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第18話 万拳券

 「只今の試合、竜殺しランクS、巨人ゴリアーテ 西都本部所属 対 マスクマン・デューク,Bランク,ソニン支部所属の結果は3分3秒でデューク選手の勝利!単勝18,350倍3分で勝利は賭け成立せず。」


 『速報では勝ちに投票なしでしたが、どうやらギリギリの時間で勝ちに銅貨1枚を賭けたラッキーボーイが居た様ですね、ボホホさん。

 …凄いですね、銅貨1枚(10ギタ)でも18万ギタ以上、金貨1枚と銀貨83枚になります。』


 「おいおい、もう少しで金貨2枚か、すげーな。誰だ当てたの。」

 「俺も当ててみてーぜ。」


 観客の興奮冷めやらぬ中、俺はリングに両手を置いて固まったままだった。人殺しの前科を作り尚且つ金貨1枚まで失う…なんて呪われた日なんだ!


 ゴリアーテはタンカに乗せられて運ばれていった。


 「デュークさん、」 背中から声を掛けられる。


 「はっはいー!ワザとじゃないんです。殺す気は無かったんです!」


 取り合えず必死で殺意が無かった事をアピールする。


 しかし、振り返った所にいたのは、憲兵でも騎士でも無く、さっきまでゴリアーテを見ていた女医さんだった。


 「心配しないで下さい。ゴリアーテさんは気を失っているだけでした。ヒビは入っているかもしれませんが、深刻な陥没や複雑な骨折等はありませんでした。首もダイジョブです。念のためデュークさんの健康チェックも良いですか?」


 ほっ本当?良かった。人殺しに成らなくてすんだよー。しかし、本気の蹴りで大した骨折も無いとか、それはそれで少しショックかも。


 女医さんから簡単なバイタルチェックを受け、後は1Fの事務所に寄ってハンコを押して貰ってからお帰り下さい。と言われた。


 今日は金欠で野宿だが、これでスタンプは貰える事だし、お金は明日から暫くクエストをこなせばいいやと足取り軽く事務所へ向かう。


 其処には、ポーリュートさん、それから二人の見知らぬ男が座って居た。


 ◇

 

「デュークさん、此方がギルドマスターのマグニさん。それから騎士団長のムシュマットさんです。」


 俺は二人に挨拶をし、マグニさんにはゴリアーテさんに怪我をさせたことを詫びる。

 

「本当だ、まったく。ゴリアーテに見舞金を出して貰いたい物だよ、ムシュマット。」


「ははは、明日騎士団名で出しておきます。」


「しかし、こんなに実力が在る事が分かっていたなら態々試験する事もなかったろうに。ゴリアーテが可哀そうじゃ」


「いやいや、この試験の結果Bランク評価が低すぎるという事が分かっただけ良かったでしょう。例えばAランクの昇格試験でも同じことが起こっていた可能性はある訳ですし。」


「BからAへの昇給試験はSランクが相手をする。確かにそうじゃな。今日は人一倍頑丈なゴリアーテが相手で良かったと言わざる得ぬ。デューク君、ギルドカードはAランクで造り直したので渡して於く。支部に帰ったら、所属欄にサインとスタンプを入れて貰ってくれ。それから、このムシュマット団長が、騎士団の宿舎に無料で泊めてくださるそうだ。ソニンと違ってこちらは物価が高い。落ち着くまで好意に甘える事をお勧めするが如何かな?」


とっさに、アンナを思い出す。それから、いつもアンナと同室のオマイ。


「あのー、メンバーに女子が居まして、あと男なんですけど、そのー、いつもその女子とじゃないと宿に泊まらないややこしいのが一人、それから鳥人間も一人…」


ムシュマット団長は大笑いして言った。


「ははは、中々愉快なPTだ。大丈夫、そのカップルには客人用のコテージを1棟宛がおう。鳥人は私も合うのが初めてだ。仲良くなるよう努力しよう。なあに、君たちの活動を邪魔しようって訳じゃない。安心して皆一緒に来なさい。」


「それに、私にも毎日会えるわよ?」


俺の後ろからスサノハさんが現れた。気配で女性が一人近づいて来たのは把握していたが、スサノハさんだっとは。相変わらず綺麗で色っぽい。俺は二つ返事でOKした。


「スサノハさん! 行きます、行きます。俺一人だけでも絶対行きます。」


◇ ◇


騎士団宿舎に向かう馬車の中


「はははは、アンナー。もう元気出しなよー。」


「…」


「クルッポ」


クックがジャラジャラと音を鳴らしながら袋を持ち出す。


「はははは、ほらクックも元気を出しなって、こんなに沢山ガラクタってこれ全部お金じゃないか!拾ったお金は届けないと泥棒だよ?」


お金と聞いて椅子にもたれた死体役、若しくは椅子に座った壊れたマネキンの様にぐったりしていたアンナがガバッと起き上がる。


「なにこれー?凄い。えーっと、銀貨が1枚、2枚」


アンナはお金を数えだした。


その頃俺は、


「スサノハさんにまた会えてうれしいです。」


「私もよデューク君。Sランクを倒しちゃうなんて流石だわー。一緒に騎士やりましょうよ。そうしたら、仕事中もずーと一緒に居れるわよ。」


「へへへへ、それ良いっすね。」


馬車の御者席で二人だけの時間を満喫していた。


「183枚と銅貨50枚すっごーい、これだけあれば宿に泊まれるわ」


「はははは、でも西都の宿は4人二部屋だと2万ギタ~だそうだよ。」


「2万!?2000の間違えじゃないの?!」


 実際来る道で泊まった宿は4人で1000~2000ギタ、銀貨1~2枚だった。それでも夕食は腹いっぱい食べれた。


「うー、またスサノハさんに振り回されるのはやだけど、無料で止めれるならこの申し出を受けるしかないのよねー。」


「クルッポ」 


 クックは銀貨3枚だけ自分のポケットに入れると、後はアンナの方へ押し出した。PTのお金はアンナが管理していて、管理が苦手なクックは稼いだ金を全てアンナに渡していた。


「はははは、あー未だこのお金を使うとは決めてない…」


オマイが慌てるが、クックはクシャクシャになった1枚の紙切れをオマイに渡す。


それは『マスクマン・デューク』に丸の付いた投票券控えだった。


◇ ◇


「お風呂の用意が出来ているから二人共入って。貴方達の事は明日の朝礼で伝達するかた、明日からは頭から被っている妙な袋を施設内では取りなさい。じゃあ、また明日ね。」


そう言って、部屋まで案内してくれたスサノハさんは行ってしまった。もっと一緒に居たかった。


アンナとオマイは一戸建てのコテージに案内されて行った。やる事が無い。


 なので、俺たちはマスクのまま取り合えず風呂に向かった。


 中に入ると、そこに湯船は無かった。その代わりお湯がたっぷり出るシャワーが並んでいた。


 真面目に体を洗う筈も無く、シャワーでお湯を掛け合って遊んでいると誰か入って来た。


 俺たちはピタリと掛け合いを止めて、置物の様にシャワーを浴びる。


 沢山シャワーが並んでいる中、俺たちの隣に来たその男は中々良い体つきをしていたが、そいつもマスクをしていて顔は分からなかった。騎士団でもマスクが流行っているのか。好都合である、これなら俺たちマスク組も目立たない事だろう。


 そいつは俺たちの近くで汗を流した後、暫くすると無言のまま出て行った。


 俺たち新参者だから、挨拶した方が良かったかな?


 まあいい、俺たちがお湯の掛け合いを再開したのは言うまでも無い。



「お疲れさまでした。はいこれ、お水です。」


「スサノハ、ありがとう。調査は成功だ。パンツの中身にも入れ墨らしき物は無かった。」


「そうですか。良かったです。」


「因みに怪力の彼だが、中身は年相応の可愛い物だったぞ。」


「団長。その情報要らないです。」


「そうか、それで君に又お願いがある。」


「なんなりと。」


「あいつらにシャワーの時はマスクを外す物だと教えてやってくれないか?」


読んで頂き有難うございます。

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