第26話 ラヘルは俺の嫁宣言
少し長くなりました。
「僕とアンナはソニンの町。ガブはその先にある開拓村だよ。」
それを近くにいたサラが聞いてしまった。
「えっ!ガブって開拓村なの?」
俺は聞こえていたが遠いから聞こえぬ振りをする。サラが大きく声を張り上げた。
「ちょっとガブー! 開拓村のラヘルって子知らないー? 私の親友なんだけどー。」
どうせ村に付けばバレる事。腹を括った俺は怒鳴り返す。
「俺の嫁(候補)ー。攫われたから探してるー。」
「えっ?ラヘルは結婚してるなんて一言も…」
「あっ嫁候補ー」
サラの美しい顔が歪んだ。
「貴方見たいな変態。ラヘルには相応しくないわ!」
「そう言うのは本人同士の気持ちの問題だよー」
ヨエがフォローしてくれた。ありがとう、御尤もな意見である。
「貴方見たいにいつも人の体をジロジロ見てるような人の何処が良いっていうのよ。」
サラ様、それに関しては真に申し訳ありません。
そこでアンナが動いた。
「サラちゃん。貴方助けて貰っておいて…」
おっ!ここはドラマ何かで良くある平手打ちが出るパターンか?
「…まあいっか。ガブだから。」
良くないよ。アンナ頼むよ…。ビシッとお願いしますよー。
不貞腐れて項垂れながら御者席に戻る俺。
直ぐにサラが隣に座って来た。
「もう体は良いのか?」
「ええお陰様で。さっきは御免なさい。アンナさんの言う通り貴方には礼を言わなくては。」
別に依頼だから助けただけだから気にしてないが。
「そうか、それで俺の村まで来て如何する?」
「ラヘルに会うの。それと…今は少しだけラヘルがいつも話していた’頼りになる幼馴染’ってのを見て見たい気がする。」
「見てどうする?」
「うーん?ラヘルに相応しいかどうか…?」
「で?合格か?」
「不合格ね。ガブって名前も聞いてたんだけど、よくある名前かと思ってた。まさか目の前の変な人と同一人物とは思わなかったわ。」
「何故?俺の何処が不合格なんだ。」
俺は強いし頼りになるぞ?
「うーん、じゃあ一つだけ私の頼みを叶えてくれたら合格って事でどうかなぁ…?」
「言い辛そうだな?」
「そう、とても言い辛いんだけど思い切って言うから…良く聞いていてね。実はお願いがあるんだけど、一緒に駆け落ちしてくれない? 私…20歳以上年上の貴族と結婚しなくちゃいけないって言われたの。」
ふむふむ、其れで家出しようか悩んでいたのか。20歳も年が離れていては嫌だろうな。気持ちは分かるがどうしようかな。駆け落ちって響きには甘美な匂いがするのだが…。
「まあ良いだろう。だが駆け落ち後もお前一人の物にはならないぞ?俺はモテるからな。」
「最低ー。でも取り合えずは協力してくれるのね?ありがとう。」
「ここで誓いのキスとか無いのか?」
「ないないー。その変なたらこ唇が取れたら考えてあげるー。」
「ヨエ聞いたか?早くこの糞ペイントを落とせ!そして二度と俺の顔をキャンバスにするんじゃ無い!」
◇
その日の夜は野宿だった。
アンナがこっそり馬車から降りてくると薪の近くで寝ている俺の傍で耳元で囁く。
「聞いてたわよ”駆け落ちした挙句にハーレムします宣言”。ねえねえ、私もハーレムのメンバーに入っているの?」
「当然だ。席次的には1位か2位にいるぞ。」
「くすくすくす。本当に馬鹿で面白いねガブは。所で依頼の件はどうするの?連れ戻すって約束しちゃったんだよ。」
「一度は戻って貰うさ。そこから又攫ったりしないとは約束してない。」
「わかった。それとクックから伝書鳩が届いたよ。」
普通の伝書鳩は決まった場所に帰るだけだがクックが鳩を使うともっと便利に使える。鳩に目標の位置と特徴を伝えて飛ばせるのだ。
「なんて?」
「洞窟に居たエルフの気配を遠くで感じたと」
「そっちを片付けてから行くか?」
「そう来なくっちゃ!ありがとう、ガブ大好き。」
そう言ってアンナは俺の頬にキスをすると上機嫌で戻って行った。
「ふっ此れから駆け落ちなんて事をやらかしちゃうアダルトな俺はホッペにキスくらいでは動揺したりしないぞ。」
強がってそんな事を言っては見たが興奮して寝付けずにゴロゴロ寝返りを打ちながら夜を過ごしました。
◇
次の日ソニンの街まであと少しと言った所で2匹目の伝書鳩が来た。
「どうやら煙山の方角らしいのよ、どうしよう。」
行くしかないだろう。
イエン、オシエンをソニンの宿屋に預けるとヨエに子守と看病を押し付けて俺たちは煙山へ向かう。
「砦からこんな近くに隠れて居たとは。なんでクックのやつ今まで見落としていたんだ。」
俺は煙山を登りながら不満を言う。
「ちょっとガブ。疲れたからおんぶしてよ」アンナが甘えて来る。
「じゃあアンナさんの次は私もお願い」サラだ。町で待っていろと言ったのに付いて来た。
アンナを背負うが俺に取っては全然重くない。それに俺はおんぶするのが好きだ。背中は暖かいし、何より柔らかい…。
「ガブっ気を付けて、敵だ!」
先行していたオマイが崖を見下ろしながら左手を突き出して警戒を促す。
俺はアンナをそっと背中から降ろすと屈んだままオマイの傍まで小走りする。
「どこだ?」
そこは谷になっていた。谷底には粗末な長屋が並び建ち、幾筋も煙や湯気が立ち上って居た。
「あれっ?今あの辺に筋肉だるまが居たのに」 と下を指さすオマイ。
”ずしーん!” 重量物が落下した衝撃で地響きがした。
後ろだ!
「メルクルが言っていた強い奴らって貴方達でしょ?なんだ弱そうじゃない。ほほほほ。」
空中から音を立てて落下してきたのは筋肉ムキムキでビキニ姿の女性?だった。
「女?いや男だよな。なにその体つき?なんで水着で胸を隠してるの?」
最初に一番気になった事を聞いてみた。
「あら? まだ17歳の乙女を捕まえて酷い人ね。死になさい。」
”ごっ”
目にも止まらぬ速さでパンチが飛んで来た。顔面に奇麗に食らった俺は近くの岩まで吹き飛ばされる。
ぬるっとする感触に手を顔に当てて見るとと鼻血が滝の様に滴り落ちている。
まじか!こいつ何者だ?黒執事といい最近は人間離れした奴が多すぎる。
「うおおおおー!」
攻撃は最大の防御である。俺は正拳のラッシュを叩き込む。敵は防御一方である。
防御一方なのだが何か違和感を感じる。効いていない?
自称17歳乙女ツインテール・ビキニ・ボディービルダーさんは倒れない。全国のツインテールファンに謝って貰うまでは許さない。攻撃の手も緩める積りも無いがしかし、
「効かないわねー」
そう言って簡単に攻守を入れ替えられると今度は俺がサンドバックに。一撃一撃が早くて重い。直ぐに俺の息は上がりゼイゼイと音を立て始めた。
「オマイー!アンナー!フル支援だー!」
長い詠唱を終えた二人が魔石を燃料に遠距離から支援魔法を重ね掛けしていく。
ボロボロの俺は光に包まれた。
「ぐおおおおー!」
メキメキと音を立て体が盛り上がる。同時に体中の骨が悲鳴を上げている。
破壊神が如き圧倒的なパワーにアンナがくれた支援魔法によるスピードを掛け合わせる。
”ズドン!”
それは正に腰の入った正拳突きだった。
先ほどまでの劣勢を跳ね返す一撃。拳は敵の鳩尾を見事捉え、気絶した敵の巨体が俺に向かって倒れ込んで来た。
何時も読んで頂き有難うございます。
(改) 句読点を修正しました。




