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侵入者にはご用心 5

お約束過ぎてごめんなさいな展開になります。


「エド、ケガの方は大丈夫なのか?」

「ああ傷は浅いので問題ない。」


 ここは後宮の一室。

 ワインを一口飲みエドワルドは正面に座る草原を思わせる鮮やかな色のドレスを身にまとい、宝石や装飾品を見事身に着ける側室のイザベラをみて、先日思いがけずであった側室を思い出した。

 まったくと言っていいほどあの女とイザベラでは天と地の差があった。


「おい、何考えてんだよ!?」

「いや毛色の変わった生き物を見つけたんだ」

「マジで?女...まさか男か?」

「そんな訳あるかこの女装ヤローが!!」

「うるせーよ、好きで女装してるわけじゃないわボケ!お前のせいでこんな目にあってんだろう!責任取れよ」


 もう一度言おう。

 ここは後宮のイザベラの部屋でソレイユ国王とこの部屋の主である側室のイザベラが対談していた。


「いい加減さ、この役辞めたいんだけどーーーぉ」

「ダメだシュナイザー。この後宮内に正妃として認めてもいい側室がいない。大臣からも後宮に通わないといろいろ言われるし、頼む従兄妹の俺を助けると思って!」


 エドワルドが頭を下げ頼み込む姿を両腕を組み唸りながら見つめるイザベラ改めシュナイザーは顔を天井に向けた。

 彼はソレイユ前国王の弟の子供だ。

 王位継承権も持っている。

 そんな彼がどうして側室になったという経緯はただ単純に、女顔に生まれてしまい且つ従兄弟の切実なお願いに付き合うほかなかっただけの話。

 女好きの国王なら喜んだだろうが、その正反対の男が国王になりしかも側室50人はきついだろう。

 それでも彼は王として側室達と関係を持ち何とか半数以上減らしてきた。

 そんな彼とそれに同情したこの国の宰相から女装と側室として後宮に潜りこむことを頼まれてしまい断りきれなかったシュナイザーがイザベラとして後宮で生活しつつ、この部屋にも王宮へと続く隠し通路があるのでシュナイザーとしての執務もこなしている。

 イザベラの部屋に出入りしている侍女は限られていて、気心しれた者達ばかりだった。

 シュナイザーとしては早く正妃を決めてもらいイザベラという架空の人間からおさらばしたい心境だ。

 まだ少年と青年の中間でいつ男としてゴツゴツした体つきに成長するかわからず、今もハラハラドキドキのシュナイザーだからこそ焦っている。

 何も側室から正妃を決めることなどない。

 貴族・王族の中に誰か正妃に向いている女性がいれば王の一言でそれが叶う。

 しかしそちらの方に淡泊な従兄弟のエドワルドはもうすぐ7年目を迎えようとしても一向に正妃を決めることをしない。

 王位を継いだときは国が荒れていたのでそれの鎮圧に忙しかったが、あれから6年が経ち経済も安定してきた時期だからこそ、今度は世継ぎの誕生に皆の関心があるのだ。

 今まで一度も後宮で刺客に襲われたことのないエドワルドだったが、先日ケガを負う不測の事態が発生した。

 権力者達が痺れを切らしているのだろう。

 これはある意味警告とも取れる。


「犯人はわかりそう?」

「恨みを買っている者が多すぎて絞り込めない」

「だね...て、太刀筋からどこの流派とかもわからなかったの?」

「殺しのプロだ。流派もなにもないだろう。それに薄暗くてな。殺気を感じ避けたら左腕をやられていて、近くにあった盾で次の攻撃をかわし、丁度煙幕を所持していたのでそれを目くらましにして逃げた」


 エドワルドの説明に生きていてよかったと思うシュナイザー。


「エドが生きていてよかった」

「そうか?そう言ってもらえて嬉しいよ」

「今日は泊まって行く?」

「ああ、泊まれせてもらおう」


 そうと決まればと2人はラフな格好に着替えキングサイズのベッドの端と端に寝転がり天井を眺める2人。

 最初の頃は男同士で一緒のベッドに寝るという行為に抵抗があったが、今は慣れてしまった。


「そういえばシュナイザー。西の一番奥の部屋の側室と話したことはあるか?」

「はあ?あの辺はもう空き部屋で誰もいないだろう」

「そう思うよな...俺が刺客に襲われて隠し通路から逃げようとある部屋に入ると女がいたんだ」

「おいおい、幽霊とか?」

「...そういう発想はなかった...残念ながら生身の人間だった」

「ふ~ん、その女が毛色の変わった生き物ということか」

「まあそうなる」


 仰向けで寝ていたシュナイザーはエドワルドがどんな表情をしているのか気になり体を横に向けた。


「で、その部屋にいた側室はどこの誰なんだ?」

「隠し通路から自室へ戻りすぐ宰相のライモンに確認したところ、どうやら古株の側室50人の中の一人で男爵家の娘のようだ」

「その言い方だとエドはその子に手を出してないってことだよね?ただ単に忘れていたというオチじゃないよね?」

「手は出してないし隠し通路の入り口がその女の部屋だったというだけで、存在すら知らなかった」

「そんなこと可能なの?」

「どうやら男爵家の娘は病弱らしい。だから俺に情報をいれなかったと...ライモンと女官長の2人で話し合いがあったそうだ。病弱ということもあって早々に下賜させる計画をたてたが、受け入れ先がなくて現在に至るそうだ。俺が一度も相手にしていないので男爵家に帰したほうがいいのでは?とライモンが提案したんだが、そんな可哀想なこと申し訳なくて出来ないと女官長がライモンに泣きついているみたいだし...」


 エドワルドの話を黙って聞いていたシュナイザーが上半身を起こした。


「その子、女官長のお気に入りってこと?」

「そうらしい。他の側室と違い我儘も侍女の苦情もなくひっそりと暮らしているようでな。せめて嫁ぎ先を探してやりたいと言われてるようだ」

「ふ~ん、あの女官長がね...エド自身男爵家の娘と直接会ってどう思った...いや、面白い娘ってことだったね。まさかだと思うけど男爵家の娘がいるのにその部屋から隠し通路を使って王宮に帰ったなんて言わないよね?」

「..............................。」


 何も言わないエドワルドに絶句するシュナイザー。

 側室とはいえ正妃になる女性ならまだしも、ただの側室に重要な秘密を教えてしまったエドワルドの行為に何も言えない。

 むしろ公私混同しないエドワルドの行動に疑問を抱きつつ、男爵家の側室に会いたくなった。


「エド、その子の名前は?」

「ジャスティーン・ハイドだ」

「ハイド男爵家の娘ね」


 シュナイザ―も王家の人間だ、貴族の名前は一通り頭に入っている。

 ハイド男爵家は確か現在の当主になってから落ちぶれてたと記憶してる。


「その子を俺が見張ればいいのか?」

「いやあの日以来、時間があれば隠し通路にある覗き窓からジャスティーンの監視していたのだが、必要最低限以外侍女の出入りはないどころか、食事の配膳も2日に1度とかありえない生活をしていた」

「............監視って」


 どうでもいいような側室の監視を王自ら何故している!?

 一言シュナイザーに伝えれば、シュナイザーの侍女たちに頼み監視してもらえばいいだけの事だろう?

 エドワルドの行動にシュナイザーは頭を抱えた。


「あいつ...あんな生活していて大丈夫なのか?」

「いやダメなんだろう。てか、病弱なのにどうして側室になれたんだ?権力者の娘じゃあるまいし」

「そこは俺も気になってライモンに確認したところ、もう隠居した大臣がジャスティーンの祖父に恩があって、現在の当主で落ちぶれていくのを助けたかったそうだ。まあ、何も変わらないようだが......」

「なんて無謀なことを......」


 同情するシュナイザーはまだ会ったことのないジャスティーンに同情した。


「結局、ジャスティーンは白なのか?」

「ジャスティーンの全てを把握していないから、まだ白とは言い切れないが、俺が見た限りは白に近い」

「じゃ、今後はジャスティーンの部屋にも足を向けるんだな?」


 年齢はそれなりに離れているが、シュナイザーはエドワルドを兄としたっていて暇さえあれば一緒に遊んでいたエドワルドとシュナイザー。

 シュナイザーはエドワルドの口調からしてジャスティーンに恋心と、まではいかなくとも好意を抱いているのがわかる。

 しかし次のエドワルドの発言にシュナイザーは困惑した。


「いや行かない」

「あ、そうなの」


 面白い生き物を見つけたと言っていた割にあっさりと身を引いた。


「表向きはな」

「............表向き?」

「ああ、あいつ俺の側室のくせに手当や助けたかわりに、2度と部屋に来るなって言いやがった」

「ぷっ、マジで!?」

「マジだ。側室として平穏に暮らしたいから来るなって、他の側室も実はそう思っているものなのか?」

「どうだろうね...権力や正妃になりたいと思っている連中は王であるエドに好かれようとするだろうが...あっ、あとは本気でエドを好きになった側室だっているだろうし、部屋に来るなってのは後宮の権力争いに巻き込まれたくないんだろうね」


 ここ数年でいろんな側室の嫌がらせを受けているシュナイザーはジャスティーンの気持ちがわかる。


「そんなもんか...女ってのは嫉妬の塊みたいなものだな」

「それは仕方ないよ。女だらけの後宮で自分の価値を見出すのは、国王の世継ぎを産むまたは正妃の座を手に入れられれば、それが誇りとなり後宮の側室たちと大きな差をつけられる」

「.........それは何だかむなしいな」

「どうだろうね。好戦的で計算高い女ならこの状況を楽しむ人間だっているさ。人それぞれだと思うよ。みんながみんなエドを愛するとは限らないしね」


 シュナイザーの言葉にエドワルドが笑った。


「どうしたのエド?」

「いや、シュナイザーの言うとおりだな...と、側室すべての女がそうだとは言わないが、ここ数年間相手にしていた側室はプライドが高い女が多かったし、正妃になりたいと願い俺に頼み込んできた輩もいた。久しぶりに馬鹿正直な態度をみて嬉しい...というか、楽しかったな」


 エドワルドは瞼を閉じ、ここ数日間時間が空いたときに隠し通路からジャスティーンの部屋を覗き窓から観察して彼女が側室になった経緯はどうであれ、ここの生活を自分なりに見出しより良い環境づくりをしていた。

 そのために努力を惜しまない徹底ぶりに力の使い道が違う気がするが、面白いと思った。


「それでジャスティーンの今後の対応はどうするの?」

「当分様子見だ」

「ふーん、俺の方も侍女たちにさりげなく探りを入れるようにしてみる」

「頼む。隠し通路の件を誰にも言わなければそれで...いい......」


 もう寝たのかな...と、シュナイザーは少し離れて寝ている従兄弟の寝顔を確認してシュナイザーも瞼を閉じた。

 異性に興味を示さず、王というだけでその責務を果たすだけに側室と関係を持つこの不器用な従兄弟が変わり種の異性に興味を示したのだ。

 これはシュナイザーの中で大事件だ。

 お茶会などで多分会えるが話せるとは限らない。

 その女性と話せるのを楽しみにシュナイザーは眠りについた。


 




後宮に男がいてすみません(・・;)

※6/11本文修正しました。

※6/21   〃

ありがとうございました。

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