第19話 クックvs卵vsタンクトップ
「つまり、ここ西の都の管轄内で黒い竜を合法的に所持しているのは、養竜家のバース家、ニオ
西域大公家、パプティムス北域大公家の3家になる訳。そして、隠し鉱山にも出没したという事から考えると、北公家の操者である可能性が非常に高いのよ。でもね、そうなると玄関に行っておいそれと尋ねれば良いという訳にも行かないから、やはりエルフのピュリーンさんを探す線から進めるのが良いと思うのよね。」
「分かった、分かった。取り合えずせっかく皆の分の朝食をコテージに運んで貰ったんだから冷めないうちに食べなよ。」
「クルッポ」
「はははは、鳥が卵を食べると共食いみたいだね。」
「いや、それ蛇の卵じゃね?」
そういうと、アンナとオマイは卵を吐き出しそうになっていた。
「はははは、蛇は苦手だ。所でエルフを探す件どうだろう?」
オマイはエルフの件になると必死だな。
「いいよ。クックはお前らに貸すから、そっちメインで探ってくれ。俺は2-3日奴隷商を回った後で合流する。」
クックは蛇の卵と格闘中である。やはり鳥だから蛇は怖いのかな?
「オッケー、でもラヘルちゃんを見つけたとして如何するの?ちょっと聞いたんだけど、女の子の奴隷って金貨10枚出しても買えないらしいわよ。デュークが買い取りに来るまで待ってて下さいって頼む気?」
「うーん、まあそうなるかもしれないが100枚くらいなら無理しても買い取ろうかと思っている。」
「ちょっと!うちにそんな大金ないわよ?」
「そうだな、誰かさんが金貨1枚もの大金を賭けで摩っちゃった見たいだしな。」
「はははは、金貨の分はクックのお陰で戻ってきたさぁ。」
「まあ、金の事は何とかするから心配するな。それよりクックがあまり目立たない様に頼むぜ。」
「はははは、分かったよ。気を付ける。」
◇ ◇
騎士団の門を出る時後ろからスサノハに声を掛けられた。
「あらデューク君お出かけ?お姉さんも同行してもいい?」
実は門の手前から気づいていた。俺もクック程ではないが気配を感じる事が出来る。
しかし、クックを抱きかかえていたとは分からなかった。クックの気配は読みにくい。それ以上に行動が読みずらいというのがあるが、オマイ達とピュリーン探しに行くのではなかったのか?
「勿論、スサノハなら何時でも大歓迎です。」
スサノハさんにトサカを撫でられ、気持ちよさそうに半目のクックは其処に置いて二人で出かける事にした。
奴隷商へ行きたいと言うとスサノハさんは役場に行って住所を調べてくれた。
「本当に大手だけでよかったの?」
「細かい所まで当たっていたら切りが在りませんから。それに、大手と繋がっている気がするもので。」
二人で奴隷商に着くと正直にラヘルという少女を探している事を説明した。大手を周り、買い戻す金が出来たので探している、居場所が分かったら連絡して欲しいと伝えて回った。身長や髪の色、特徴を詳しく書いた紙も渡して回った。
最後に、町の大通りや劇場の角など目立つ所に探し人として似顔絵付きで張り紙を施し、情報提供を求めた。
◇
翌日、朝から来訪者が居た。
「デューク、情報提供だと言う人が一人ともう一人奴隷商の人が来てるわ」
未だ身支度の途中だったのかスウェットパンツにタンクトップという出で立ちでスサノハさんがやって来た。あれだね。タンクトップもスサノハさんクラスが着ると、手りゅう弾位の殺傷力を持つよね。もう少しで頭の天辺から脳みそが噴き出す所だったよ。しかし、なぜ今日もクックを抱き抱えて羽毛を愛撫しながら入って来る?どうしてだ?クックよ。
情報提供の方は似たような女の子を町の北側見たという話だった。北側を探して本当に見つかったら銀貨1枚を提供するからと住所を聞いて、銅貨5枚を渡して帰した。
もう一人は奴隷商と聞いていたが、実際は奴隷商本人ではなくその従者だった。
20日くらい前に夜中に馬車が駆け込んできて、乗っていた女の子二人が直ぐに隣の奴隷商に買い取られて行ったそうだ。その内の一人が張り紙に似ているという。
さっそくスサノハさんと通報者の隣にあるという奴隷商を訪ねる。
「ごめんくださーい。」
最初の挨拶はスサノハさんに代わってもらった。だってマスク男が突然訪ねると相手が用心すると言われたから…酷いよね。
「何だね君は。ここは奴隷商だ。君のような若い娘さんが来る様な所じゃあない。帰りなさい。」
「騎士団の者ですけどー」 スサノハさんが腰の剣を見せる。
「ぐっ確かにその紋章は騎士団の物。しかしその剣が盗んだ物で無いと証明できるのか?」
「あらー、腕前もお見せしましょうかー。首から上が胴体と分離しちゃっても良ければ~」
うわあ、奇麗な顔で言われるとグッとくる台詞だ。奴隷商も顔を青くしている。
「わっ分かった。手短に頼み。」
「じゃあ、この似顔絵の子を売った先を教えてください。」
「げっマッマスクマン!お前のせいで銀貨30枚損したんだぞ。」
えっ?地下闘技場の事?
「丁度いいや、俺の実力を知っているのならスンナリ教えて貰えそうですね。」
商人は散々渋ったが、自分が口を割った事を内密にする事で売却先を吐いてくれた。
「リーネン侯爵家だ。」
やっとラヘルの居場所が分かった、今から助けに行くぞ!
いつも読んで頂き有難うございます。