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侵入者にはご用心 16

お久しぶりです。

久しぶりで不安ではありますが、とりあえず1話投稿します。


「で、どうなんだ?俺に会えないあまりイザベラに毒物を飲ませたのか?」


 エドワルドがウキウキとした声でジャスティーンに問いかけるが、問いかけられたジャスティーン本人は何も答えることなく遠くを見つめていた。

 一般的に言うと現実逃避したいといった風に目を細めて遠くを見つめた。


 ここは後宮ではなく王宮の一室でジャスティーンはエドワルドと共にいる。まではいい。ここは王宮でエドワルドはこの国の王だ。

 その王宮の一室にジャスティーンとエドワルドが同じ部屋の中にいる。

 ジャスティーンはソファーに腰かけていた。

 そう、ジャスティーンは高級なソファーに現在座っている。

 座っているのは確かで、ジャスティーンが高級なソファーに腰かけているのはいいとして、問題はこの国の王であるエドワルドだ。どういうわけかジャスティーンの膝の上に彼の頭部があるのだ。

 そう、現在ジャスティーンはエドワルドに膝枕たるものを無理やり付き合わされていた。いやもう強制的といってもいいだろう。

 何も答えないジャスティーンではあったが、寵姫のイザベラが殺させかけたのに、エドワルドは怒り狂うわけでもなく淡々としていて、というより機嫌がいい(?)エドワルドを見てジャスティーンは違和感を覚えた。


 そして、何でこんなことに...と、頭を抱えるジャスティーン。



 それもこれも茶会の時に床に落ちた小瓶を拾ったせいだ...と、八つ当たりするしか今の自分を保てないジャスティーンでもあった。


 茶会の席で王の寵姫であるイザベラが苦しみだし茶会の会場がパニックに陥り、イザベラは女官長と共に医師と女性騎士たちの手によって別室へ運ばれた。

 始めジャスティーンは誰が苦しんでいるのかわからなかった。しかし皆がイザベラの名を口にしていたので、そこイザベラに何かあったのだと知り、それ以外の側室たちは自分たちも口にした飲み物類に何か混ざっていたのではないかと騒いでいて、それを部屋に戻ってきた女官長や女性騎士たちが騒ぎを収めようとしていた時、隣にいた側室に問いかけられ床に落ちている小瓶を拾ったのが運の尽きだったのかもしれない。

 それを見ていた他の側室達が騒ぎ出し、不在の王の代わりに宰相であるライモンが現場に駆け付けるまで騒ぎが収まることはことは無かった。

 ジャスティーンも不用意に小瓶を拾ってしまった手前何も言いえずに、ライモンが来るまで黙って他の側室たちや侍女たちを観察した。

 ライモンが現場に到着した時、すでに一部の側室たちの証言で犯人扱いされそうだったところを、ライモンが側室たちに「小瓶を拾っただけで犯人にはできない」と説明し、ジャスティーンは参考人として後宮の自室以外の部屋に移動することになった。

 まあ...すでに隔離されているような生活を送ってきたので、それを受け入れライモンに拾った小瓶を渡しその小瓶の中身を確認するため小瓶は医師へと渡った。

 女性騎士に連れられた部屋で待機していると、女官長と宰相が訪ねてきて事情聴取が始まり、質問されたことを正直に話し、それを聞いた女官長がジャスティーンは犯人ではないと庇いだてた。

 実際ライモンもジャスティーンが犯人ではないと確信している。

 しかし他の側室達との兼ね合いもあるので、それらの対応として捜査が進展するまで身柄をライモンが預かることになった。

 それからすぐにジャスティーンは王宮へと移動して、暇つぶしにとライモンが図書館から何冊か本を借りてきてくれた。

 それに感謝をして本に集中しようとしたのだけど、イザベラの容体が気になりパラパラと本を捲っていると廊下が騒がしくなった。

 何事かと本を閉じソファーから立ち上がると勢いよく扉が開いた。


「ジャスティーン、無事か!?」

「へ、陛下!?」


 エドワルドは部屋に入るなりジャスティーンを力強く抱きしめ、ジャスティーンは驚きのあまり体が硬直し、何がどうなってこうなった?という風にジャスティーンは混乱した。


「陛下、ジャスティーン様はご無事でございます。大変だったのはイザベラ様ですよ?」


 エドワルドと一緒に入室してきたのは宰相のライモンで部屋の扉を閉め、ジャスティーンを力いっぱい抱きしめるエドワルドを見て苦笑した。


「ああ、そうであったな。イザベラの容体は?イザベラ以外の側室で毒を盛られた者はいなかったのか?」

「イザベラ様のご容体は皆に伏せてありますが、お元気にしれおられます。ティーカップを口に近づけた時、以前飲まれた時の匂いと違うと気づき、何か化合物のようなものが混ぜられているような、そんな独特の臭いが微かにしたそうです。イザベラ様は少量口に含み、予想が的中し苦しむふりをして口に含んだものを全て吐き出しすぐさま別室へ行き口腔内を洗浄いたしましたので命に別状はありません。幼少時より陛下と同様毒に耐性をつけておられるので、医師には数日間安静にするようといわれたそうです。他の側室様に異変は今のところございません」


 ライモンの報告をエドワルドと一緒に聞いているジャスティーンは、聞いてはいけない言葉が含まれていて絶句していた。

 イザベラとエドワルドが毒に対する耐性を一緒につけていたってどういうこと!?

 2人が昔からの知り合いという情報など知らなかった。

 いや、側室の誰も知らない情報だろう...勘弁してよ!!とエドワルドに抱きしめられながらジャスティーンは天井を見上げた。


「茶に含まれていた成分はわかったのか?」

「詳しい分析は現在調査中ですが、医師の見立てですと毒の一種で間違いないとのことでした」

「そうか...俺の次はイザベラとは...分かりやすくてお粗末な奴だな」

「ええ、陛下を襲った件はただ単に脅しの可能性が大きいとみています。しかし今回のイザベラ様の件で犯人像が少しは形になってきましたね」

「ふっ、それでも主犯格にたどり着くまではまだ候補が多い。今回狙われたのがイザベラでよかった。ジャスティーンなら即刻死亡していたに違いない」


 エドワルドはジャスティーンの頬を撫でながら言い、その行動にジャスティーンは何も言えない。

 てか、エドワルドと会わない間に彼の行動がおかしい気がしてならないジャスティーンは慌てて抗議をした。


「あ、あの!陛下、離してください!!」

「嫌だ。ライモン毒の入手経路と、後宮内にどの様な手段で運び込まれたのかを徹底的に調べろ」

「御意」


 2人の会話が終わりジャスティーンに何の説明もなくライモンは部屋を出ていき、エドワルドはジャスティーンのおでこに自分のおでこをコツンと当てた。

 その行動に、今いったいどういう状況!?と焦るジャスティーン。


「毒の小瓶を拾ったと聞いたが、小瓶を触った手はちゃんと洗ったのか?」

「はい、宰相様と女官長に言われて入念に洗いました」


 くっついたおでこを離したエドワルドがジャスティーンをみつめた。


「そうか...ジャスティーンでなくて本当によかった」


 エドワルドが安堵したのがジャスティーンにもわかる。

 しかしジャスティーンの心の中は、どうして私は陛下に抱きしめられているの?と疑問が頭の中をぐるぐると回っていた。


「それにしても久しいなジャスティーン」

「え?ええ...見ない間に陛下は、また疲れが溜まっているご様子ですね」

「そうなんだ。またマッサージ頼めるか?」

「それは構いませんが...しかしその前に今後の私はどのような扱いになるのですか?」

「そうだな重要参考人として捜査が進展するまでこの部屋で過ごしてもらう。俺が直々に尋問する」

「へ?陛下直々ですか!?」

「なんだ不満か?」

「もちろんです。別の方にしてください」


 きっぱり断られたエドワルドは地味にショックを受けていた。

 久しぶりに会えて嬉しいのは自分だけなのか...とジャスティーンの細い首筋に自身の顔を埋め彼女の匂いを堪能し、エドワルドはジャスティーンを開放した。

 どうして自分がこんな行動しているのか、わからないなんて言わない。

 視察先で側室が毒を盛られたと報告を受け急いで戻ってきたエドワルド。

 その時エドワルドは側室と聞いて最初に頭を過ったのはジャスティーンだった。まあ毒を盛られたのはイザベラだったのだが、毒の免疫をつけていた人物だったので大事に至っていないため結果オーライと、そんなことを考えながらエドワルドがマントをソファーの上に脱ぎ捨て、それをジャスティーンがたたんでソファーの端へ置いた。


「陛下、紅茶でもいかがですか?」

「いただこう。急いできたから喉がカラカラだ」


 エドワルドの話を聞いたジャスティーンは紅茶を淹れ始めた。エドワルドとライモンが来る少し前にお湯を貰い、そのお湯はまだ温かいままだったのでジャスティーンはそれを使い茶葉入れたディポットへとお湯を注ぎ、時間を見てからティーカップへと淹れたての紅茶を注いだ。

 紅茶を淹れている仕草をエドワルドはただ黙ってみていた。そしてジャスティーンは思い出したかのようにエドワルドに質問した。


「ところで愛しのイザベラ様のお見舞いに行かなくてよろしいのですか?」

「愛しい...お前、何か勘違いしていないか!?」

「いえ、勘違いしておりません。私のところよりイザベラ様のお部屋へ行かれたほうがよろしいかと存じます」

「アイツは後で大丈夫だ」

「...そうでございますか」


 腑に落ちないという表情のジャスティーンはお盆に紅茶とミルクに砂糖をのせテーブルへ置いていく仕草は美しく、それを見たエドワルドはジャスティーンを見直した。が、お茶を淹れ終えたジャスティーンはエドワルドが座るソファーの正面に座った。


「..............................。」

「..............................。」


 ジャスティーンの行動に部屋は沈黙が流れた。

 沈黙が流れる中ジャスティーンはエドワルドの様子を窺う。

 それはジャスティーンが見張られていた件をエドワルドがどこまで知っているのかが、かわからない為どう切り出してよいものかという意味で様子を窺っていた。

 そもそもエドワルドがあの暗号に気付いているのかどうかもわからない。さてどう切り出したらいいものかとジャスティーンは自分が淹れたお茶を口にした。というか、沈黙が痛くて気を紛らせたともいう。エドワルドの方もジャスティーンの淹れたお茶を一口飲んでからソーサーにティーカップを戻しいきなりソファーから立ち上がった。


「ジャスティーン、ソファーの端へ移動してくれ」

「はい?...えっと...わかりました」


 何で?という疑問符が付いた状態のジャスティーンはエドワルドの指示通りソファーの端へ移動しエドワルドがソファーに寝転がりジャスティーンの膝にエドワルドは頭部をのせた。また同じ格好か!と、ジャスティーンは心の中で悪態をつきつつ状況が飲み込めずしばしフリーズしていた。

 そんなことも知らないエドワルドはジャスティーンの太ももの感触を楽しむように頭を左右に動かした。


「....................陛下?」

「ジャスティーンの太ももは気持ちがいいし、高さも丁度よくて眠れそうだ」

「いやいやいや、寝ないでください!!」

「では、尋問でも始めるか?」


 エドワルドが意地悪そうな笑いを浮かべ冒頭と同じ質問に戻る。


「どうなのだ、ジャスティーン?」

「................どうなのだと聞かれても私は何もしておりません」

「そう冷たくするな。久しぶりに会えたのだ。ゆっくり話そうではないか?」

「ゆっくりって、陛下は忙しいのでは?」

「まあそれなりに忙しいが...ジャスティーン、こんなことに巻き込んで悪かったな」


 先ほどまで意地悪な表情をしていたエドワルドはどこにもおらず、真剣な眼差しのエドワルドと目があったジャスティーンは息をのんだ。

 先ほどまでは誰もいない今のうちにエドワルドをソファーから落としてやろうかと、企んでいたが彼の真剣な眼差しにどう対応していいかわからなくなった。そんなジャスティーンをよそにノックと共に乱暴に扉が開く音と共に2人の男性が部屋へ入ってきた。


「入るぞ~」

「入室許可をする前に部屋に入るとは何事ですかジャイロ隊長!」

「ライモンそう細かいこと言うなよ~」

「細かくありません。礼儀としてどうなのかと言っているの........これは、これは、場所を移動されて...いえ、失礼しました。もしかして私たちはお邪魔でしたか陛下?」


 言い合いをしながら部屋へ入ってきたのは宰相のライモンと親衛隊長のジャイロだった。


「ああ邪魔だ。俺が今ジャスティーンと話している最中なんだ。もう少し時間を見てから来い」


「それは失礼しました」とライモンが笑いながら言うと隣にいるジャイロも面白い見世物を見ているような感じでにやにやしていた。


「エド、ジャスティーンに例の件について何も聞いてないだろうな?」

「師匠の忠告を守って、まだ何も聞いてません」


 その会話でジャスティーンはエドワルドがあの暗号のことに気づいてくれたのだと安堵した。と、同時にジャイロまで巻き込んでしまったのかといろんな意味で不安に思う気持ちもあった。

 なんせおじいさま曰く『女好きのただのトラブルメーカー』と言っていたのを思い出してしまったジャスティーンはこの先どうなることやらと最近の自分の不運を呪うしかなかった。


 



次回の投稿は未定ですができるだけ早めに更新したいと思っています。

感想等は完結後にまとめて返信...したいです。(予定は未定で...)

読んでいただきありがとうございました。

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