五回目
「殿、皆様お揃いです」
部屋の中心に座る男が頭を下げる。受ける印象は時代劇に出てくる家老だろうか。
それなりに派手な着物に、真っ白い髪と髭。それでいて規律に厳格そうな雰囲気。
ここには自分たち四人と、それぞれを案内してきた女が四人。
それ以外には殿と呼ばれた男と家老風の男だけだ。
「うむ。それでは飯にしよう」
殿(昨日の殿様風の男)が言った。
ていうか、やっぱり殿だったんだな。
白髭の男が一度立ち上がり、こちらに向きなおすと頭を下げた。
「まだ分からぬ事だらけでしょう。色々説明をしますが、遠慮せず食べながら聞いて下さい」
その言動から察するに、自分達は彼よりも上に位置しているか、客の様な立場だろうか。やけに気を使われている。
正直なところ、二十歳そこそこの自分達がどう考えても見ても五、六十代の男よりも上とは考えづらいが……。
「と、言ったものの、どこから話したら良いものでしょう」
唸りながら、一番基本的な事を確認してみる。そんな様子で切り出した。
「皆さんは、術。……あ、いや精霊についてはご存知ですか」
当然、首を横に振る。
中年も過ぎているだろう男に似つかわしくないファンタジーな事を言ったが、それに関しては皆黙っている。
「分かりました。では最初から、ですな」
家老風の男は深く頷いた。手間を掛けさせるようだが、小さな子供に向ける様な笑顔に救われた気分になる。
「この世は四つの属性の精霊たちによってつくられております。火、水、天、地の四つ。まぁ、天は風だったり空気、地は土なんかと表す事もございますが」
「とにかく万物、全て、森羅万象においてこの四つの属性でなりたっております」
始まったばかりの説明は、いきなりわけのわからない事だらけだった。驚いて横を見ると他の三人も同じ様子で、左右に首を向ければ全員と目が合った。
それから再び前を見ると、スラスラと説明を続ける後ろで、王が飯をかきこむジェスチャーしている。
『気にせず食べろ』という事だろう。
置いたままだった箸と茶碗と手に取る。
今まで見たのと変わらない米やみそ汁。何を使ったのか分からない漬物と、ポテトサラダの様だが真っ赤なモノ。頭が四角くて触覚の生えている焼き魚。
初めこそ、慎重に少しずつ摘んでいたが、馴れてきた味とほとんど変わらないと分かると家での食事と変わらぬ様に箸が進む。
「その属性の中で頂点におりますのが精霊。精霊は人間にはとても起こせぬ不思議な事を起こす事ができます」
「そして、それらの事象を人間が精霊の力を借りて起こす事もでき、我々はそれを術と呼んでおります」
「これは誰でもできるというものではございませぬ。生まれながら資質のある者。さらにそこから、厳しい修練を積んだ者がようやく辿り着ける技」
「つまり、資質無きものはどんなに修練を積んでもできません。資質あるものでもすぐに術を使えるものもおりません」
「そしてその資質を強く。この世で最も強くといっても過言でない程、有しているのが」
「君らなんだよね!」
横から入ってきた王の口からは米が飛び散る。