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サイキッカー辛過ぎワロタ  作者: 鉄飛行機
エピソード2
24/24

17話 作戦会議は秘密のBARにて

「ここが隠れ家だ。高校生の私たちがこんな店に来るはずがないからな。姉上やアクアに隠れて話すには絶好の場所だ。」


連れられて金沢の繁華街にやって来た俺たち2人。

日が落ち始めて街の人口が増え始める。

それぞれ私服に着替えた俺達は、人混みを掻い潜り裏路地へと向かっていた。顔をよく見なければ、俺達を高校生だと誰も思わないだろう。

そしてたどり着いた喫茶BAR。お洒落な洋風のイメージを漂わせる外観。

準備中の看板が立て掛けてあるが、藍河は容赦なくドアを潜った。


「ごめんなさい。まだ営業時間前なの」

店内から若い女性の声。けれど藍河は気にせず俺に手招きした。

「構うな樋口颯斗。入ってこい」

普通なら失礼極まりない客のする態度だったが、俺は店員の女性の顔を見て、つい笑いがこぼれ出た。

「そういう事かよ。いやぁ驚いた」

店に入り、藍河と並んでカウンターに腰掛ける。

対面する女性店員に、藍河は笑って注文をお願いした。

「私はジントニックで頼む。いや、モスコミュールでもいいか」

すると女性店員は急な注文に焦り、「かしこまりました」と伝票に品の名前を書き出した。

当然俺は、藍河のスルーされたボケにすぐに反応する。

「いやお前未成年だろうが!なにお酒分かってるような雰囲気で注文してんだ!ジンなんとかもモスコなんとかもお前飲んだことねぇだろ!」

「ああ勿論冗談だ。こいつをちょっとからかっただけだ」

女性はようやくボケに気付き、顔を赤くして言い返す。

「ちょっと!まだ仕事に慣れてないんだから!からかうの止めなさい蓮崎!」

楽しんだ藍河はニヤッとして、女性店員の表情を下から覗き込む。

「相変わらずだな……エイト。フィフスの次に気に入っている、私の遊びおもちゃだ」

藍河の酷い言い草は置いておいて。

「本当に驚いたよエイト。マフィア辞めて、何処かでバーテンダーやってるって言うのは聞いていたけど。まさかこの店だったなんて。他のスタッフは?」

「今はまだ私1人よ。アルバイトを絶賛募集中……樋口も元気そうね」

エイトと呼ばれたバーテン服の女性ーー20代前半の、紅葉たちとはまた違った大人の美人女性だ。

去年の夏、マーメイドであるアクアを狙うマフィア組織『Godjack』の1味で、フィフスとチームを組んで俺達に襲いかかってきていたのだが、組織に不信感を抱きフィフスと脱走した。

それ以降、俺達とこうして笑い話が出来る間柄となっていた。


藍河は立ち上がって、思いついたようにマジキチっぷりを発揮する。

「よし景気づけに花火でもやるか!ダイナマイトで店をドカーンとな!」

それは藍河の、今日1番の笑顔だった瞬間であった。

「お願い止めて!あんたなら本気でやりかねないから!」

エイトが当然全力で止める。マジで鬼だな蓮崎藍河……


「それより大丈夫なのか藍河?俺達2人が抜けて、紅葉たち危なくないか?」

「大丈夫だ心配するな。姉上に、居場所の分かる発信機とーー」

藍河はシャツのポケットから携帯端末を取り出して、話しを続ける。

「ーー姉上に危険が迫った時、自動的にわたしの端末が鳴り響くようになっている。防犯ブザーのような物も持たせてある。そしてーーフィフスを護衛につけてある」

最後のは無茶苦茶だ。

「フィフス!?昨日傷だらけで寝込んでたのにか!?」

「大丈夫だ……盾くらいにはなる」

エイトがそれを聞いて青ざめる。

「フィフスが死んじゃう!」

けれど俺達はそうならないために、ここに作戦会議にやって来たのだ。

「エイト落ち着けよ。やばくなったら俺達がすぐに駆けつけるからさ。本題に入ろう藍河」

藍河は頷いて、懐から手帳を取り出した。今後のことについてメモするのだ。

エイトはそれを見て、気を使ったように奥のキッチンへと向かう。

「あんた達オレンジジュースでいいわね?」

俺がお礼を言おうとしたところで、藍河が不満そうにセリフを吐く。

「何?人を子供扱いするな!私はリンゴジュースだ!」

変わんないからなそれ……

本題に入ろう。

「とりあえず、俺達が今置かれている状況についてだ」

「あんた達。また何かに追われてるの?」

オレンジジュースを運んできたエイトが尋ねるが……

「そうだ敵にだ!元敵の貴様は黙って聴いていろ!」

イラつく藍河が強く当たる。

けれど不満なジュースを1口飲んで、表情が変化する。

少し表情が和らいだ。美味かったんだな……わかりやすいやつ。


「まずは昨夜の俺の話から。謎の黒ローブを纏った奴に襲われた件についてだが」

「ああ。姉上から少し話を聴いた」

「『マーメイド』を狙っていた……!多分、殺すつもりだったんだと思う。殺気が伝わって来たから」

「それで、姉上をその『マーメイド』だと思って襲って来たのか」

「……あの黒ローブは、紅葉には水の攻撃しかして来なかったんだ。わざわざ水の攻撃なんかしなくても、最初から殺傷能力のある攻撃してくればいいはずなのに……!」

「水の攻撃……?それしか攻撃手段が無かったのか……それとも」


俺は自信を持って言い切った。

「水の攻撃を、どうしても当てる必要があった……か!」


聴いていたエイトが首を傾げる。

「それって何?」

「お前らが去年アクアにやった事だろうが!」

「あー!なるほど!」

エイトが思い出す、紫陽花公園での出来事。

「そう!『マーメイド』であるかの確認!」

藍河がなるほどと呟いた。

「その黒ローブは、『マーメイド』が誰なのか知らないで襲って来た。という訳か」

「だと思うよ。相手は、紅葉を『マーメイド』だと勘違いして襲って来たんじゃない!『マーメイド』が誰か解らずに襲って来てたんだ!」

「わざわざ黒ローブは確認をする。逆を言えば、『マーメイド』が誰なのかバレない限り、いきなり殺しには来ないという事か。だから貴様は、先程部室でアクアに口止めしたのか……?自分が『マーメイド』だという事を隠すために。なら気をつけろーーあの豊本聖羅(とよもときよら)とかいう後輩に」

俺は疑問に思って問いただす。

「聖羅君?何でだよ?」

「普通有り得るか?爆発事件に巻き込まれて怪我をした奴が、入部したいなんて言ってくるか?どう考えても怪しい」

確かに言われてみれば怪しい。けれど、聖羅の印象がいいせいか、信用したくなってくる。

「まぁ聖羅君だけじゃなく、いろんな人に注意しないといけないな」

注意しないといけないのだ。紅葉達を俺達で護らないと……!

後悔はしたくないから……!


「樋口颯斗。貴様に確認しておく事がある。次は私の話をするぞーー」

藍河は手帳をパタンと閉じて台詞を続けた。

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