゃーねえ。


 ”どうっ”


 物凄い音を立てて貴族が地面にダイブした。


 エルフとジュアの騎士達はさすがだ。


 彼らは貴族の頭に手を伸ばした瞬間から抜刀していた。


 「許可なく喋ったら同じようになって貰う。では静かに聞くように。」


 「私は…魔女です。」


 すぐさまパプティムス大公の顔色が変わった。


 「私はさらわれました。さらわれて王様や王位継承権を持つ人を呪い殺す仕事をさせられました。私達の居た所にはピュレーンというエルフの女性も軟禁されていました。彼女はエルフの大使だと言っていました。すべてこの男。パプティムス大公の命令です!」


 「それがどうした!貴国の内情は知ったことではない。我が帝国は戦争補償を手厚くしてくれる方と手を結ぶ!」


 グリューエン将軍が怒鳴った。


 どうやら最初から将軍と大公はグルだったようだ。大公は国土の北部を帝国に売り渡す代わりに王国を我が物にする積りだ。


 「ちょっと待て!エルフの大使を軟禁したがこの男だと言ったがそれは本当か?そんな奴が国の中枢に居て粛清もできんとは飛んだ軟弱国だな!」


 エルフの将軍がご立腹だ。


 「まずその魔女を処刑だ!そいつらが国を乱したんだ!」


 パプティムスの側近が声高に叫ぶ。しかし、エルフ分に対して問いかける。


 「エルフを束ねるミシル将軍に問う。この戦争は何故起こった?」


 一瞬場が静寂に包まれた。


 「それは、我がエルフ国の大使に非礼な行いを貴国が為したからである。」


 「その責を取って国王が退いた。次期国王にその非礼な扱いをした本人の息が掛かった者がなる事に異論は無いのか?」


 エルフの立場からして承諾は出来まい?


 「無いと言えば嘘になる。しかし今後態度を改めるというなら猶予を与えない事も無い。」


 なるほど、仕方が無い。これでどうだ?


 「そうか。ではそもそもこの戦争をする為に、詰まり貴国に宣誓布告させる目的で、そこの男とジュア帝国がグルになって事件を起こしたとしても同じ回答か?」


 ”ガシャーン!”


 帝国のグリューエン将軍がグラスを叩き割った。


 「貴様!証拠も無しに我が帝国に濡れ衣を被せようとするとは。許さん!叩き切ってくれる!」


 面倒だからこの将軍殺っちまおう。死人に口無しってよく言うよね?


 「グリューエン将軍。証拠は有ります。」


 そこに現れたのは誰有ろう。 


 「ピュレーン!」


 美しい衣装を纏っていて一瞬誰かと思ったが、確かにピュレーンである。しかし如何やらエルフの将軍も驚いている様子だ。


 グリューエン将軍は訳が分からないと言った困惑顔をしていた。


 「将軍、私が軟禁されていたエルフの大使本人です。そして私を探すために大勢の密偵がハニーランドに潜入しました。その中で得られた情報の数々は将軍、貴方とパプティムス大公の癒着を示しています。」


 ガシャガシャと帝国兵が雪崩れ込んで来たので今度は俺が身構えた。


 「グリューエン将軍!皇帝陛下のご命令です。私利私欲の為に軍を動かそうとした貴方の罪は重罪です。既に将軍の任は解かれました、このまま帝国法廷へ出頭する様にとのお達しです。証拠となる自宅の隠し財産は押収済ですのでご覚悟下さい。」


 後ろ手に縛られるグリューエン将軍を尻目に、なおもピュレーンが説明する。 


 「私が皇帝に直談判しました。もし私が六侯の娘だとしても多寡が一貴族の話を聞いて貰えるとは期待して居ませんでしたが、帝国側でもグリューエン将軍の羽振りの良さに密偵が付いていたようで助かりました。」


 ピュレーンは最後に連行されるグリューエン将軍の背中を見送ると言った。


 「さて、パプティムス大公及びその取り巻きの皆さん。貴方達もご退場頂きましょうか?」


 元国王の合図で騎士団が雪崩れ込み大公達を連行する。


 「さて、これで…」


 「賊だ!黒い化け物だ!」


 ピュレーンと目が合った。


 「心得ている。此処からが俺の本当の役割だ。イシュア!お前は騎士団と居ろ。間違ってもちょろちょろ動くんじゃないぞ?」


 既に天幕の外では、真っ黒な化け物執事が大暴れし、騎士たちを次々となぎ倒していた。


 今日は支援魔法無しだが、勝てるかな?


 そう自問しながら俺は黒い化け物に斬りかって行った。

何時も読んで頂き有難うございます。

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