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Raw Boild Chicken

作者: 鷹見英怜
掲載日:2014/05/08

息抜きに落書きしたものです。100%よそ見しながら書いてます。ジャンルはハードボイルドのつもりです。あくまでも、”つもり”です。

俺の名は、東吾悟。新宿でハードボイルドな日々を送る男だ。今日も朝から駆け回っているぜ。


「ピンポーン、私、みそかす教育の、東吾と申します。お子様の成績増進に最適な教材の紹介に伺いました。」


「家は、学校いっている子供なんかいないわよ!」


ドアを開けてももらえなかった。会社から貰った情報が間違っているようだ。しかし、こんなことでくじけたりしないぜ。なんたって俺はハードボイルドだからな。


結局契約は1件も取れなかった俺は、夕方に会社に戻った。


「東吾君、君ね、今月もまだ1件も取れてないんだよ。契約取れるまで会社に戻らなくていいって言ったでしょ」


会社に戻った俺を待ち受けていたのは、ネチネチと小言を言い続ける課長と、今月も打り上げトップの東雲が繰り出す、俺へのいたわりの言葉だった。


「東吾さん、やめないでくださいね。あなたみたいな人がいるから私が輝けるんですからね」


なるほど、そうか。俺が契約を取れないのも、課長が小言を俺に言い続けるのも、東雲を輝かせるためだったか。そうか、人知れず活躍する俺にとっては、それは誇るべきことだな。言動で少しは落ち込むが、これもハードボイルドだからか。


「お先に失礼します」


と、タイムカードを押した俺に課長が声をかけてくる。


「定時に上がれるのは契約を取れてからにし・・・」


俺は、静かに会社を出た。ハードボイルドは時間に厳しいのだ。帰り際にすれ違った事務の女の子も、俺をいたわってそっと目をそらしてくれた。俺は危険な男だからな。妙に懐かれても困る。


俺は、いつものところで一杯やっていくことにした。これもいつもの事だ。やはり、俺にはカウンターでグラスを傾ける姿が一番似合っている。ウェイターが俺のオーダーを告げる。


「カウンター3番様!水割りと冷奴!」


鉢巻とハッピを着た粋なやつだ。元気もいい。


俺は2時間ほどかけて、グラスを空け、席を立ち上がった。


「お愛想お願いします」


「毎度あり!680円になります」


店を出た俺は、これからどうしようか思案したぜ。何しろ家に帰っても電気を止められているからな。寝るしか無い部屋に真っ直ぐ帰るのは野暮ってものだ。


「コンビニで立ち読みでもして行くかな」


コンビニへ向かう途中で、若者に寄付をねだられたぜ。あいにくと持ち合わせがなくて、また今度にして貰ったぜ。


「シケた奴だな、おい、これ見ろよ、財布の中20円しかないぞ。カードも何にもねーよ」


いきなり、グーパンチで挨拶して来た元気なやつだった。


「すいません、すいません、本当にもうそれしか無いんです」


「チッ」


俺は服についた汚れを払い落として、颯爽と歩き出した。


「あんた、金ねぇのか、仕事ねぇのかい、私等と似たような身なりして・・・」


俺には声をかけてくれたのは、道の片隅にいた少し妙な匂いを醸し出していた爺さんだった。この服はママが、アオキとかいう専門店で買ってくれた上下で6980円もする高級品だぞ!爺さん、あんあたにこの服はやれないなぁ、これしか持ってないからな。


「あんたも一杯やるか」


爺さんは、欠けた茶碗を俺には差し出した。人の温かさが身に沁みるぜ。俺は爺さんに身の上話をしてやったぜ。田舎からハードボイルドに憧れて、ハードボイルドの聖地たる新宿に来たこと。昼間の姿を作るのに、教材の訪問販売の会社にいること。会社は基本歩合制で、給料は安いこと。家賃をもう2ヶ月も払えていないこと。電気水道ガスが一昨日止まった事とか色々な。


「あんた、田舎に帰って地道に働いた方がいいよ」


もしかして、この爺さんは俺の師かもしれないな。俺の人生にアドバイス出来るなんてな!俺は爺さんにお礼を言って家路に着いたぜ。その途中に、ヤクザの事務所のあたりが喧騒に包まれていたぜ。警察はまだきていないようだったが。


最近、あまり食が進まないせいか、少しふらつき気味の俺は、人ごみに押されて、ついつい事務所の裏口のあたりを歩いていたぜ。急に裏口があいて、中から強面の兄さんが飛び出してきたぜ。


「て、てめぇ、凸凸組のもんか!」


「いえ、ち、ち、ちげ」(かんだ・・・)


「お、そうか、悪りいな、最近入ったやつだな。おし丁度いい、これ抱えて逃げてろ、絶手ェ捕まるんじゃねぇぞ」


紙袋を俺にくれた兄さんは、また扉の中へ入っていったぜ。


家に着いた俺を待っていたのは、入り口に捻じ込まれた家賃の督促状だったっぜ。


「もう、お金ないからなー、見つからない内に逃げ出した方がいいのかな」


さすが、新宿!ハードボイルドだぜ。


翌朝、俺は紙袋を見て見た。


「誓約書?証文?」


そこには俺がよく行くエリアの住所が書いてあったぜ。今日は、このエリアで仕事することに決めたぜ。


「ピンポーン、私、みそかす教育の東吾と申します」


「あんた、また来たの!家には子供はいないって言ったでしょ!」


「あ、いえ、何か誓約書とかいうものを持って来たのですけど」


インターホンの向こう側が騒がしくなって、玄関を開けてもらえたぜ。重役みたいなおじさんが出てきたぜ。


「あ、あんた、凹凹組の人か!」


「いえ、、違います。みそかす教育の東吾です」


「で、その誓約書、いくらで引き取って欲しいんだ」


「あ、いえ、お渡ししに来ただけなので」


その叔父さんは、俺を見て目をひんむいてたぜ。


「それだけでいいのか?そうか、わかった、教材だな、一式いくらだ。25万?わかった。10セット契約しよう。それでいいな?」


誓約書渡したら、契約が取れたぜ。さすが、俺!


「あ、ありがとうございます。では、早速・・・」


「あー、いい、キャッシュで払う」


250万と契約書にサインを貰った俺は、次の家に向かったぜ。後ろの方ででかい声がしてたぜ。


「いつまでだんまり決め込んでいるんだ!こっちには誓約書があるんだ!明日までが期限だからな。2億円、きっちり準備しろよ!」


「誓約書?それならさっき受け取った。もうあんたらに金を払う義務はない!」


なんだろう?そういえば、都会はお金のトラブルが多いと聞く。金の無い俺には縁の無いトラブルだな。その日から紙袋の中身を空にするまで一週間かかったぜ。


給料日なので、会社へいくと、課長が俺にお茶を入れてくれたり、方を揉んでくれたりしたぜ。


「いやぁ、東吾君、よくやったねぇ。どうやったの?我が社の売り上げ新記録だよ!今月だけで昨年の売り上げの倍も売り上げるなんて!社長が直々に表彰してくれるそうだ」


東雲が、俺の方を羨望の眼差しで見てるぜ。まいったな、俺がハードボイルドだってことがばれちゃったのか。あんなに下唇を噛みしめるぐらい憧れなくてもいいのにな。

そんなことを考えていたら社長がきていないようだった、表彰状を貰ったぜ。今月のトップ褒賞だとかで10万円も貰ったぜ。これでやっと家賃と光熱費が払えるぜ。


俺は、今晩もいつものところでグラスを傾けたぜ。うまくいったからって調子に乗るのはハードボイルドの矜恃に反するからな。


「カウンター、2番様、水割りと冷奴と焼き鳥2本!」


でも少しは、いつもと違ってみるぜ。今日は1時間ほどで店を後にして、俺の師をさがしてみたぜ。そしたら、またこの間の若者にあったぜ。


「あ、あの、この間はすいません、今日は財布の中身ありますので」


「なにこいつ、なんで財布だしてんの、馬鹿じゃね」


お礼を言われて財布のを受け取って貰ったぜ。


「おい、小僧ども、なにしてんだ」


後ろから声がして、若者たちは、おれの財布を遠慮がちに返してきたぜ。


「あんた、なにしてんだ?この辺りは物騒だ。普通の人が来るとこじゃないからな」


その男は、無精髭を生やしてダークなスーツを着こなしながら俺に話しかけてきたぜ。見るからにハードボイルドだ。さすが新宿だぜ。


「あんた、まだいたのか」


師の声がしたので、俺は会社で褒賞されたことを話したぜ。


「あんた、50億円相当の書類持ちながら、10万円と引き換えたのか?」


「あんた、田舎に帰って地道に働いた方がいいよ」


俺は、東吾悟。ハードボイルドな生き様を求めて、新宿に住むものだ。10万円は家賃1ヶ月分でしかなかったので、今日から帰る家もなくなったぜ。さすがハードボイルドな街だぜ!


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