侵入者にはご用心 6
気が付けば夜も更けていて、肌寒くなっていたのでショールを羽織最近図書館から借りたばかりの新しいジャンルの本を手に持ち読み始めようとした時、衣装棚の扉が独りでに開いた。
キィーーーッ.........
いや、訂正すると独りでに開いたわけではなく、数日前に傷を負い手当てした人物がこの部屋の主であるジャスティーンの部屋の中にいたのだ。
というか...隠し通路の入り口がまさか、衣装棚の壁ってベタすぎませんか!?と突っ込みを心の中で入れつつ、侵入者と見つめあうジャスティーン。
どういう風に声をかければいいのかわからない。
知らないフリはありなのだろうか?
それができたら苦労しないな...そうなると、どうする?
相手の出方を見る。
それにしよう!
侵入者はジャスティーンに近づき何故かわからないが、若干頬が赤い気がする。
「おい、ぼーっとしていないで何か言え」
命令系かい!!と、心の中で突っ込みを入れた。
「どうした...俺を忘れたのか?」
忘れるわけあるかボケーーー!!と、これも心の中で突っ込みを入れた。
「そうか...いきなり現れたから驚いているのだな?」
わかっているのならさっさと帰れ不法侵入者が!!と、これも自分の心の中で突っ込みを入れた。
「頼む、何か言ってくれ」
.........『何か』って言われたら、あれしかないよね?そう考えたジャスティーンは口を開いた。
「どちら様ですか?」
「.....................おい、馬鹿にしているのか?」
あははは、さすがに怒るよね。
でも、忘れることや誰にも言わないと目の前の人と約束したし...ねえ?
「いえ、数日前の出来事でしたら他言無用ですよね。ですから、どちら様ですか?」
「他言無用と入ったが、約束した当人同士で知らないフリしろとは言ってないぞ」
「.........はあ、この部屋に2度と来ないという約束はどうなったのでしょうか?」
「表からは来ないと約束したまでだ」
胸を張って言われても...確かに表からは2度と来ないと言っていたな......さて、数日前の侵入者改めソレイユ国王が私に何の用なのだろうか?とジャスティーンは首をかしげた。
「それでは、この部屋に再度侵入してきた理由を聞いてもよろしいですか?」
「侵入?失敬な。この国のものは全て俺のものだ!」
まあ貴方様の国ですけど、プライベートってあると思いますよ。
そんなこと言っても理解しないだろうから言わないけど......
「では、どういった御用でお越しになられたのでしょうか?」
「ふむ...実は用という用はない!」
「.....................では、お帰りください」
まさか帰れと言われると思わなかったエドワルドは絶句していた。
他の側室から邪険に扱われたことが無い...のは当たり前だが、衝撃的だったようで思考停止したかのように動かなくなった。
ジャスティーンはそれを無視して本を読み始めた。
「て、おい!俺が誰だかわかっているのに邪険に扱うとはどういうことだ?」
面倒な男だな...と、本から視線を上げエドワルドを見た。
「これは非公式の訪問ですよね?」
「まあ表からこの部屋に入ってないから、非公式といえば非公式だ」
「それなら貴方様は後宮の主というわけではないという解釈をしても誰もわからない」
「......お前そういう結論をだすんだな?」
「いえいえ、貴方様は尊いお人です。こんな貧弱で病弱な側室失格な女の元へ来るような心優しいお方...」
読んでいた本をテーブルへ置きながら顔を伏せてジャスティーンは言った。
「わかっているのなら、もてなそうとは思わないのか?」
「はあ...もてなすといわれましても......そうですね...」
ジャスティーンは先ほどまで読んでいた本を見て思いついた。
国王陛下におもてなし...ねぇ......。
椅子から立ち上がりエドワルドの近くまで歩み寄り、エドワルドがジャスティーンの行動を警戒している。
「できることが限られます」
「そうか、それならお前は俺をどうもてなすのだ?」
そう言ってくるだろうと予測していたジャスティーンは、許しを請う前に貧弱だとわかっている自分の腕をエドワルドの腕に絡ませて平らな胸をエドワルドの腕に押し付けた。
ジャスティーンの意外な行動にエドワルドは身構えたが、ジャスティーンは顔を上げエドワルドと見つめあった。
「私にできることはこれぐらいです」
「お...そう...か」
「こちらへどうぞ」とエドワルドの腕を引きながらベッドへと向かいエドワルドが警戒しているのが手に取るようにわかる。
「陛下、薄着になられてベッドの上にどうぞ」
ジャスティーンは初めて異性に告げる言葉を恥ずかしいと思いながら伝えた。
「あ...ああ、わかった」
戸惑いながらもジャスティーンの望むように上着を脱ぎ剣はベッドの枕元の横に置いた。
その行動に異論なし。
エドワルドがジャスティーンに気を許していない証拠。
シャツとトラウザーズの姿になったエドワルドはベッドに上がりなんか違うんだよな?と疑問符がついているような表情でベッドに寝そべった。
エドワルドの視線を感じながらジャスティーンは最近図書館から借りた新ジャンルの本を手に取りパラパラと本を開いた。
「本は何か関係があるのか?」
「はい日頃お忙しい陛下を思いまして...ええっと、フットバスは飛ばして...順番も適当でいいか」
ぼそぼそと呟きながらベッドへ近づくジャスティーンに不審な目で見つめるエドワルド。
「何を始める気だ?」
「おもてなしです」
本を読みながらきっぱりと告げるジャスティーンに一抹の不安が残る。
「よし、順番は適当でも内容があっていればいいか!!」
本を枕元に置いて不吉なことを言い出すジャスティーンにソレイユ国王エドワルドが慌てた。
「一体何をするのだ?」
「まあまあ、いいからいいから」
「よくないだろう!!」
起き上がろうとするエドワルドにジャスティーンはエドワルドの足首から指圧を始めた。
「なんだ...気持ちいいな」
「はいこれは遥か遠くの国で行われているマッサージというものです。日頃忙しい陛下の疲労を和らげるためのものです」
ジャスティーンの言葉が意外だったのかエドワルドは起こしていた上半身を元いた位置へ戻した。
何度か足首から足の付け根へと指圧を繰り返しエドワルドがリラックスしてきたのが分かった。
次に両腕のエネルギーラインという『セン』を指圧もしエドワルドは目を閉じ気持ちよさそうにしていた。
「次は背中のコリをほぐしますので胡坐をかいて頭の後ろに手を組んでいただけますか?」
「!?ああ、わかった」
これまで気持ちのいい指圧をしてきたのでエドワルドはジャスティーンの言うとおり上半身を起こして胡坐をかいて両手を頭の後ろで組んだ。
ジャスティーンはエドワルドの背後にまわりこみ組んだ両腕の上腕と下腕の間に手を入れジャスティーンの膝を背中の真ん中に当てエドワルドを上にひっぱりながら膝を支点に背中を反らせた。
「い、いだいだいだいだいだ痛い!!」
「え?軽くひっぱている程度ですよ痛いですか?」
「痛い!!」
速攻「痛い」と言ったはずがジャスティーンは「気持ちもいいですよ」と引っ張る行為をやめなかった。
エドワルドは痛みを堪えているかのようでジャスティーンとしてはその姿に日頃鬱憤が溜まっていたので気分爽快で仕方がなく次から次へと本に書いてある技をエドワルドにお見舞いした。
一番エドワルドの反応が良かったのは誰にもされたことのない体位をお見舞いした。
それはツボ押しだけではなく、背筋を伸ばしたり、ひねったり、腰、足、腕、手、首など体全体の節々をほぐすポーズをとるストレッチがあり、エドワルドの背中にのったり、踏んだり、抱きかかえたり、様々な手法がとられりその度エドワルドから「痛い」だのなんだの叫ぶエドワルドを無視して最後までやりきりジャスティーンとエドワルドは息も絶え絶えだった。
「はぁ、はぁ、はぁ、陛下いかがでした?」
「こ、こんな強烈な...もてなしは、はぁ...初めてだ」
「ふぅーーーー、それはようございました」
ジャスティーンの言葉にエドワルドは勢いよく立ち上がり抗議をした。
「いいわけあるか!初めてだぞこんな屈辱的な気分は!!」
「でも、気持ちよかったですよね?」
「う...ほとんど痛かった!」
「それは...陛下は不健康という結果になります」
「...................気持ちよかったぞ」
長い沈黙後エドワルドの言葉を聞いたジャスティーンはベッドのそばに立つエドワルドに素早く上着類を着せ枕元に立てかけた剣をエドワルドに渡すと急いで隠し通路の扉を開けてエドワルドを隠し通路に押し込み「さよなら~」と手を振って扉を閉めた。
これで側室としての一仕事を終えて清々しい気持ちで読書を続け、隠し通路で呆然としているエドワルドのことなどジャスティーンは知る由もなかった。
マッサージのイメージはタイ式マッサージです。
ジャスティーンの行動をいい子はマネしないでね。