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第14話 黒

 空から降りてた黒竜に盗賊のカシラが怯えながら言う。


 「いっ言われた通り、待ち伏せしましたが、こいつらに邪魔されました。取り合えず捕まえてきましたが、どうしましょう?」



 竜から降りて来たのは、 濃紺色をしたスーツを着た男。オマイは鉱山で遠目でチラリと見た記憶と照合する。十中八九同一人物だろう。


 「逃げられたという事ですか、ではお金は上げる事はできませんね。」


 そう言って、微笑みながらスーツ男はいきなり踏み込むと、腰に刺したレイピアで盗賊のカシラを切り刻んだ。笑いながら剣を振るうとは尋常ではない。


 「こいつやばい!殺しても良いから攻撃!」


 アンナの号令にオマイが詠唱破棄でボムを投げつける。意外だったのが、それよりも早く抜刀したスサノハさんがスーツ男に迫っていた事だった。


 「スサノハさん、すげー。」


 アンナはオマイの後ろに移動後直ぐに呪文を唱えている。恐らくオマイの素早さを上げる呪文だろう。上空からは白竜が黒い飛竜に向かって飛んで行った。その白竜からはクックが飛び降りて加勢に向かう。クックは強いぞ。スーツ男は終わりだな。


 そう思って余裕しゃくしゃくで見ていたのだが、スーツ男はオマイが放ったボムを左手で弾き飛ばすと反対の手に持ったレイピアでスサノハさんの長剣を受け流した。


 「てっきりレイピアが折れると思ったのに上手いな。それに腕で魔法を弾き飛ばすとは奴も何か魔法を纏っているって事か。」


 これは悠長に構えていないで加勢した方が良さそうである。


 クックが殴りかかる。彼が手に持った武器は普段腰にぶら下げている鉤爪である。これには敵もやり辛らそうに戦っている。


 しかし、やはり敵の右腕には何か魔法がかけられていると見た。今や奴の右手は強靭な盾だ。クックの鋼鉄で出来た鋭い爪を受けとめ跳ね返す。


 その時アンナの詠唱が終わった。オマイはアンナから貰った支援でスピードがぐんと上がる。

 瞬く間にボムを高速量産し始め、流れる火球は寸断なく敵へ叩き込まる。その勢いはMPが切れてぶっ倒れないか心配になる程である。


 それでも最初は玉が弾かれて行ったのだが、最終的にはオマイ達の速度が上回った。


 ”どーん”


 1発入った後は一方的な展開だった。数十発のボムと剣、鍵爪による攻撃。膝を付いたスーツ男は血まみれで焼け焦げ、穴の開いた服で辛うじて立ち上がった。


 「未だ生きてる!」 スサノハさんが信じられないと言った風に叫んだ。


 「お前ら、お前ら、お前ら、」 スーツ男はボロボロの体を揺らしながら何かブツブツ呟いている。


 「…が定めし理を今ここに。…これで、終わりだ!ハイ・エクスプロージョン!はははは、」


 オマイが暴走?!


 「クック下がって!」 


 アンナの声にクックとスサノハさんが下がる。オマイの奴、何だって死にかけにあんな大業を?


 その時スーツ男が脱皮した。いや正確には首から下が脱皮した様に何か黒い物が飛び出した。そしてそれは一瞬で体積を元の倍に増加させたかと思うと、ハイ・エクスプロージョンの巨大な火玉を体で受けとめた。


 嘘だろう?魔法ってそういう風には扱えないから!


 魔法を受けとめられたショックと何かが焦げる異臭にオマイは息を止める。


 黒い化け物は信じられない力を発揮し受け止めた火球を斜め後ろに放り投げた。その結果、後方で大爆発が起こり、争っている2匹の竜達が吹き飛ばされる。


 肩で息をする化け物、しかしダメージは浅そうだ。火球を受けとめる程の禍々しい体。あれに剣が通用するのか?そうだ、俺の腹を切り裂いたこの石片なら。


 「そこまでだ化け物!皆道を開けろー!」


 馬車から飛び出した俺は、一直線に黒い化け物との距離を詰める。


 アンナ、オマイ、スサノハさん、クックが左右に飛び去る。


 黒い化け物はスサノハさんを追って剣の様に変化した左手を振るった。


 長剣で受け止めたが押されているスサノハさんを見て、俺は早々と剣を諦めると袋に入っている石片を握りしめる。そしてスサノハさんを押し倒そうとしている黒い腕目がけて振り下ろした。


 ”ズバッ”


 腕は中ほどまで切れ、赤ではなく黒い液体が飛び散った。浴びた俺の右腕が何だかヒリヒリする。


 腕を切られた怪物は、抵抗せず一目散に飛竜へ向かうとそれに乗って逃げて行った。奴が向かったのは西だ。白竜の方はすこし怪我をしていた。追うのは難しい。くそう、逃がしたか。俺は大きく一つ息を吐くと、地面にどっかりと腰を降ろした。


仲間が駆け寄って来る。


「はははは、デューク何その石?」「デューク!」「プルッポ」


”ぼよんっ”柔らかくて尚且つ弾ける様な弾力を持った何かが俺の後頭部を包み込む。


「デュ~ーク。お姉さんの事守ってくれたのね?恰好良かった、大好き。私ね、自分より強い人が大好きなの。」


 うほっ、これは嬉しい!


読んで頂き有難うございます。

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