下校―昼
三題噺もどき―きゅうひゃくにじゅうさん。
頭上には青空が広がっている。
所々大きな雲の塊が見えるが、雨の降る気配は感じられない。
風に乗って流れる白い雲が、時折影を作っていく。
「……」
風が少々強いせいか、スカートがいつも以上に暴れる。
ただでさえ鬱陶しいのに、こんなにバタバタとされてはどうしようもない。
ホントに、制服を考えた人はなぜこれを良しとしたのだろうか。
「……」
暑くとも中に何かを履いていなければ、こんな暴れるスカートなんて履いてられない。
スパッツなんて私は履かないので、学校指定のジャージの短パンである。
これがもう暑いのなんの……風があるからまだましだが、信号なんかで止まったときに一気に暑くなる。
「……」
だから極力道の先の信号に引っかからない用にスピードを調整して走っている。
もう3年も通っている通学路だ。大体の信号のタイミングは分かるし、その辺の調整は脊髄反射で行っているので、いつどのタイミングというのは言いづらい。
早すぎると家族に言われたことがあるが、私より早いスピードで走ってる奴なんてそれなりに居る。
「……」
一応、自転車を乗る際のルールというのも色々変わっているが、田舎だからなのかそこまで厳しくされた記憶はない。警察もたまにいるけど……まぁ、この辺りの道路は別に整備もされていないし、むしろ道路を走る方が車も自転車も危ないからな。
「……、」
帰路を急いでいると、どこかから子供の声が聞こえた。
こんな昼間に……と、そちらを見ると、公園で遊んでいる子達がいたようだ。
こちらの公園はただの原っぱで遊具なんてものはない。
「……」
春になれば桜が咲き、秋になれば銀杏が黄色く染まる。
蜂が飛んでいたり、蝶々がひらひらと舞っていたり、バッタが跳ねていることもある。
自然豊か……とまではいかないかもしれないが、遊具のいらない遊びならここで十分楽しめる。
「……」
ただまぁ、なんというか……私の認識が正しいかどうかは分からないが……すぐそばの川が増水した際に沈む前提の公園という感じもあるので。だから遊具なんてものは置けないんだろう。
いつかあった大雨の時もこの公園は完全に水で埋められていた。川を挟んだ反対側にも同じような公園があるのだけど、そこに停まっていたのであろう車は水没したらしい。
「……」
そんなことがこの公園であったとは知らないであろう、幼い子供たちが遊んでいる。
しゃぼん玉を飛ばしているようだが、風が強いせいですぐに流れて消えている。
アレはそのうち飽きるんじゃないだろうか……。
「……」
しかしその結果も見ることなく、公園は通り過ぎる。
こちらは自転車に乗っていて、帰路を急いでいるのだ。
それに、わざわざ止まって見るなんて不審者めいたことはしない。
「……」
何よりも、この暑い日差しの中で立ち止まるなんてことはしたくない。
もう既に信号のある道路はすべて通り過ぎている。
後は田舎道の狭い道路を車に気を付けながら進んでいくだけだ。
「……」
この辺は狭い通路がそこかしこにあるので、そこからいきなり車が出てくることも少なくない。
住んでいる人ならどこに気を付けるべきかなんてわかっているだろうけど。……住んでても時間が違えば自転車や人通りは少ないから勢いよく来る人も居る。
たまに何も知らない人が、マップの指示に従って近道をしようと通ることがある。
そういう時ほど慎重に進むもんではないのかと思うのだが。
「……」
何度か命の危険を感じたこともなくはない。
反射的にブレーキをつかんでも、ギリギリだったことなんて数えられないほどある。
止まらない方がいいのだろうけど、身体は驚くと固まるのだなと痛感する。
「……」
昼間のこの時間は比較的車も少ないが。
気を付けるに越したことはない。
なんでも「かもしれない」と思って動くことは大切だろう。
「……」
最後の角を曲がり、家が見えてくる。
さっさと帰って何か飲み物でも飲もう。
お腹もすいたし、今日はもう課題はしなくていいか。
お題:蝶々・脊髄・しゃぼん玉




