第25話 犯人は君だ!(2)
前回短かったので本日2話目の投降になります。
さて現在のパーティー状況はと言うとイエンの容態が回復するまで旅はお預けである。
ラヘルは先に駅馬車でソニンまで行かせた。護衛にクックを付けてある。
俺たちの馬車は4人乗り+御者席に二人乗る事が可能なので、オマイ・アンナ・イエン・オシエンを中に入れるとすると俺とサラが御者席になるな?サラは病み上がりだし御者はオマイと俺のセットで行くか。
そんな事を考えながら部屋に入る。
そして徐にベットの周りを丹念に調べる。ふむペンキの滴などは落ちていない。
皆さんはお忘れかも知れないが俺は覚えている。この顔に施された醜悪なデコレーションの事をである!犯行現場はこの部屋。どう考えても寝ている間の犯行に間違いない。
しかし不思議なのはこのペンキ。擦っても落ち無いし、ベッドに1滴も垂らさず此処まで落書きするなんて速乾性も良い所だ。念の為窓を確認するとキチンと中から閉まっている、異常無し。
そうすると侵入経路は正面ドア。昨日イエンの容態が変わった時を考えてワザと鍵を掛けずに置いたドアである。鍵を掛けなかった事がつくづく悔やまれる。
俺はドアの周りを上から下まで嗅ぐ。クンクン、無臭だ。
開放したドアを前に廊下で這いつくばっていると、いきなり俺の尻に足を置く輩がいるでは無いか。
「誰だ!」
「お笑い人面犬発見!きゃははは」
見知らぬ娘だった。宿の女将でもその子供達でも無い。どういう事だ?
「あっ、ヨエさんダメじゃないですか、又馬車行っちゃいましたよ?起こしに行ったのにどこ行ってたんですか?」
宿の女将がその娘を見て愚痴をこぼした。なに?他に宿泊客が居たのか?第7番目の容疑者発見である。
「ええー!じゃあ次の待ちますー。」
「だってもうお金が無いって自分で言ってたじゃあ無いですか?」
「ほぇーそうだった。ねえ君、そのマジックペイントを落として上げるからお礼に銀貨1枚くれない?」
「なんと銀貨1枚で取ってくれるのか?それは有難い。しかしマジックペイントって何ぞや?」
「それはねー魔法で描く絵画の事だよ。これは黒一色だけどもっとカラフルにも出来るんだ。君の目の前にいるのは旅をして見た物を魔法で絵にする世界でも数少ないマジックペインターだよっ」
「ほほー、では銀貨1枚を払おう。」
「ほい、じゃあ解除するねー…」
…
「おい、どういう事だ。もう取れたのか?」
「いや、何だかゾゾーって悪寒が走って…解除は明日にしない?」
「そんな事で許される訳なかろうが!この悪戯野郎が!」
俺は自称ペインターの娘を捕まえると押さえつけ尻を平手打ちした。怪我の無い様物凄く加減してズボンの上からその形の良い丸いお尻をパンパン叩いてやる。
「あーん、野郎じゃなくてヨエって名前がー、痛ーい、許して、ほらっ直したから!」
ふうー。俺はアンナの部屋のドアを叩いた。
「アンナー鏡貸してくれ。」
扉を開けるとアンナがまた大笑いしながら鏡を貸してくれた。既に結果が見えた。鏡を見る気が一気に失せたが如何なったのか気になってそっと鏡を覗き込んでみる。
今度は赤白のくま取り模様、歌舞伎役者見たいな顔だった。鏡に映った歌舞伎役者は深いため息を付いた。
◇
次の日、イエンの容態が少し良くなったので出発しようとすると俺たちの馬車の上にちゃっかりヨエが座って居た。
「ちょっと!またお尻を叩いたらもう二度とその顔の隈取り落とさないからね。後でちゃんと元に戻すから僕も連れて行ってよ。お金が無くて旅が出来ないんだ。お願いだよう。」
僕っ子か…興味ないな。それにしても押し込み強盗より厚かましい奴だ。迷惑かけて於いて除去するから何か寄越せってランサムウエアと同じ手口じゃないのか?他の奴らがすんなり受け入れている事も理解出来ない。
まあサラの様子を見る限り容体はすっかり良くなった様で良かった。それにサラがアンナ・オマイと打ち解けた様子で話している事も良い事だ。
オシエンはと言うとイエンの横にべったりだ。御者の俺に対して「揺らすで無いぞ」とか注文を付けやがる。偉そうにしなければ普通にに可愛い女の子なのに。
「出発する で、ぁっ、ござーるー!」 しまった!顔がくま取りだから妙なスイッチが入ってしまう。
「もとい、とにかく出発するからな!」
◇ ◇
「おい、ヨエ!もう直ぐ昼だ。そろそろ顔を元に戻せ!」
「ヤダよ。戻したら僕の事を荒野に置き去りにする気でしょう?」
くっ鋭い!
「…そこまで鬼じゃない。昼飯抜きにするだけだ。」
「じゃあ、ご飯終わってからにする。」
馬車の外で飯を食いながら改めてヨエを観察する。
背はアンナと同じくらい、ごく一般的な身長だ。白のタンクトップに青いズボンを履いている。ズボンの裾が膨らんでダブダブ、足首の床で紐で縛ってある変わった形の物である。そのズボンやシャツの背中には黒と赤で緻密な模様が描かれている。植物か何かだろうか?恐らくこれもマジックペイント製なのだろう。体は細身で顔はすこしそソバカスがある事を除けばまあ可愛らしい顔である。髪の毛が赤毛なのが平原にしては珍しい。
「何ジロジロ見てるの?欲情した?」
性格は良くない。俺の中ではサドっ気がある泥棒気性という低評価である。
「ヨクジョウと何じゃ?」
聞かれたアンナが困っているので、俺が教育してやる。子供に教えるのは得意だ。
「イエンがお前の名前を呼びながらハアハアしている状態を言う。」
「何と、イエンはヨクジョウで有ったか!」
…ごめん、冗談のつもりだったが。
「馬車が壊れてから助けが来るまでイエンはずっと我の名を呼んで息を切らしておったぞ」
「そりゃー死にかけてたからな…。」
「イエンは元気なイエンに戻るかのう?」
馬車内ではオマイがイエンの食事を世話していた。
「はははは、一杯食べて下さいね。」
「かたじけない。姫様を安全な場所に送り届けたならきっと礼を、貴方達の住処は近くか?」
「僕とアンナはソニンの町。ガブはその先にある開拓村だよ。」
おい、オマイ。その情報は不味いだろう!
それを聞いたサラが驚き振り返ると食いついた。
『フィーッシュ』 …それは魚が食いついたです。
いつも読んで頂き有難うございます。
(改)文末に加筆しました。




