一回目
「サトウイチロウ」
「スズキジロウ」
「タカハシサブロウ」
「タナカシロウ」
中央の男が言う。
男はいかにも殿様といった服装と、それに不似合いな程鍛えられた体。
肩より下まで伸びた白髪を首の後ろで結っている。
そのヘアゴム(の様なもの)にも金の装飾がされその男が高貴な身分、少なくとも金持ちである事がうかがえる。
部屋の中には五人。男の他には青年が四人。
一列に並ぶ青年達はピシリと背筋を伸ばし、拳を強く握りしめ、口は真一文字。
部屋は暑くも無ければ寒くも無いが、額にはうっすらと汗が浮かぶ。
ホコリ一つみつからない綺麗な木の床の上に、寝具と部屋の大きさの割に少ない調度品のみ。
それ以外には何も無い部屋は実に質素なものだった。
「間違ってないよね? これ」
男の口角はやや上がり、深く刻まれた目尻のシワが浮かぶ。
無駄のないこの部屋では声が良く響く。
青年達がただ、頷いて答えると男は頷いて返した。
「……ようこそオウコクへ」
男が仰々しく片膝をつき祈るような仕草を見せて目をつむる。
「あぁ、今のは秘密ね。『王が頭を下げるなんてとんでもない』ってうるさいのが大勢いるんだ」
男は歯を見せて笑う。
「大魔導士が四人も我が国へ。これは版図が動くぞ。これまでにない位大きくね」
立ち上がった男が両手を大きく広げて笑う。
状況が飲み込めない様子の青年達は、ただそれを見ながら無言で立ち尽くしていた。