四回目
「和風な建物ですね」
「はぁ、『ワフウ』……ですか?」
やっぱり、通じていないな。
さっきから。「ドアじゃなくて引き戸なんですね」や「トイレはどこですか」と質問してもこの調子だ。
『タンス』や『履き物』『着物』は通じた。『靴』や『洋服』は通じるだろうか。
「タカハシ様は不思議な言葉をたくさんご存じなのですね」
「あぁ、いや。そんな」
やだこの子、可愛い。
あてがわれた部屋に朝食の準備が出来たと呼びに来た女性がニッコリと笑うと、つられて口角が上がっていた。
免疫が無さ過ぎるのか。いや、誰だってこの状況なら同じだろう。無口キャラでも絶対負ける。
「あのぉ、食堂はまだ遠いんですか」
「……食堂。あぁ、えぇ。もう少しです」
『食堂』が通じていないようだったが、察してくれた様だ。
「申し訳ございません。歴史と国土だけはあるので城が不必要なくらいに大きくなってしまって」
「いえ。ちなみに歴史はどれくらいあるんですか?」
我ながらよい質問だ。タイムスリップ説も捨てきれないからな。
戦国時代なんかだったら、ちょうど良さそうな気がする。
あれ、戦国時代って何年前だ。
鳴くよウグイス平安京の後か? 後だよな、たしか。
じゃあ100年たして1000年位にしておくか。あぁ、日本史ちゃんと聞いておくんだったな。
「8000年です」
「ブッ」
え、なにそれ。西暦とかそういうレベルじゃないの。
紀元前? 紀元前6000年?
もしかしてそれ、まだ我々ウホウホしてた時代じゃないの。
「はい、着きました」
「ウホ」
「え?」
「あ、なんでもないです。ありがとう」
戸を引いて中を見ると他の三人がもう座っている。
「……目に優しくない」
RGBのそれぞれの頂点にいるかの様な赤、青、緑の髪の毛が並ぶ姿はすごく気になるし、鬱陶しかった。