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~6~

投稿してから1~2日後に自分で読んでみると、あちこち足りないところとか下手なところとかが目に付きますね。


順次その辺は修正加筆していく予定です>w<

 小柄な薄っすらと緑色の体をした醜悪な小鬼が、忌々しげに少女を視線で威圧する。

 手にはどこからか拾ってきたのか、小さめの剣を持っている。が、全く手入れをしていないのか非常に錆びていた。

 小鬼はゴブリンと呼ばれる、人類に憎悪を持つ魔物だ。

 繁殖力が高く、犬に似た鬼のコボルトと呼ばれる魔物を従えて行動することが多い。

 一匹一匹は大して強くないが、よく四~五匹で群れている事が多いため、Eランクに指定されている。


 そのゴブリンは錆びた剣を両手で持ち、上からまっすぐ少女目掛けて振り下ろす。

 が、少女は紙一重で横に避ける。

 大振りだったのか敵の体勢が前へと崩れるのを感じ取った少女は、すかさずしゃがみ込んで足払いをかける。そのまま小鬼は見事にこけた。

 少女は魔力を足に乗せ、しゃがんだ状態から一気に足を伸ばし、空へと跳ね上がる。

 そして全体重と魔力をを拳へ乗せ、転んでいる敵の後頭部へ殴りおろすと敵は沈黙した。


 少女の周りにはゴブリン、コボルトが四体ほど倒れていた。どれもこれもみな頭から血を流して絶命している。

 たった一人でこれだけの数の敵を倒した少女は、何やら納得いかない顔で自分の拳を見ていた。


「やはり力が足りぬな。体重をかけないと威力が出ない」


 その少女……リディは拳についた血を、持っていた布で拭き取りながら呟く。

 小さな拳には、鈍く光るナックルが装備されていた。

 以前持っていたナックルは大きすぎてサイズが合わなかったため、急遽リヴァに頼んでサイズ調整してもらったのだ。


「リディは小さいからか、前より素早く動けているように見えるな」


 木の上から声が届いた。上を見上げると、白髪の少年が枝に座ったまま観戦をしていたようだ。

 冒険者登録をしたリディは、レイダスと一緒に帝都から徒歩一日程度の距離にある森の中に毎日来ていた。もちろん道中はレイダスの背に乗って、だ。

 この森は最高でもDランクまでの敵しか住んでいない、初心者~中級者向けの場所である。

 森に通うようになってから三日が経っている。

 リディは初日はまず、リーチの差を練習した。二メートル越えの身長から百四十センチまで縮んだのだ。腕の届く距離や避ける際の移動距離など、全く違うからだ。

 初日は散々だったが、三日目の今日はそれなりに戦えるようになってきた。

 ゴブリン、コボルトの群れを一人で倒したのだ。すでにDランク相当である。


「そう見えるだけだ。実際は前のほうが早いぞ?」

「いや、出だしはその身体のほうが早い」

「ああ、確かにそれはそうだな」


 これは車に例えると分かりやすい。0.6tくらいの軽い軽自動車と二t近くある大排気量のセダンでは、ゼロスタートから最初の一秒と時間を区切れば軽い軽自動車のほうが速い。しかしスピードが乗ってくる数秒後には大排気量の車が速くなる。


「接敵すればそれほど距離を動く必要はないのだ。であれば、出だしが速いのは利点の一つかと我は思うが」

「戦い方によるな。前はゴブリンの剣など避ける必要もなかったしな」


 それは硬い鎧を着た重戦士の場合だけであり、決して上半身裸で戦っていた者の言うセリフではない。


 そしてリディの今の服装は、リヴァが用意した青色のチュニックに白色のズボンを履いている。

 どう見ても剣を受ければ致命的な装備だ。いやそれ以前に、戦いにいく冒険者の格好ではない。

 ちなみに昨日は全身黒色で統一した麻の服とズボンである。

 リヴァはスカートも用意していたのだが、さすがに元男としてそれは断固拒否した。


「せめて革鎧くらい着たらどうだ?」

「動きにくくなるだろ」

「しかしその格好では、街道を歩くだけならばともかく、森の中に入る時に着るものではないぞ?」


 よく見ると、リディの着ている服はあちこちが破れ、ほつれている。服が木の枝や蔦などに絡まり破れたのだろう。


「確かに森に行く度に服が破れるのは経済的ではないな。うーむ、なめし皮の服であれば破れないだろうし、今日帰ったら注文しておくか……っと」

「ふむ、お客さんだ」


 二人が同時にある方向へと視線を動かした。

 その先にはゴブリン達の血の匂いに惹かれたのだろう、巨大な影が森の奥から姿を現した。

 三メートルはあるであろう巨大な姿、まだ距離はあるのにもかかわらずここまで悪臭が鼻につく匂い、赤茶色く薄汚い肌だがすさまじい筋肉がある。

 大鬼オーガと呼ばれるDランク上位に位置する魔物だ。この森では生態系の頂点に立つ存在である。


「オーガか、ちょっとやっかいだな」

「我がやるか?」

「いや、試しにやらせてくれ」

「分かっているとは思うが、一発でも貰えば致命傷だぞ?」

「一発貰えば致命傷というが、オーガどころかFランクの牙ウサギですらやばいさ」

「気をつけてやれよ」

「まかせとけ」


 会話している間にオーガは、リディのすぐそばまでやってきた。

 いい獲物を見つけたのか、顔が何やら嬉しげに笑みを浮かべていた。

 オーガからすると、手ごわい冒険者でも無く単なる街娘エサに見えただろう。

 それを見上げるリディ。


「さあ 殺ろうか! 肉体強化!」


 掛け声と共に全身に魔力を籠める。薄っすら身体が紫色に光っていく。

 リディの蒼い髪の色が徐々に青紫色に変わっていき、それと共に力が漲ってくる。


 肉体強化魔法。


 人という枠の中ではトップクラスの力を持つ元リディの身体であっても、魔物というカテゴリまで含めると途端に低くなる。

 どうあがいても、人が竜に力で勝てるわけは無いのだ。

 俊敏さでもEランク相当の森狼以上に早く動ける人はそう居ない。


 そう、人は弱いのだ。


 しかしこの世界では人が覇者となっている。

 数もそうだし、戦略戦術というものを取り入れた戦い方も理由になっている。

 しかしながら、やはり一番の理由はこの肉体強化だ。

 魔力を全身に伝え、通常の何倍、あるいは何十倍もの力を発揮させる魔法。

 この魔法により、より格上の魔物に勝る強さを手に入れることができる。

 これが使えるか使えないかで、中級者(Dランク)と上級者(Cランク)の差が生まれてくる。


 しかしながら冒険者の大半はDランク止まりだ。つまりこの魔法が使えない、或いは使いこなせない人のほうが多い。更に魔力を全身に漲らせているため、非常に効率が悪い。

 普通の人が肉体強化魔法を使えば、十分も持てばいいほうだろう。そしてその後丸一日戦いにならない。


 また、更に肉体強化魔法をより効果的に、より効率的に使えるようになってから、初めて達人(Bランク)に上がる条件の一つになる。

 足だけ、腕だけに魔力を纏わせ、部分的に強化して魔力を効率よく使ったり、更には纏わせる魔力をより多くして、より多くの力を発揮させたりする事が出来ればBランクにあがれる可能性が出てくるのだ。


 第三隊副隊長従士のタウロスはこの肉体強化魔法の達人で、二時間以上継続して使うことができる。

 この魔法に限って言えば、リディより使い方が上手い。

 リディも召喚魔法が使えなければ、そしてAランク相当の魔物を召喚できていなければ、Bランク止まりになっていただろう。


 さて、オーガだがリディの唱えた肉体強化魔法に何かしら感じたのだろう。

 先ほどまでエサとして見てなかったリディを、敵と認識したようだ。

 低いうなり声をあげるオーガ。それに応える様にリディも吼えた!


「ああああぁぁぁ!」

「ウガアアァァァ!」


 三メートルを超える巨体と、その半分以下しかない子供の拳が交差する。

 それが激突するか、と思われた瞬間リディはオーガの拳を避け、更に腕につかまり勢い良くオーガの身体を駆け抜ける!


「ガ?」


 一瞬戸惑ったオーガの眼前にリディが迫り、蹴りをお見舞いした。

 その蹴りを受けたオーガは僅かに仰け反る、が、それだけだった。

 リディはそのまま蹴りの反動を利用して上手く地面へ着地する。


「足は腕の三倍強いと言われるが、それでも殆どダメージは与えられぬか」

「ガ、ガアアァァァァ!」


 オーガの身長は三メートルある。対してこの森に住んでいるオーガのエサとなるような者は、人を含めて二メートルにも満たない。つまり滅多に顔にダメージを受けたことはないのだ。

 それが自分の半分にも満たない小さい敵から、顔に蹴りを喰らったのだ。

 首より下に対する痛みは慣れていても、顔の痛みはほぼ生まれて初めての事だ。

 オーガは怒った。

 無闇やたらと腕やら足を振り回して攻撃してくる。木を折り、地面を砕く。

 しかしリディはそれを狙っていた。


「攻撃が単調になればなるほど、見切りも楽になる」




 太い腕や足を振り回すも右へ左へ攻撃を避けつつ、的確にダメージを入れていく小さい人。そこまで痛くはないが、当たらない事に腹が立ってくる。

 今までの敵は、このパンチ一発当たれば殆ど虫の息だったのだ。

 一発さえ当たれば……。

 ふと自分の足元に折れた木が見えた。そういえば、さっき腕を振り回した時に当たった気がする。

 そうだ。

 これを使えば、この小憎らしい人を吹き飛ばせるかもしれない。

 そしてその後、頭から丸ごと食ってやろう、貪ってやろう。小さいし食い出はなさそうだが、自分に対して無謀にも攻撃を当てたのだ。一番残酷に食ってやろう。


「おっと」


 オーガが足元に落ちている木を拾い上げ、それを振り回してきた。木と言ってもリディから見れば丸太クラスの大きさだ。

 それをぶんぶん力任せに振り回す。


「さすがにこれは避けづらいな」


 大きく振りかざしてから、攻撃してくるのでタイミングは分かりやすいのだが、範囲が広い。それなりに大きく避けないと、当たってしまうだろう。


「どうしたものか」

「そろそろ我が手伝ってやろうか?」

「まだ、手はある」


 リディは避けながらレイダスに叫ぶ。

 しかしレイダスの見る限り、手詰まりだ。

 リディの攻撃は当たる事は当たるが、ダメージを与えているように見えない。

 またオーガの攻撃は単調で避けやすい。

 しかし避けやすいとはいえ、当たれば一発で持っていかれる危険性がある。

 リディはああ言ったが、そろそろ我も動かないと、晩飯に間に合わなくなる。


(まあ手はあると言っておるし、それを見てからでも遅くはないか)


 しかしもう暫く見てても変わらなければ、我があのオーガに一撃を与えてくれよう。

 そうレイダスは思った。


 いい加減切れてきたオーガ。この木なんて何の役にも立たないではないか。

 よし、こうなったらこの木をあれにぶん投げてやろう。

 そうすればきっと良くなる。次にあの人間が離れたときに投げてやろう。



 リディは息が切れてくるのを感じた。さすがに鍛えてない身体に、肉体強化魔法をさっきからずっとかけ続けているのだ。

 魔力自体はまだまだ余裕はあるものの、肉体的にきつくなってきた。


(しかしさすがハイエルフだな。前の身体じゃここまで長く強化魔法は続けられないぞ)


 リディはそこまで肉体強化魔法に精通はしていない。

 ただ元の身体が非常に強力だったため、そこまで魔力を纏う必要がなかったからだ。

 仕方ない、一旦離れるか。

 地面を蹴って後ろへ飛ぶリディ。

 それを見たオーガは、嫌らしくぬたりと笑う。


(む、来るか?)


 オーガが木を振り上げるようにするのを目にしたリディは、事態が動いたのを察する。

 思ったとおり、丸太をこちらへ投げてきた。

 それは勢い良く回りながら、とんでもないスピードで飛んでくる。


 あれに当たれば、良くて内臓破裂、悪ければ即死だな。

 そんな事を思いながら、足に魔力を籠める。


 凄まじい勢いで丸太がリディの居た場所を通過し、後方の木に当たり、そのままなぎ倒していった。

 当たったか? と思ったオーガは、憎らしい人間が視界から消えているのに気がついた。

 あの木に当たって吹き飛ばされたのか?

 今まで身長の低い人間を相手にしてきたため、オーガの視界は下しか見ていなかったから、空へ跳んでいるリディに気がつかなかった。


 リディは上に跳んだ後、更に木の幹を蹴ってオーガ目掛けて一直線に飛ぶ!

 いわゆる三角飛びだ。

 それに気がついたオーガは、慌てて腕を交差させ防御を取ろうとするが間に合わない。

 そのままリディの蹴りが、再びオーガの頭に炸裂する!


 脳震盪を起こしたのか、ふらふらと大きな身体をふら付かせるオーガに、地面へと降りたったリディは、再び地面を蹴ってオーガに迫る。


「はあああぁぁぁ!」


 気合を入れたリディの拳が、オーガの下半身、俗に言う股間にぶち当たった。

 奇声を上げ泡を吹いてぶっ倒れるオーガ。

 すかさずオーガの首を持ち上げ、そのまま力を籠めて首の骨を折った。


「リディよ……お主、えげつないな」


 呆れた顔で、なぜか自分の股間を微妙にガードしながら、レイダスが木から飛び降りてきた。


「自分がやられて一番嫌な事をやったまでよ」

「同じ男としてオーガに多少の同情は禁じえぬ」

「まあ、私も昔であればこんな方法は取らなかっただろうな」


 片手を垂直に上げ、オーガの死体に向けて瞑想をしながら「こんな倒し方ではお前もさぞかし無念だったであろうな。我が一思いに八つ裂きにしたほうが、まだ幸せだっただろうに」と呟いた。

 それを見たリディは苦笑いしつつ元気良く言葉を発した。


「取り合えず勝った。今日はいい訓練が出来たわ。さあリヴァの飯でも食いに帰るか!」


私も同情を禁じえませんでした・・・南無


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