表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/77

第1話 ハニーランド

見て頂いて有難うございます。

1-2日に1回更新目標で考えています。


ガラガラガラと大扉が開いた。


炎天下の中、閉じ込められていた村人達は皆生気を失っていた。


皆足取り重く荷馬車に積まれた牢から降りてくる。


しかし彼らは目前に大きく開かれた扉を前にして足を止めた。


「さあお前たち、何をグズグズしている?入るんだ!」


馬車の上から男が怒鳴る。


ふと爺さんが俺の肩に手を置いた。


爺さんとは村で近所である。


仕方なく、俺は歩きだした周囲に歩調を合わせた。


「夜まで待つんじゃ」


爺さんだ。口を動かさずに小声で俺だけに聞こえる様つぶやいている。


「じじいはどうする気だ?女子供だっているんだぞ?」


「お前だってまだ子供だろうに」


呆れられた様子だ。


 だがもう子供ではない、今日で15だ。つまりここハニーランドのルールでは目出度く成人を迎えた事になる。


 まあ、正直に言うと行き倒れで名前も年も分からなかった俺に年は12と村長が決めてくれから3年経ったという事なのだが。


◇ ◇



「ガブよ、お前は他の子供より力が強い。だから夜になったらお前一人でこっそり逃げろ。間違えても皆のいる所で奴らに逆らったりするなよ?もし上手く一人二人倒させてたとしても他の村人を人質に取られて後は見せしめに殺されるだけだからな。なあに儂らはどこかの農場か鉱山に送られるだけだ、心配するな。」


 実は俺の力は屈強な大人の戦士を凌ぐ。町の冒険者ギルドでは正体不明のマスク格闘家としてたった1年間でBランクまで上り詰めた逸材だ。言って於くが徒手でBである。本格的な武器を持てはAランクとも互角に打ち合える自信はがあった。だかその事は村の皆には隠して来た。なので今はせいぜい子供にしては力が強いとしか思われていないのだ。


 地面を見つめて考える。


 この村の人はいい人ばかりだ。


 行き倒れを優しく受け入れてくれた上に仕事や食い扶持を与えてくれた。


「カブ、どうしよう!怖いよ!私売られちゃうの?」


 幼馴染であるラヘルが近づいて来た。目には涙を浮かべていた。


「心配するな俺が助けてやる。」


しかしどうやって?


 装備からみると兵士崩れの様だが、一人一人は其れほど強くなさそうだから夜中にならず者共を一人一人撲殺する?


 いやだめだ、途中でバレると面倒な事になる。考えろガブ!何か他の手を考えろ。


「若い娘はこっちだ!」


 1か月無精ひげを剃って居なさそうな悪人顔がラヘル達を連れて行った。


 彼女たちの親が必死で歯向かったが可哀そうに槍でしこたま殴られた挙句、引き剝がされてしまった。


 幼馴染のラヘル、木こりをしているハムリカさんの若奥さん、知り合いのお姉さん...彼女たちが連れ去られた方向を頭にインプットする。


 今いる場所は柵で囲われた円形の広間で、ここには真ん中に大きなかがり火が炊いてあり鍋が置いてある。


 一方、彼女たちが連れ去られたのは左手で、丁度柵の向こうからは細い煙が立ち上っているから釜土があるのだろう。右手にも煙が立ち上っているがこっちは太いので兵士崩れ共の食事場に違いない。


 扉が閉められると村人は誰からともなく座り出した。


 自分もごろりと横になる。



 日が暮れて夜になった。


 やっと鍋の中身を配ると言われて皆で並ぶ。


 篝火は随分小さくなったがそれでも広場の端っこまで照らし闇に紛れる事は難しそうだった。


 いっそ躓いたフリをして鍋の中身をぶちまけて見るか?


 そう思って並んでみたが順番が来た時には鍋の底が見えかけていた。


 がっかりしながら味の無いスープを貰って戻って来る。


 「明日は病気を調査をしてそれから行先を決める事になる。だからさっさと寝ろ!」


 柵の向こう側に立つ櫓の上から、ならず者の一人がそう怒鳴った。


 「くそっ人狩り商人に雇われたならず共が…」


 誰かが呟いたが皆同じ気持ちであった。



 「爺さん。もう少し暗くなったらここを脱出する、必ず助けに来るからそれまで達者でな。」


 「ふぉっふぉふぉ、2~3日もすればワシ等は深い鉱山の中じゃて助けられる筈もない。じゃから戻ってくるんじゃないぞ達者でのう。」


 爺さんに別れを告げると3mはあろうかという高い柵の前に立ち、手触りを確かめた。


 10cm程の丸太がきっちり並べられている柵で、指や足が掛けれそうな縄や出っ張りは殆ど無い。


 無い物は仕方ないので丸太を指でがっしりと掴むと握力だけで登り始めた。


 そして一切脚を使わずに登りきる。


 僅か2分程の時間だった。


 柵を超えて外に出るが、ラヘルの様子が気になるので少しだけ寄り道をする。


 小屋に閉じ込められている様だ。周りを見たが見張りはいない。


 「ラヘル、ラヘル!」


 「ガブ!良かった無事だったのね、早く助けて!」


 「出来ない。今、ラヘルを逃がすと残った人が見せしめに罰を受けるかもしれない。かと言ってまだ全員連れては逃げ切れないから。」


 「そんなぁぁ」 


 ラヘルは今にも泣き出しそうである。 他の者も落胆したのであろう、ため息が聞こえる。


 「こんな時にマスク・ド・デューク様がいてくれたら。」


 あっ、それ俺っす。


 登録の時名前が思いつかなくて…。受付の兄さんが〇ル〇13の人に似てたから、つい。


 「ノイさんはマスクマン様が好きなのよねー」


 ラヘルちゃんナイス情報!そうか、おれはノイ姉さんの思い人だったのか…


 「そう、森で怪我してデューク様に助けて貰って以来ずーっとデューク様一筋よ。私はデューク様と結ばれる運命なの、だからきっと今回もデューク様が助けてくれてそしたら今度は私にだけマスクを取って素顔を見せてくれて…それから優しくキッスを…」


 ごくり。おっと想像してしまった。


 くそう、正体を明かせそんな良いことが待って居るのか?だが今は我慢だ。


 「静かに!後で全員を助けに来る。それで、どこへ売られるか分かったのか?」


 「あのね、東の都で奴隷商に売られてそれから何回か転売されるって。そうすると権利がどうのこうので王都の騎士様でも手を出せなくなるからだって。」


 そういえばこの子は難しい話が苦手だった。


 「東の都だな。分かった。とにかく殺されない様だけ気を付けて大人しくしてろ、いいな。」


 「分かった!ガブも死なないで早く助けに来てね。」


 ◇ ◇


読んで頂いて有難うございます。

もし良ければ次回も宜しくお願いします。


(改)サブタイトルに話数追記

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ