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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第1章 はじまり
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第4話 ジョブ世界

 俺の名は形代春人。25歳。享年・25歳。


 ちなみに、彼女いない歴も25年。


 日々のクソ上司のパワハラに耐え、帰宅しては趣味のゲームばっかりやってる。


 いや、『やってた』か。



 ゲームに関しては少々得意だ。


 プロゲーマーとしての道もあったんだろうけど、馬鹿なチームメイトのおかげでその話もポシャっちまった。


 まぁ、俺が無罪だってのをもっと発信すれば何とかなったんだろうけど、当時の俺はネットでの悪評に耐えらずにヤケになって弁明することすら諦めたっけ。



 同窓会に出席して、憧れの桜庭さんにも会えただけでなく、俺と会話までしてくれた。


 何より嬉しかったのは、彼女が俺の名前を覚えてくれてたこと。


 ただ、その同窓会にて火災に遭い、俺はそこで死んじまったってわけ。



 ……にも関わらず、だ。



 俺は今、よく分からない状況に陥っている。



 ここはあの世なのかと疑ったこともあるが、どうやらそういう訳では無いらしい。



 死んだと思った俺が、再び目を開けると、そこには見ず知らずの男女が俺を見つめている。


 いや、見ず知らず……というより、どことなくウチの両親には似ているんだよな。



 男が女に何か言ってるが、何語なのかわからない。


 その後、驚いたことに女は俺を軽々と抱き上げた。



 え?うそ?



 どゆこと?



 この人、めちゃくちゃ力強いの?





 でも、どうやら俺はとんでもない誤解をしていたようだ。




 状況を確認するために手を伸ばした時だ。




 俺の手が異様な程に小さいんだ。




 その後、俺は自分の手で自分の顔を触って確認した。



 そこで理解した。




 俺は、赤子だ。




 そして、目の前にいるこの男女は、この赤子の親……つまり、俺の両親ってことだ。




 俺自身がタイムスリップして、俺が生まれた過去に戻った………わけでは無さそうだ。


 この2人は、両親に似てはいるものの、それだけ。


 話す言葉すら違う。




 ………てことは…………




 えぇぇぇぇええええ!!!?



 俺、転生、した……!!!?




 感情の高まりのせいか、俺は泣きたくもないのに何故か泣いた。



 赤子独特の、おんぎゃあってね。



 いや、泣きたくねえし!!



 いや、状況的には泣きたいけどもね!!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 それから数ヶ月が経ち、俺は自分に起きた事、この両親のことについて状況整理が付いてきた。



 俺はこの世界では『ハル・アルフィード』と名付けられたようだ。


 元の名前に近くて助かるね。



 当初は両親が何を言ってるのか全く理解出来なかったものの、徐々に2人の言葉を理解出来るようになった。


 赤子の頃から外国語に触れさせると言語習得に良いって聞くけど、ホントそうみたいだな。



 今ではハイハイを習得したおかげで、自分の足で色んな所へ出掛けることも可能だ。


 おかげで周囲の状況についても分かってきた。


 ハイハイで窓の外を見ると、そこには広大な小麦畑が広がっており、父親が一人でその畑を管理していた。


 どうやらこの家は農業を生業としているようだ。



 あと、『転生』と聞いて真っ先に思い立ったのは、剣と魔法の世界だろう。


 俺は何度か、ゲームの世界に入ってみたい願望があった。


 なぜなら、ゲームの世界では経験値を積めば積むほど強くなれる。


 色んなスキルや魔法も覚えられる。


 RPGでなくとも、キャラクターの性能は似たり寄ったり。


 たまにぶっ壊れ性能のキャラもいたりはするけどさ。


 つまり、何が言いたいかと言うと、そこには俺が嫌っている『天才』という言葉は存在しない、という事だ。



 それになにより、魔法とか撃ってみたいじゃん。



 ただ、この世界は俺が想像していた剣と魔法の世界とは違うようだ。



 母親が家事の際に魔法を使っているのを見たことがない。


 父親も、畑の管理をしている時、水魔法を使って水撒きをしていた訳でもない。



 けど、今より1週間くらい前。


 この地区を大嵐が襲った。


 幸い本宅は無事だったけど、庭にある納屋の屋根がその大嵐で吹き飛んでしまった。


 それを修理する様子から、この世界には魔法は無い、と確信した。


 いや、ここで言う『魔法』ってのは、所謂、風を出現させて木を切断したり、重力を操って木材を運んだりってやつ。

 RPGでよく見かける魔法のこと。


 なんでこんな言い回しになっているかと言うと、納屋を修理するのに専門業者を呼んでたんだけど、その修理業者の手際が、地球のそれよりも遥かに凄腕だったんだ。


 太い丸太を一人で担ぎあげて運んだり、その丸太を加工するのもまるで豆腐でも切ってんのかってくらいスルスルと切り分ける。


 普通なら修理に1週間はかかるだろうと思ってたけど、その修理業者によってたったの30分程度で終わり、あまりの驚きで俺はまたおんぎゃあしたよ。



「よしよし……それにしてもこの子……オムツでも無いのに変なタイミングで泣くのねぇ。」



 なんて母親が抱っこしながら呟いてたな。



 あとそれと、母のお腹が膨らんでおり、2人目が出来ていた。



 弟か妹か。



 出来ることなら可愛い妹が出来てくれるといいな。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 この世界に生まれて3年。


 今では俺は自分の足で歩き回ることも出来るし、当然言葉も話すことが出来る。


 そういえば、水に反射する俺の顔を見た時、俺の小さい頃の写真によく似てた。


 もしかすると、転生の際に自分の遺伝情報に近い家に生まれるんだろうか?



 今ではもう感情の昂りでおんぎゃあすることも無い。



 この3年で分かったのは、アルフィード家はあまり裕福な家庭では無い、ということだ。


 それと、精神年齢が肉体の年齢に馴染んでいる気がする。


 俺は精神年齢で言えば28歳だが、肉体は3歳だ。


 この精神年齢が、肉体である3歳の精神年齢に引っ張られているような気がする。


 まあ、『気がする』程度だけど。




 あ、それと、母親は無事に2人目を出産。


 名前は『ナツ・アルフィード』。

 弟だ。


 俺がハルで弟がナツって、両親のネーミングセンス、ちょっと安直だな。



 俺は妹のほうが良かったけど、弟の可愛い寝顔を見てそんなことはどうでも良くなった。


 俺は率先してナツの面倒を見てたっけ。


 嬉しかったのは、一番最初に喋った言葉が「にいに」だったんだ!


 それまでもよく俺が弟の面倒を見てたけど、一層可愛がってた。


 そんなナツも今では2歳になり、俺の後ろをよく着いて回る可愛いやつだ。



 それはそうと、俺はようやくこの世界について分かってきた。



 どうやら、この世界はジョブというものが存在する。



 それは、地球の職業とは異なり、ジョブには色々なスキルや効果が存在するようだ。


 昔に見た修理業者の手際が良すぎたのも、このジョブによるものだ。


 修理業者は【建築士(アーキテクト)】というジョブを持つ。


 このジョブは、建築資材の運搬や加工、建物の構造や建築などに補正がかかる。


 だから、納屋の修理をあれほど早くに完了させたんだと。



 ちなみに、父のジョブは【農人(ファーマー)】。母は【調理師(コック)】だ。


 離乳食を卒業して母が調理をした料理を食べた時、異様に美味しかったのを覚えてる。



 ジョブは、10歳になった時に、ジョブ鑑定により判明するそうだ。


「お前たちも、良いジョブを持つんだぞ!」


 父は事ある事にそう俺たちに言い聞かせた。



 ジョブかぁ。


 どれ程の種類のジョブがあるのか。


 何のジョブを持つのか楽しみだな。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 色々とありつつも、俺もいよいよ10歳を迎えた。



 一応この世界でも学校がある。


 日本と同じで7歳で入学し、読み書きや算数、歴史や体育といった科目があった。



 学校に入学した当初は、俺と同じようにあの火災で死亡して転生した者がいないか探してみたものの空振り。


 俺だけが転生できたってことか?


 だとするなら秋彦や冬馬とはもう会えないんだろうか……


 いや、希望を捨てるのはまだ早いか。



 ここで教わる科目については、俺の成績は優秀だった。


 ま、それも当たり前だ。


 何せ、俺は一応前世では大学は卒業してる訳だし、その記憶も持ち合わせてる。


 おかげで読み書きや算数、歴史は常に満点。


 体育の成績も悪くは無い。


 学校では俺は人気者になり、両親も自慢の息子だと褒めちぎり、ナツは尊敬していた。



 そしていよいよ今日。



 ジョブ鑑定が行われる。



「ハル君は成績もすげぇからな!きっと凄いジョブ貰えると思うぜ!」


「うんうん!この前のテストだって全科目満点だったもんね!」


「やっぱすげぇよなハルは!」



 学友はそう口々に持て囃す。


 かく言う俺自身もこの世界で色々と頑張ってきたし、どんなジョブになるか楽しみではあるけどさ。



「さあアルフィード君。そこの台座に手を起きなさい。」



 先生に促され、俺は鑑定用の台座へと手を置いた。


 するとそこから光が放たれ、暫くすると敷かれていた羊皮紙に文字が打ち出され、俺だけでなく学友たちも興味津々でその文字を見つめた。



 【人形師(マリオネイター)



 羊皮紙にはそれだけが描かれていた。



「……え………にん……ぎょう……し………?」



 人形って、子供が遊んでる、アレのことだよな?


 人形師ってつまりは……操り人形とか指人形とか……そういうので楽しませる系のアレのこと?


 ……も、もしくは……人形を作れるだけ……ってことは……無い………よな…………?



 羊皮紙に書かれたその文字に俺自身が当惑していたが、学友たちは押し黙って俺を見つめる。



 これってもしや、実はこの世界では凄いジョブで、そんなレアなジョブに選ばれたハル君すげぇぇ!!……っていう、前フリ?



 俺がそんな期待を胸にみんなの反応を待っていたが、それは早くも裏切られた。



 学友たちの誰かしらからクスクスと笑い声が聞こえ始め、ついには


「………マジかよ………アレだけ期待させといて……プッ……!」


「ちょっと、笑っちゃダメだって……!」


「でもよ、人形師なんてさ……ククッ……大道芸人じゃん……!」



 なんて言葉が小声ながらも確かに聞こえた。




 俺は理解した。



 結局は、この世界も持って生まれた『才能』が全てである、と。


 俺は過去に、ゲームの住人が羨ましいと思った。


 ゲームの住人になりたいとも願った。


 でも、違うんだ。


 現実も、ゲームの世界も。


 プレイヤーとして操作できるキャラクターは、ゲームの世界では所謂『持って生まれた側』であるのだ。


 何も持っていない、『持たざる者』は、そこらにいるモブと同じ。


 彼らは自ら進んでモンスターを討伐しようなどとは考えない。


 なぜなら、『持たざる者』だから。


 だから彼らはモンスターを討伐するのではなく、宿屋や居酒屋を経営する。


 結局この世界でも俺は前世と同じ、『持たざる者』なんだ。


 何を勘違いしてんだ俺は。


 何を主人公気取ってんだ俺は。




 それからのクラスのみんなは俺の事を嘲笑の的として面白がった。



 陰口は次第に大きくなり、表立って俺の事を『大道芸人』とバカにした。



 子供というのは残酷だ。



 いつの世界でもそうだ。



 子供は悪意もなく面白がって蟻を踏み殺す。



 そして、俺に対する評価は、当然父も同じだった。



 俺が【人形師(マリオネイター)】というジョブを授けられたと聞くや、あからさまに落胆した。


 その反面、弟には今度こそと期待した。



 なんだそれ。


 なんだよ。



 なんなんだよ。



 勝手に期待して勝手に落胆して。



 俺だって同じさ。


 【人形師(マリオネイター)】だなんていうジョブを授けられたせいで、たった10歳で俺の運命は決まってしまった。



 生産職でも戦闘職でもない、所謂『負けジョブ』。



 その烙印を、10歳で決められたこの理不尽。




 俺は次第に学校をサボるようになった。



 サボったってどうせテストの成績自体は文句ない。


 俺からすればこの世界の読み書きや算術なんて子供の戯言。



 学校はサボるくせにテストは常に満点。



 先生も親も何も言わない。




 あ〜あ、せっかく転生して第2の人生を歩めると思ったのに、もうおしまいか。



 この世界は地球以上につまらないな。



 テレビゲームなんて当然無いし、遊びなんて子供同士でのボール遊びとかかくれんぼや鬼ごっこくらい。



 つまんねぇ。




 俺は授業をサボっては、誰もいない裏手の森の中で寝そべり、ただただ無駄に時間を費やしていった。

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