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サイキッカー辛過ぎワロタ  作者: 鉄飛行機
エピソード2
11/24

4話 スパイの極意

狙撃第2射の警戒ーー

フィフスの止血ーー

その2つに追われ、藍河は一刻も早くこの場から逃げようとした。ところで、もう1人の敵が接近していた事に気がついた。

懐に潜って接近していた敵ーー刀を持った男。

藍河は咄嗟の閃光弾で反撃し、右膝で男の顎を蹴り飛ばした。

「私は負けない……!この力で、姉上を守り抜くと誓ったのだ!」

藍河の反撃ーー当然その隙を、遠方からの長距離狙撃手が逃さない。

ズダン!


けれど、藍河に同じ手は通用しないのだ。

藍河は着地と同時に、床に寝かせておいたある物を持ち上げる。

床のコンクリートと全く同じ色に仕上げておいた、セメント迷彩柄の『ライオットシールド。』

ライオットシールドーー主に防護用に使われる軍事道具。

それを狙撃の方角へ向けるように構えて、ライフル弾から身を守った。

シールドにヒビが入った程度で、生命が守られた。

「もうスナイパーの位置は分かってるんだよ。そう簡単に当たるものか。スパイの極意その一。常に敵からの攻撃を想定し、いかなる時も身を守る術を備えておく事」

フィフスの重傷を棚に上げたような、スパイの極意その一。

それを聞いてゆっくりと立ち上がった男ーー赤いワインレッドのカラーコートを身にまとう、20代前半といった男。

その男が立ち上がって、耳に装着させていたインカムに向かって話し掛けた。

「……下手くそ。ちゃんと当てろよ」

藍河には聴こえてこない、若い女の声。台詞からして、狙撃をしていたスナイパーである事が分かる。

『足止めしていないから貴方が!狙いは正確だった私が!』

「……その倒置法日本語どうにかならないのかよ……聴いててウザイから」

『慣れてない日本語が!そんな事より仕事に集中しなさい貴方は!トワイライト・グラン!』

「グラン・トワイライトだからな。俺の名前は。そこは倒置法関係ないだろ普通」

グラン・トワイライト。この男の名前。

何処か聞き覚えがあるような……どうしても思い出せない。

「グラン……トワイライト……?」

「あ……名前言っちゃったよ。しまったなぁ。まぁいいや……どのみち生かしちゃ返さないからお前ら……」

グラン・トワイライトと名乗った男は、まるで死んだ魚のような目で藍河を見下した。

まるで、殺気や覇気が感じられないのだ。

「何なんだ貴様は!何者だ!?」

「……そういうお前は……あぁ、元合衆国エージェント。蓮崎藍河(れんざきあいが)か?今はフリーで活動してると聞いている」

「……こちらの情報は筒抜けと言う事か……!」

このグランという男は覇気を纏って戦っている訳では無いがーー

(ーースキがない!なんとかこの場から逃げないと……!フィフスもこのままでは命に関わる……!一刻も早く)

狙撃はなんとか免れている。しかし、左手にシールド。右手に負傷したフィフス。

両手が塞がっていては、目の前の男の攻撃は防げない。

それに先程は間一髪で免れたが、このグランという男の太刀をこれ以上交わすことに、流石の藍河も勝算がなかった。

ましてやーー両手が塞がっていては難しい。

それに、スナイパーからの攻撃は防いだとはいえ、背を向ければ撃ち抜かれる……この2人の立ち回りが、逃げ道を塞いでいた。

グランは表情変えずに、刀をスッと構えた。

「スパイってさ。仕事の過程で敵と戦うことが多いみたいだけどさ……ごめんね。こっちは敵と戦うのが仕事だからさ」

グランがーー刀を振りかざして接近する。

藍河は盾の向きを変えずに、後ろに飛んでそれを躱す。

こいつらは何故私達を狙う!?何故……と、考えてるところで気がついた。命を狙われる心当たりが、無いはずがないことに。

「あー確かに私は、人に恨みを買うことしかしてこなかったからなぁ。仕方がない。これも全て、愛すべき姉上の為だ!」

藍河は命綱であるライオットシールドを、グラン目掛けて投げつけた。

「は?こいつ馬鹿なの?俺の仲間に撃たれるよ?」

スナイパーの射線が通った。けれどそんな事、藍河が忘れているはずもいなかった。

「フィフス!今だ!」

抱えられていた重傷のフィフスがーーいつの間にか意識を取り戻していて、ある物を地面に叩きつけるように投げつける。

「ったく!怪我人を容赦なく使うよなお前は!超絶お前らしいけと!」

ボフン!

次の瞬間、灰色の煙が現れ、藍河とフィフスの身体を隠すように包み込んだ。

徐々に広がっていく煙の中で、藍河はニヤリと笑い言い残した。

「スパイの極意その二。脱出、脱走の事を常に考え、いかなる場所であっても脱出経路と手段を考えておく事」

「あーめんどくせー」

グランが諦めて立ち尽くす。

煙が風に流され、空気に溶けた頃にはもう藍河とフィフスの姿は無くなっていた。


1人になったグランは青空を見上げ、無表情のまま呟いた。

「……そういや、スパイは逃げ回るのが仕事だったっけ」

刀を腰の鞘にしまい、当てもなく歩き出す。

「ますます、俺が潰したくなったなぁ。あのスパイ」

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