第11話 オマイの主張
次の日、一足先にソニンに戻った俺たちはすぐさま連れ去られたエルフ、ピュリーンの捜索を始めた。
てっきり又マリアムさんが一緒に来る物と思っていたが今回彼女は同行しないと言う。
しかし白竜を貸してくれた。俺もアンナも操竜できなかったが、クックは操るのではなくお願いするという方法で背中に乗せて貰えた。勿論マリアムさんがそう命令したからでもあるのだが。
クックが白竜に乗り気配を頼りに広範囲捜索をしている間、おれは荷車を買って村と砦を全速力で何往復もした。
こうして大貴族の隠し財産を盗んだ俺は、村はずれの山の中にその大部分を隠した。
だが別に私腹を肥やす積りはない。
そのインゴットを使って村の西側に新たな村を切り開くと元奴隷達を住まわした。
もっとも、ちゃんと開拓村村長の許可はとったし開墾したのは彼ら自身だった。しかし斧や荷車、スコップに靴、井戸掘りの道具、小屋を建てる木材、そして何は無くとも食料、これらすべてをマスクを被って提供した。未だ仮設テントだらけだが1-2か月もすれば様になるだろう。
そして残った金はどうするかと言うと…
「えっ?ラヘルを連れ戻してくれるんですか?」「デューク様…」
ラヘルの両親はマスクマン・デュークの言葉に感極まった様子だ。
「でもなぜ家の娘の為にそこまで?」
そりゃあ疑問に思うよな。大丈夫ちゃんと答えを用意してある。
「ガブに頼まれたからだ。彼には恩があってそれを返したい。」
◇ ◇
新しい西側の開拓村では皆がピュレーンの事を頼むと元気良く送り出してくれた。
しかし出発の段になってPT内で些細な対立が起こっていた。
俺・クック組vsオマイ・アンナ組だ。
クックは開拓村から少し南にある森に棲んでいる。元々開拓村で俺と同居していたのだが、木の上が落ち着くと言うので、一緒にツリーハウスを作ってやった。昼間は良く村に来ていて当然ラヘルとは顔見知り、彼女からよくパンを貰って懐いていた。そういう訳でクックは俺と同じく早くラヘルを助けたいと思っている。
一方オマイとアンナはというと、ラヘルを助けるのは賛成なのだが先にエルフのピュリーンを助けるべきだと主張した。確かにラヘルは奴隷にされ辛い目にあっているかも知れないけが、ピュリーンの方と来たら口封じに殺される危険性がある。尤もな主張である。
「結論は出せないんだが幸いな事に方角的には両方共西だ。だから取り合えず西に向かう。残りは道々相談しよう」
そういう事で納得して貰った。
そして今回は丈夫な馬車を購入した。
実は荷台の底に2t程インゴットを積みこんだ。だが走ろうとした瞬間2頭の馬が前足で立ち上がり悲鳴を上げた。
それでもう2頭買い足す為に馬屋さんを待って居る所だ。
あっ?ギルドの入り口に誰か来た。バーのマスターと話しかけている。
あれ?マスターがこっちを指さした。
うわっ!こっちに真っすぐ向かってくる。男は軽装だがどう見ても騎士だ。紋章入りのシャツ、紋章入りの剣、無精ひげ一つない爽やかな顔。うわぁー!
「君がデューク君?私は王国騎士団レイバン支部隊長のホシアナだ。」
手を差し出して来たので”そーっと”手を出したら思いっきり握手された。ダメだ、俺こういう真っすぐな人苦手だ。
「何かご用ですか?」
「勿論だ!君に直接クエスト達成の礼を言いたかった。西都は俺たちが介入できないからと言って冒険者に依頼した。それがたった5人と飛竜1匹で30人以上倒してたって言うじゃないか?どうだい、騎士団に来ないか?」
これって断ると面倒くさいパターンかな?
だがそれとなくお断りする。
「そうしたいのは山々なのですが、実は攫われた村娘2人の捜索とエルフの女性を一人探す約束をしていまして。今から西に行く所なんです。」
「成程そうだったのか。それなら人を一人貸そう。大丈夫使える奴だ。おい、スサノハ!」
げっ!騎士なんて貸されたって困る。変にアンナに色目を使われたりしてPT内の雰囲気が悪くなるのも嫌だし。
「けっこ‥‥」
呼ばれて入って来たのは同じく軽装の騎士、そして物凄い美人だった。アンナ程では無いが胸も大きく何よりスタイルがいい。絵画から出て来た人の様だと思った。周囲には高濃度フェロモンまで漂っている。
うわーぁ色っぽい~唇柔らかそう。
「けっこ?何だいそれは?」
ホシアナ隊長が俺に聞き返す。
「けっけっこ 結婚を申し込みたくなりそうな程に魅力的な騎士さんですね!そうだよな?オマイ!」
俺はオマイの胸をドンと叩いた。
ちょっと強かったかな?可哀そうなオマイ。涙目になり、顔が赤くなる程咳き込んでいたのだが、すまん!俺はスサノハさんに釘付けだったのだ。
やっと新キャラにたどり着けました。
読んで頂き有難うございます。
句読点を修正しました。(7/12)