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~4~

今回も短めです。

次は冒険者シーンですので、長くなると思います


「本当にその娘が、あのシュタイナツ副隊長なのか?」

「信じられぬかも知れないが、真だ」

「確かに態度や話し方は副隊長殿そのものだけど……ちょっと信じられないなぁ」

「……かわいい」


 あれからオールドベルト改めリディは、レイダスを伴って近衛隊第三隊の宿舎に赴き、とある三名と会うことになった。

 その三名とは……。


 第三隊隊長のサーフェス=ライリック=ハウル。ハウル子爵家の長男。

 歴戦の戦士風ではなく、インテリ系な雰囲気を持つ三十歳くらいの男だ。金髪金目で、鋭い目つきをしている。

 サーフェスは、隊長とはいえ実力的にはFランク冒険者(駆け出し)相当である。しかしながら事務処理能力が非常に高く、第三隊に欠かせない存在だ。

 面倒ごとは全て隊長に任せればいつの間にか解決している、とまで言われている。


 次に副隊長補佐のエリーゼ=マイルレス=ハインツ。ハインツ男爵家の三女。

 銀色の長い髪を後ろで束ねた二十代中盤の女性だ。細剣を腰にぶら下げている。

 身長は百五十五センチと低く童顔だが、銀のシルバーウィンドエリーゼと異名を取る程の実力を持っている。


 最後が副隊長従士のタウロス=アルティ。元Bランク上位冒険者。

 こちらも金髪金目でエリーゼと同じように長い髪を後ろで束ねている、軽薄そうな男だ。歳はエリーゼより一~二歳ほど上である。

 軽薄そうな姿とは裏腹に肉体強化魔術の達人であり、リディ程ではないものの、力技が得意である。


 またエリーゼとタウロスは、入隊したての頃からリディが面倒を見てきており、事実上の弟子に当たる。

 猛者が多い第三隊の中でも、この二人の実力は頭ひとつ抜けている。


「しかし隊長、討伐任務には成功したものの、私はこのような姿になってしまった。これからどうすべきだろうか?」


 このような姿になった経緯を話したリディは、それに続いてサーフェスに問いかけた。


「う、うむ。さすがに俺でもすぐには判断つかない」

「別にそのままでいいんじゃないですかねぇ。副隊長殿は副隊長殿ですし」

「……かわいい」


 迷うサーフェスに対し、軽くタウロスは答える。


「だが、これから少しばかり冒険者として戦いの練習をしてみるが、おそらく以前より格段に弱くなっているぞ?」

「実力主義の第三隊で弱くなったのでは、副隊長の地位はさすがに保てないだろう」

「私もそう思う」

「弱くなったといっても、戦い方や判断力は以前のままですよねぇ。それなら顧問としてやっていくのもいいんじゃないですか?」

「……かわいい」


 顧問とは、年齢的に前線へと出られなくなった人が、若手の教育をする為の肩書きだ。いわゆる教官という立場になる。


「正直シュタイナツ副隊長をこのまま失うのは痛手だが、かと言って顧問にするのもな」

「私のこの姿では、多分なめられるでしょうな」

「何なら我が教育してやってもよいぞ?」

「いや待って待って! 確かにレイダスさんは強いけど、戦い方は人間に真似できないよ。この前だって、『そこで空に舞ってブレスだ!』とか言ってたじゃん。どうブレス出すんすか!」

「空も舞えない、ブレスも吐けない、人間とは不便な生き物だな」

「この大陸広しとはいえ、ブレス吐けるのは竜種くらいだよ!」

「……かわいい」


 確かに竜であるレイダスが、人間に戦い方を教えるのは少々無理がある。


「私も二年後くらいには、引退しようとしていた身だ。それが少し早まったと思えば」

「爵位の件もこれだと無かった事になるな」

「これだけ隊に……いや国に貢献してきた副隊長殿に対して、何にも出さないのは薄情すぎますよ、隊長殿」

「もちろん爵位は無理だが、それ以外の金品なら十分に用意するさ」

「……かわいい」


「それとシュタイナツ副隊長は今後どうしていくつもりだ?」

「まずは冒険者として練習した後、この少女の親御さんに会いに行くつもりだ。その後はまたここへ戻ってきて、冒険者として暮らしていこうと思っている」

「隊へ来る前の生活に戻る、という訳か」

「ええ、私にはそれしか脳がないからな」

「帝都に住んでいるのであればいざという時、副隊長殿の力を借りられますね」

「タウロス、お前ももう一人前なのだ。エリーゼと共にしっかり隊を背負っていけ」

「……かわいい」


「ところで……さっきからおエリーゼは何を言っているのだ?」

「かわい……じゃなくって、副隊長殿!」

「なんだ?」

「抱きしめてもよろしいでしょうか!」

「だが断る」

「そんなつれない……でもツンデレという奴ですわね! 分かります、さすが副隊長殿!」

「な・に・が、『さすが副隊長殿!』だ!」


 エリーゼの頭を拳でぐりぐり締め付けるリディ。だが全然効いている様子はない。

 子供がムキになって大人エリーゼを叩いているだけのように見える。


「あー、もうかわいいっ! 隊長殿! お持ち帰りしてもよろしいでしょうかっ」

「却下だ」

「いやエリーゼ、気持ちは分からなくはないが犯罪はだめだぞ」

「甘いわタウロス。副隊長殿は四十手前のお歳なんだから、犯罪じゃないわよ」

「同意がなきゃ何歳だろうと犯罪だよっ!」


 ぐりぐり効果も薄く泣く泣く諦めたリディは、エリーゼのなすがままになっていた。

 意外とふくよかな胸に包まれたリディは、タウロスの方へ顔だけ向けた。


「なあタウロスよ、エリーゼってこんな性格だったか?」

「今まさに副隊長殿自ら体験しているところじゃないですか」

「お人形さんみたいっ! ほらほらもっと強く抱きしめますわよっ!」

「エリーゼ、止めぬかこら! あっ、よせやめ、どこ触っておる! あああああぁぁぁぁぁぁ……」


 リディの高い声が室内に響き渡る。


「第三隊をこの二人に任せるのは不安が残るな……」


 頭を抱えたまま、ぽつりとサーフェスが呟いた言葉は、誰の耳にも届かなかった。


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