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今回も短めです。
次は冒険者シーンですので、長くなると思います
「本当にその娘が、あのシュタイナツ副隊長なのか?」
「信じられぬかも知れないが、真だ」
「確かに態度や話し方は副隊長殿そのものだけど……ちょっと信じられないなぁ」
「……かわいい」
あれからオールドベルト改めリディは、レイダスを伴って近衛隊第三隊の宿舎に赴き、とある三名と会うことになった。
その三名とは……。
第三隊隊長のサーフェス=ライリック=ハウル。ハウル子爵家の長男。
歴戦の戦士風ではなく、インテリ系な雰囲気を持つ三十歳くらいの男だ。金髪金目で、鋭い目つきをしている。
サーフェスは、隊長とはいえ実力的にはFランク冒険者(駆け出し)相当である。しかしながら事務処理能力が非常に高く、第三隊に欠かせない存在だ。
面倒ごとは全て隊長に任せればいつの間にか解決している、とまで言われている。
次に副隊長補佐のエリーゼ=マイルレス=ハインツ。ハインツ男爵家の三女。
銀色の長い髪を後ろで束ねた二十代中盤の女性だ。細剣を腰にぶら下げている。
身長は百五十五センチと低く童顔だが、銀の風エリーゼと異名を取る程の実力を持っている。
最後が副隊長従士のタウロス=アルティ。元Bランク上位冒険者。
こちらも金髪金目でエリーゼと同じように長い髪を後ろで束ねている、軽薄そうな男だ。歳はエリーゼより一~二歳ほど上である。
軽薄そうな姿とは裏腹に肉体強化魔術の達人であり、リディ程ではないものの、力技が得意である。
またエリーゼとタウロスは、入隊したての頃からリディが面倒を見てきており、事実上の弟子に当たる。
猛者が多い第三隊の中でも、この二人の実力は頭ひとつ抜けている。
「しかし隊長、討伐任務には成功したものの、私はこのような姿になってしまった。これからどうすべきだろうか?」
このような姿になった経緯を話したリディは、それに続いてサーフェスに問いかけた。
「う、うむ。さすがに俺でもすぐには判断つかない」
「別にそのままでいいんじゃないですかねぇ。副隊長殿は副隊長殿ですし」
「……かわいい」
迷うサーフェスに対し、軽くタウロスは答える。
「だが、これから少しばかり冒険者として戦いの練習をしてみるが、おそらく以前より格段に弱くなっているぞ?」
「実力主義の第三隊で弱くなったのでは、副隊長の地位はさすがに保てないだろう」
「私もそう思う」
「弱くなったといっても、戦い方や判断力は以前のままですよねぇ。それなら顧問としてやっていくのもいいんじゃないですか?」
「……かわいい」
顧問とは、年齢的に前線へと出られなくなった人が、若手の教育をする為の肩書きだ。いわゆる教官という立場になる。
「正直シュタイナツ副隊長をこのまま失うのは痛手だが、かと言って顧問にするのもな」
「私のこの姿では、多分なめられるでしょうな」
「何なら我が教育してやってもよいぞ?」
「いや待って待って! 確かにレイダスさんは強いけど、戦い方は人間に真似できないよ。この前だって、『そこで空に舞ってブレスだ!』とか言ってたじゃん。どうブレス出すんすか!」
「空も舞えない、ブレスも吐けない、人間とは不便な生き物だな」
「この大陸広しとはいえ、ブレス吐けるのは竜種くらいだよ!」
「……かわいい」
確かに竜であるレイダスが、人間に戦い方を教えるのは少々無理がある。
「私も二年後くらいには、引退しようとしていた身だ。それが少し早まったと思えば」
「爵位の件もこれだと無かった事になるな」
「これだけ隊に……いや国に貢献してきた副隊長殿に対して、何にも出さないのは薄情すぎますよ、隊長殿」
「もちろん爵位は無理だが、それ以外の金品なら十分に用意するさ」
「……かわいい」
「それとシュタイナツ副隊長は今後どうしていくつもりだ?」
「まずは冒険者として練習した後、この少女の親御さんに会いに行くつもりだ。その後はまたここへ戻ってきて、冒険者として暮らしていこうと思っている」
「隊へ来る前の生活に戻る、という訳か」
「ええ、私にはそれしか脳がないからな」
「帝都に住んでいるのであればいざという時、副隊長殿の力を借りられますね」
「タウロス、お前ももう一人前なのだ。エリーゼと共にしっかり隊を背負っていけ」
「……かわいい」
「ところで……さっきからお前は何を言っているのだ?」
「かわい……じゃなくって、副隊長殿!」
「なんだ?」
「抱きしめてもよろしいでしょうか!」
「だが断る」
「そんなつれない……でもツンデレという奴ですわね! 分かります、さすが副隊長殿!」
「な・に・が、『さすが副隊長殿!』だ!」
エリーゼの頭を拳でぐりぐり締め付けるリディ。だが全然効いている様子はない。
子供がムキになって大人を叩いているだけのように見える。
「あー、もうかわいいっ! 隊長殿! お持ち帰りしてもよろしいでしょうかっ」
「却下だ」
「いやエリーゼ、気持ちは分からなくはないが犯罪はだめだぞ」
「甘いわタウロス。副隊長殿は四十手前のお歳なんだから、犯罪じゃないわよ」
「同意がなきゃ何歳だろうと犯罪だよっ!」
ぐりぐり効果も薄く泣く泣く諦めたリディは、エリーゼのなすがままになっていた。
意外とふくよかな胸に包まれたリディは、タウロスの方へ顔だけ向けた。
「なあタウロスよ、エリーゼってこんな性格だったか?」
「今まさに副隊長殿自ら体験しているところじゃないですか」
「お人形さんみたいっ! ほらほらもっと強く抱きしめますわよっ!」
「エリーゼ、止めぬかこら! あっ、よせやめ、どこ触っておる! あああああぁぁぁぁぁぁ……」
リディの高い声が室内に響き渡る。
「第三隊をこの二人に任せるのは不安が残るな……」
頭を抱えたまま、ぽつりとサーフェスが呟いた言葉は、誰の耳にも届かなかった。




