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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第3章 合同演習
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第23話 闇ギルド

 空が白み始め、小鳥が囀り始める。



 見張りは途中で女子らと交代したものの、俺はいつもの如く早朝には目が覚めた。


 といっても、寝たのは4時間くらいか。



 テントから顔を出して新鮮な空気で肺を膨らませる。



 ん〜〜!気持ちいい!!



「……もう起きたの?早いわね。」


「ふぁっ!!?」



 あ、女神様だ!!


 そういやそうだ。


 合同演習で女神様と同じ班だった。



「……まあ、なんというか……ま、枕が無くて中々寝付け無くって……」



 まあ、嘘だけど。


 しっかり寝ました。



「そう。」


「……そ、それで……アリシアさんのほうは何もお変わりは……?」


「特に無いわ。」


「それは良かった……」



 アリシアさんの隣ではリリアンさんが眠気に負けているようでスヤスヤと眠ってた。



 俺は川で顔を(すす)ぎ、吊るした肉を確認する。


 うん、問題なし。


 ……と、あとは日課の走り込みや筋トレをしたいところだ。



「……あのぅ……アリシアさん?」


「何?」


「ちょっくら辺りを見回してきます。」


「人形で?」



 そうだった。


 良い言い訳を思いついたと思ったけど、見回りならジョブでやればいいじゃん。



「……い、いや……そんな遠くまで行かないんで俺が見回ってきます。」


「………分かった。」



 ふぅ。


 まあ、遠くまで行くんですけど。


 なんにせよ、日課を怠る訳にはいかないんで。


 べ、別に、女神様と2人っきりが気まずいとか、そういうのじゃ無いんだからね!



 そんなわけで日課の走り込みを行いつつ、周囲を軽く見回る。


 森の中へと入り、アリシアさんらの視線が切れたタイミングで加速する。


 しかし、そのタイミングで何者かが俺の行く手を阻んだ。



「失礼!怪しいものではない!」



 怪しい奴ほどそう口にするもんだが。



「私はエルミリア王国騎士団のアルバートだ。以前会っただろう。」


「……あ。」



 そういやそうだったな。


 しかし、なんでこんなとこに?



「国王の命によりアリシア王女の護衛をしている。昨日はファングラビットの撃退、若いながらも見事だ。」



 昨日のアレを知ってるってことはずっと見てたわけね。



「……はぁ……そ、それで?」


「アリシア王女におケガは?」


「……いや、大丈夫だと思います。」


「……そうか………すまない。そもそも、キミたちがいるのだから大丈夫か。」



 これは、俺が黒衣の騎士を操っていると知っていての発言、か。


 いや、もしかするとだ。


 この班分け自体も、俺なら何かあってもアリシアさんを守ってくれると踏んでのことか?


 それならそうと言ってくれれば、俺は女神様の使徒として喜んで仕えますけどね。



「本来、私が生徒に接触するのは禁じられている。だが、キミには伝えておこう。」


「……え……?……な、何を…ですか……?」


「この森の中に、不穏な輩が出入りしている。おそらくは闇ギルドの連中だ。」


「……闇ギルド……」



 聞いたことはある。


 本来ギルドでは扱わないような裏稼業。つまりは人攫いや強盗、暗殺を請け負うようなヤバいギルドだ。


 このタイミングで闇ギルド。


 まさか、アリシアさんの誘拐か?



「目的は不明だが、もしかするとアリシア王女の身柄を狙っているのやもしれん。」


「……誰が依頼したとかは分からないんですか?」


「……あぁ……だが、キミたちがこの森で演習を行うと知っていた者……つまりは、学校関係者の可能性が高い。」



 ふむ。


 確かにそうだろう。


 でも俺は、もう一つの可能性を危惧している。


 それは言うまでもなく御堂だ。



「……分かりました。」


「……しかし、キミは努力家だな。こんな早朝からランニングとは……いや、失礼。先の件、くれぐれも用心してくれ。」



 そう言ってアルバートさんは森の中へと消えて行った。


 俺は走り込みを再開させつつアルバートさんの話から推測していた。


 闇ギルドの狙いがアリシアさんであり、依頼主が御堂だと仮定する。


 奴は前世でアリシアさんだけでなく俺たちを殺した張本人。


 アリシアさんの話では、奴はギリギリまではアリシアさんを助けようとはしていた。


 実際は自作自演なわけだが。



 なら、なぜそんな手の込んだ自作自演を?



 ……待てよ。


 確かアリシアさんの話では、御堂がアリシアさんを刺した時、狼狽えていたって言ってた。



 ………つまりは……本当は刺すつもりは無かった………?



 となれば、奴は『アリシアさんの窮地を救ったヒーロー』にでもなるつもりだった……?



 だけど、奴は何らかの理由により突発的にアリシアさんを刺してしまって、それで狼狽えた……?



 ………………



 仮にこの仮説が正しいとし、今回の闇ギルドの裏に御堂が関わっているとしたら奴の目的は……?



 さすがに同じ手は通用しない。


 なぜなら、アリシアさんは前世に御堂に刺されたことを覚えている。


 なんなら、あの火災も御堂が仕組んだと知っている。


 その上で、同じように御堂が自作自演でもって闇ギルドの連中にアリシアさんを誘拐させ、それを救ったヒーロー、というのは成り立たない。



 ここから推測できる可能性は、


1、アリシアさんを誘拐し、ペットにする。

2、誘拐した上で、身代金を頂戴して高飛び。

3、口封じ。



 こんなとこか?


 ……いや、3は除外していい。


 口封じならば、あの日の真実をアリシアさんは俺たち1クラス全員に話している。


 となると、口封じはその全員の口を封じなければならない。



 それに、奴の前世の目的が、おそらくだがアリシアさんにとってヒーローになる、みたいな事だとするなら、俺たちはその過程で踏み台に殺されただけだ。



 ……うーーん。


 今ごちゃごちゃ考えても分からない。


 とにかく、その闇ギルドには気をつけないとな。



 そうこう考えながら体感で10キロを走破し、俺はテントへと戻った。


 時間にして40分くらいは経ったものの、アリシアさん以外はまだ寝静まっている。



 考え事をしながらだったものの、森の中のランニングは良い。


 足腰が本当に鍛えられる。


 俺はアリシアさんの元へと戻る前に川で汗を流し、そうしてからアリシアの元へと戻ることにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……見回りにしては、随分と遠くまで行ったのね。」


「……えっと……ち、ちょっとだけ道に迷っちゃいまして……」


「そう。」



 アリシアさんはそう言ってティーカップに注いだ紅茶を口にする。


 いやぁ〜。


 絵になります!!


 女神と森!!


 なんと優雅な事でしょう!!



「あなたも飲む?」


「……ふぇっ!!?……い、いいんだすか?」



 また噛んだぜちきしょうめ。



「別に構わないわ。」



 そう言うとアリシアさんはティーカップをもう1つ取り出して紅茶を注いでくれた。



「どうぞ。」


「……で、では………い……いただきます……!」



 ティーカップを口元に近づけてまず香る。


 そして1口。


 ………………



「……美味しい………!」


「そんな味なんて変わらないわよ。」


「そ、そんなことないです!!めちゃくちゃ美味しいです!!」


「そう。」



 ……あれ………


 今、この女神様、少しだけ笑った……?


 え、女神様が、微笑んでらっしゃった……!?


 今はその美しい髪で表情が見えない。


 でも、一瞬だけチラリと見えた口元が、少しだけ緩んでいらっしゃった……!?



「……そういえば、名前はあるの?」


「ふぇっ!?……な、名前って……?」


「あなたの人形に。」


「……あぁ……えーっと………」



 ……名前なんて考えて無かった……!!


 どうしよう!!


 えーっと、えーーーっと………



「…な、名前は『ピース』です……!」



 咄嗟に出た名前、それは前世でネット上でフレンドだったピースさんから拝借した。



「……ピース……?………なんでその名前を……?」


「……えっと……まぁ、俺、平和主義なんで……それで……ですかね………」



 まあ、平和主義なのは嘘ではない。


 ただ、前世のフレンドの名前からだなんてちょっと気が引けるというかなんというか。



「……ねぇ……あなた、カタ……」


「ハルーー!!!!」



 アリシアさんが何か言いかけたが、ロータスが突然勢いよく俺の名を叫びながらテントから出てきた。



「……び、びっくりしただろ、ロータス……」


「……ハル!!?……あぁ……いたか………てっきり俺は魔物にでも喰われたんじゃないかってさ……起きたら居ねぇんだもん、隣によ。」


「……目が覚めたんで、ちょっとだけ見回りしてただけだよ。」


「……なんだ………良かった………」


「……うーん……何……?……うるさいなぁ………」



 ロータスの叫び声のせいでリリアンさんまで目を覚まして目を擦る。



「……あっ……!!わ、私、寝ちゃってた……!?……ごめんなさい!!」


「別に大丈夫よ。特に魔物も来なかったし。」


「本当にごめんなさい!!今度埋め合わせするから!!」


「それなら、今度デザートでも奢ってね。」


「…………………」



 アリシアさんの返答が意外だったのか、リリアンさんは目をパチクリさせた。



「わ、分かった!今度お気に入りの場所紹介してあげるね!」



 リリアンさんは笑顔で答えた。


 いいなぁ。


 俺も連れてって。



 ……あ……そういや……



「……ア、アリシアさん……そういえば、さっきは何て言おうと……?」


「……別に大したことじゃないから大丈夫よ。」



 ……あら、そう………


 余計に気になりますけど……



 そうこうすればサイラスも目を覚まし、俺たちは早めの朝食を摂ることにした。

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