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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第1章 はじまり
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第7話 再会

 馬車を乗り継ぎ、宿を取る。


 朝にまた出発して馬車で移動。



 それを繰り返すこと1週間。ようやく到着だ。



 ここはエルミリア王国の首都ヴァレンティア。


 俺が住んでた地方より遥かに発展しており、人も沢山いる。


 建物も密集しており高層化している。


 道はブリックタイルと呼ばれるレンガを敷き詰めたような道だ。



 ちなみに、エルミリア王国は法暦1,105年に建国。現在は法暦1304年なので、来年で建国200年となる。


 街中は俺がいたシルバーレイクって街よりも人も建物も多く、その街の中でも中心地にそびえ立つエルミリア城は一際大きく、荘厳であった。


 ま、俺には縁もゆかりも無いんだろうけど。



 ちなみに、法暦というのは、この世界で初めて世界基準となる法律が制定されたのを記念して定められたらしい。


 その際に、貨幣はすべて白金貨・大金貨・金貨・銀貨・銅貨・鉄貨・銭貨と統一された。


 銭貨は日本円で1円。

 鉄貨は10円。

 銅貨は100円。

 銀貨は1,000円。

 金貨は10,000円。

 大金貨は100,000円。

 白金貨は1,000,000円(100万円)だと。



 話を戻すが、エルミリア王国は現在ウィリアムって人が国王で、確か8世だったはずだ。


 子供もおり、2男3女だったかな。




「皆様、到着いたしました。ヴァレンティア中央停留所でございます。」



 ……ふぃ〜〜〜……!!


 ……長かった……



 運転手に金貨1枚を手渡し、荷台から下りて伸びをした。


 馬車運転手のジョブのお陰か、そこまで舗装されてない道路でもガタガタ揺られることは無かったものの、それでも長時間の移動は疲れるね。



 親からは移動費用として金貨5枚と、それとは別に生活費として毎月金貨3枚を送ってくれる。


 あんまり脛を齧りたくないが、今は貰えるものは貰っておこう。



 学費に関しては推薦を受けた生徒は全額免除らしい。


 本来なら毎年白金貨10枚はいるくらい高額なんだと。学費が年間で1000万円とかエグいよな。


 ホント、学費が免除されてて良かったよ。


 ってか、転生者全員を免除にしてるのならめちゃくちゃ太っ腹な訳だが、もしかすると転生者は本来、この世界でもかなり有能なジョブを授かりやすいのかもな。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後、俺は軽く道に迷いながらも、セント・クラーク王立高等学校に辿り着いた。



 ……ふむふむ………



 ……いやぁ……想像してたけどかなりご立派な学校だなあ……


 シルバーレイクで通ってた学校とは雲泥の差だな。



 校門前には親と同伴して数多くの新入生と思しき人影がチラホラ見える。


 対して俺は1人。


 いや、母も来ようとはしてくれたけど、何せ片道1週間もかかる道のりだ。


 その間家を放ったらかしにも出来るわけもないし、増してや父は畑仕事がある。


 そんな訳で、俺は1人で入学手続きを行いに来た、という訳だ。



 やはりというか、さすがはエリート校。


 誰も彼も身なりが貴族のそれっぽい。



 入学手続きのために列に並んだが、カジュアルな服で1人で来ているからか、周囲の視線が痛い。


 そんな視線に耐えつつ、前の人が受付し始める。


 そして、カバンから白金貨を取り出すのを見て、少しばかり不安を感じた。




「ご入学おめでとうございます。では、こちらにお名前とご住所をご記入くださいませ。」



 受付の女性は若く、それでいて姿勢もピンとしている。


 さすがは超名門校。



 俺は指示通りに住所と名前を記入する。



「ハル・アルフィード様ですね。確認致しますので少々お待ちください。」



 受付の女性は紙に書かれた表から俺の名前を探し出す。



「確認致しました。特待生の方ですね。入学金につきましては全額免除となります。」


「…ありがとうございます。」


「では、こちらが本校の案内冊子となります。本日13時より学校案内がありますので、本館2階にございます『講堂室A』にお越しください。」


「分かりました。」



 良かった。


 手違いで入学金を払えって言われずで。


 ただ、俺が特待生だということで、周囲の目が刺々しい視線から好奇の目に変わった気がする。



「……ふぅ………やっぱ地元と違ってここは人が多いな……」



 日本で人の多さに慣れてはいたものの、シルバーレイクでの生活が長かったため、俺は疲れてベンチへと腰掛けてた。



「……はる…と………?……はは、春人か……!?」



 懐かしい声に俺はハッとし、立ち上がって声の主を見た。


 そこには懐かしい顔がそこにあった。


 ただ、子供に似つかわしくない派手な刺繍の入った服を身にまとって。



「……冬馬!!冬馬じゃないか!!」


「やや、やっぱり春人だ!!春人もこっちに来てたんだなぁ!!」



 旧友との再会に思わず目頭が熱くなる。



「……俺“も”ってことは他にもやっぱり……?」


「うん!秋彦もこっちにいるよ!そ、そそ、それにあの時同窓会にいたみんなも!」



 やっぱりか。


 そりゃあ俺だけがこの世界に来れた訳じゃ無かったんだ!



「……そっか………そうだったんだな………!」


「あ、ああ秋彦もきっと驚くぞ!て、てててっきり俺は春人はあの火事で生き残ったんじゃないかって……」


「……はは……残念ながら、俺も死んじまったよ……」


「……ゴホンッ……()()()、その子は?」



 咳払いでようやく存在に気付いたが、冬馬は両親と来ていたらしい。


 ただ、冬馬の両親も高級そうなスーツを身にまとっており、とても気品が高そうだ。



「……あぁ、ごめん父さん。この子は俺の友達で……えっと……名前は……」


「は、初めまして。ハル・アルフィードです。」


「アルフィード君か。キミもセント・クラークの特待生かね?」


「はい。」


「……ふむ……私はトーヤの父親のブランドン・フォーゼン男爵だ。こちらは妻のグレイスだ。」


「初めまして、アルフィード君。宜しくね。」


「こ、こちらこそです。」



 冬馬の両親は厳格そうで気品さを放っており、つい気圧されてしまった。



「ハッハッ。そこまで畏まる必要は無いよ。」


「…は、はぁ……」


「ところで、アルフィード君のご両親は?」


「…あっと……ぼ、僕は1人でして……実家は田舎でここまで来るのに1週間もかかる距離ですから…その間父も母も家を空けることができなくて、ですね…」


「……なるほど……さぞ心細い思いをしただろうな……」


「いやぁ……ははは……まあ、慣れてます。」


「………ふむ…………」


「それなら、今度ウチにいらっしゃいな。トーヤのお友達なら大歓迎よ。」


「…え……と………良いんですか……?」


「勿論よ。」



 夫人はニッコリと微笑み、ブランドン氏も頷いていた。



「ありがとうございます!」


「さて、トーヤ。そろそろ行くぞ。迎えを待たせてある。」


「…あ……そ、そっか……じゃあはるt…じゃなくてハル、また学校で!」


「あぁ!またな!」



 ブランドン氏の言った通り、道路には豪華な馬車が停車し、運転士が頭を下げて冬馬たちを出迎えていた。


 馬車に乗り込む前に冬馬が手を振り、夫人が俺に会釈をし、俺もそれに返す。



 …………………




 マジかよ!!


 なんだよ冬馬のやつ!!


 これが所謂『親ガチャ成功』ってやつかよ!!


 ってか『男爵』ってなに!!じゃがいもか!?




 ………ふぅ………




 俺としたことが、つい取り乱してしまった。


 とにかく、冬馬はとても金持ちの貴族の家に生まれたようだな。


 そういや夫人が今度家に遊びにおいでって言ってたけど、今度マジで行ってみよう。


 それと、秋彦もこっちの世界に来てるって言ってたな。


 ってことは、やっぱりあの火事で死んだ人たちがこの世界へ転生できたっぽいな。



 あの場にいたのは確か……


 俺、秋彦、冬馬に桜庭さん。京極。東條さんと他2人。松田先生。

 そういや生徒会長の神宮寺とその補佐の四ノ宮さんもいたよな。

 あ、そういや皇ってやつも。


 あと他は……悪いけど名前が出てこないな。


 そういや居酒屋の店員も転生してるんだよな。



 多分20人くらいか?



 ただ、この世界は日本ほど平和な世界じゃない。


 魔物に襲われて運悪く死んだ奴も、もしかしたらいるかもな。



 ともかく、俺もどこかで昼飯でも食べるとしますか。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 昼食を終え、再度セント・クラーク王立高等学校へと足を運び、入学説明会を受けた。



 本校は全寮制であり、男女別棟となっている。


 ありがたいことに、小さいながらも個室を与えてくれるらしい。


 寮での門限は20時となっており、超過したものは罰則が与えられる。


 その他色々と注意事項があったが、要約すると『セント・クラーク生として相応しい学生生活を送ること』だ。


 その後は各自制服合わせを行う。


 制服合わせだなんて一体どれほど時間が掛かるのかと心配したが、さすがはジョブ世界。

 採寸もせずに置いてある布をあっという間に裁断して縫い合わせ、1分も掛からずに制服を仕立てあげた。


 その腕の良さ、正確さに思わず見とれたよ。



「春人氏〜!!会いたかったですぞ〜〜!!!!」



 入学説明会の後、秋彦とも再会できた。


 秋彦はやや上流階級の生まれとなり、今では『ヒューゴ・アキ・テイラー』という名前だと。



 その後少しばかり時間があったもんで、3人で色んな話をした。


 と言っても、俺が知らないことだらけで俺は聞く一方だったけど。




 まず見た目。


 これは、ほぼ予想通りだった。


 転生する魂の記憶から、遺伝情報が近しい者の元へと転生する仕組みらしい。


 なので、俺や冬馬・秋彦の見た目は日本での学生時代とほとんど変わらなかった。



 次に、転生者がなぜ分かったのか。


 これは、この世界にいる【観測士(オブザーバー)】というジョブのおかげらしい。


 このジョブにより、異世界から転生された魂がどこに生まれたかを観測していたのだと。


 ただ、【観測士(オブザーバー)】ができるのはここまで。


 その後の転生者らの監視までは行えないらしい。



 次に、転生者について。


 秋彦らの調査よると、あの同窓会で死亡し、転生者として秋彦のほうで確認できたのは俺を除いて15名。


 そのうち、すでに2人は魔物に襲われて死亡してしまったとのこと。


 生き残った13名も今年度より俺たちと同じこの学校へと通うようだ。


 秋彦らの調べでは、桜庭さんの転生は確認できていないとの事。


 喜ぶべきなのか悲しむべきなのか……少しばかり複雑だった。



 最後に、なぜ俺たちが転生出来たのか。


 これはどうやら不明らしい。


 だが、何十年に1度のスパンでこうして転生が行われるらしい。


 今回がたまたま俺たちが死ぬ瞬間、この世界と地球が繋がったんだろう。



「その話が本当だとするなら、それなら【観測士(オブザーバー)】ってのは転生者の魂を観測できるだけってことか?」


「いやいや春人氏。【観測士(オブザーバー)】は、あらゆる事象を観測するのですぞ。天候の変化や星の動き。この世界に齎す変化にや災害ついて、【観測士(オブザーバー)】がいるからこそ、安心というわけですな。」


「……なるほど………」



 まだ少しばかり納得のいかないこともあるが、それ以上は問わないことにした。


 秋彦らもそれ以上知らなそうだし。




 その後は寮へと案内された。



 俺の部屋は4階の角部屋。


 部屋の大きさは6畳くらい。1Kだ。


 机と椅子、クローゼット、ベッド、それと風呂は備え付けられていた。


 窓にはベランダが設置されており、窓の向こうには王城が見て取れる。


 さっそくカバンから荷物を取り出し、備え付けられてたクローゼットの中へと服をしまい込む。


 その際、カバンに保管していた干し肉を齧って腹を満たす。


 師匠直伝の干し肉だ。


 ………とは言うものの、そこまで美味しくは無い。


 そう言えば、寮の1階には食堂も設置されていたな。


 通りがけにメニューをチラリと見たけど、結構美味そうな物もいくつかあった。


 とは言え、俺の小遣いは毎月金貨3枚。


 食費も1日3食とすると1ヶ月当たり90食。そこから逆算すると、1食当たり銅貨3枚と鉄貨3枚に銭貨3枚……つまりは333円。


 今月は移動費込みで少し多めに貰ってるけど、慎ましやかな生活を送らざるを得ないな。


 まあ、これについては実はどうとでもなる。


 というのも、俺はすでにギルドに登録しているからだ。


 師匠の勧めで、ギルドに登録して金を稼いでおけば、何かと入り用の際に困らないのと、訓練にもなる、ということで登録している。


 おかげでC級程度の魔物なら1人でも討伐できるほどにはなってきたけど、それ以上は人形の性能の限界だ。


 俺の動きに人形が耐えきれずに破れて使い物にならなくなっちゃう。


 ぬいぐるみからグレードを上げなきゃな。




 ……にしても今日は疲れた……



 俺は部屋に備え付けられてる風呂で簡単に身体を流し、その後はベッドへと横たえた。



 明日からいよいよ入学式……


 正直、学校がこれほど楽しみになったのは師匠のおかげだ。



 疲れていたのか、俺はしばらくすればそのまま泥のように深く眠りについてしまった。

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