六回目
「術の資質は五百に一人の割合くらいでしょうか。大半の者は資質の無しと思っていただいて問題ございません」
「ただ、昔は千に一人と言われていた時代もございますので、大分変りました」
家老風の男が質問に対して答える。
「増えたの?」
スズキが何かを口に入れたまま問う。
「そうです。多くの場合、資質は子に、孫に伝わります。血筋ですな」
家老風の男はスズキの不躾な態度を気にした素振りも見せず答えた。
「へぇ。0.2%でヒーローか。でもやっぱり、生まれた家が重要ってのはどこも変わらないのね」
「だな」
スズキとタカハシがシシシと笑う。
「それらの、資質を持った者の多くを魔導士と呼んでおります」
家老風の男が二人の話しが終わったのを確認してからまた話しだした。
「魔導士の力の強さは持って生まれたモノが一、二割。残りが血筋などと言われます」
「連綿と続く魔導士の血筋こそが大きな力に繋がる最も大きな要素なのです」
「そして魔導士の力は国の力に直結します。魔導士の力は戦を大きく左右し、これまで幾度となく勝ちを負けをひっくり返しています」
「これは、俺らのとこより一般人には生き辛いかもわからんね」
「だな」
スズキとタカハシが大きくため息をつく。
「はい」
サトウが授業中の質問の様に、手を挙げた。
「魔導士がすごいのは、なんとなくわかりました。ただ、俺達……。僕達が『大』魔導士と呼ばれるのはどうしてでしょう。少なくとも僕らは普通の家の子供、まぁ年齢的には大人ですけど……一般家庭で生まれた一般人ですよ」
サトウの言葉に、家老風の男はうんうんと頷きながらそれを受ける。
「術や資質に関しては恥ずかしながら分からぬ事だらけです。明確なお答えを差し上げられない事も多いでしょう。ただ、理由は知りません、到底わかりませぬが結果だけは過去の歴史を振り返り我々は知っております。それはもう、五つに満たない子供ですらも。異界より来られた方々は、圧倒的な資質を持っておられる。それは一人で国を左右するほど、魔導士すらも恐れる程の強大な力を」
そう家老風の男が言った直後、殿が茶碗を叩きつける様に置いて立ち上がった。
「この国は巨大すぎる。もう数千年も四つの国と接し、関係も良好でない。小競り合いもしょっちゅうだ。何よりも問題なのは、口惜しいがその四つの国には大魔導士が居る。まだ理解できないかもしれないが、この差は歴然だ。それだけで戦いにならないといっても過言ではない。いざ戦いが始まり大魔導士が相手方に居て、こちらに居ない。そうなれば専業でない兵の多くは武器すら握れないやもしれん」
今度はドカッと殿が腰を下ろす。
「だが、我が国、我が国民は戦えるんだ。金や資源や人をバラまき、なんとか戦いにならぬよう立ちまわり続ける歴史も変わろう! ついに、大魔導士が来たのだ。それも四人!」
殿が笑顔で両手を挙げる。