第19話 熟練度
授業で判明した事だが、ジョブにはそれぞれ熟練度というのが存在する。
俺がジョブレベルって言ってたアレのことだ。
この熟練度というのは、当然ながらジョブを使うことで熟練度が上がる。
一番効率のいいのは戦闘で得た経験値だ。
しかし、生産職はそうはいかない。
彼らはそのジョブで戦う術を持っていない。
今回の授業では、まずは生産職の熟練度の上がり方について聞かされた。
【調理師】を例とする。
調理スキルが上昇するジョブだが、直接的に戦闘には参加できない。
だが、『調理をする行為』そのものでも微小ながら熟練度が上達するそうだ。
【調理師】がほぼ毎日のように調理をすることで、約1年で熟練度が2になる。
ただ、2から3に上がるためには2年。3から4に上がるためには4年。4から5だと8年は掛かるのだとか。
仮に熟練度が10まであるとするなら、511年は掛かる計算だ。
その前に寿命だな。
現在では【調理師】の熟練度が7の者が最高位であり、過去に8の者がいたが、その者は伝説の【調理師】と呼ばれているそう。
熟練度に関しては、より高度な鑑定台により判別出来るという。
「では、実際に熟練度を鑑定してもらうとする。」
ラインハート先生はその鑑定台の実物を持っていた。
と言っても、鑑定には少し時間が掛かるようで、クラスの中で代表して3名の者が鑑定台を使わせて貰えることとなった。
「鑑定したい者は?」
先生の問いかけにみんなが挙って挙手をする。
みんな興味津々のようだ。
俺も鑑定してもらいたいところだけど、もしそれで熟練度が高いと変に思われる。
俺は成り行きを見守ることとし、クラスの中で話し合い、ジャック、ロータス、リオさんの3名が代表して鑑定を行う。
まずはジャックが鑑定台に手を載せると、さっそく淡い光が鑑定台から放たれる。
本来ならすぐさま鑑定用紙が現れるが、この鑑定台は先生の言ってたようにかなり時間が掛かるようだ。
載せてから3分ほど待ってようやく羊皮紙がプリンターのように印字されて現れる。
「……ほう。熟練度は3か。その歳での【調理師】としては優秀だな。」
ジャックは前に紹介したが、元居酒屋の店長だ。
この間もウェアウルフの肉を調理して振舞ってくれたが、その味付けには感動した思い出だ。
続いてロータスが手を載せる。
コイツは確か【騎士】。
黒衣の騎士に教えを乞うため、何でもいいから情報が欲しいと頭を下げてきた奴だ。
……そういやコイツ、この前の大会には居なかったな。
「………ふむ………熟練度はまだ1だな。【騎士】ならば戦闘職だ。精進するように。」
「……は、はい……」
……なるほど。
熟練度としてはまだ駆け出しのヒヨっ子ってわけか。
続いてはリオさん。
この人は元生徒会で副会長を務め、前世では看護師だった。
ジョブは【治癒士】。
この前のウェアウルフとの戦闘で怪我した奴らを治療してたな。
「……ふむ……熟練度は2だな。『魔法薬生成』を習得しているな。【治癒士】は戦闘職らの大切なサポートだ。将来のためにも、後衛と言えども危険が迫ることもある。鍛錬は欠かさぬように。」
「はい。」
確かに、後衛組にいる【治癒士】が敵にやられてしまうと途端にパーティは崩壊する。
RPGの基本だな。
「あの、先生!熟練度って一体どれくらいまであるんですか?」
3名の鑑定が終わった途端、早速質問が飛び出した。
「熟練度の最高位は10だ。過去に【剣士】と【騎士】がそのレベルに達している。」
なるほど。10が最高位か。
「…あと先生!熟練度によって習得できる技について、今はどれ程判明しているんですか?」
「焦るな。今から表を配る。」
そう言って先生は俺たちに熟練度とスキルの表が書かれた紙を配った。
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【剣士】
熟練度1 剣術スキルが上昇する。
熟練度2 受け流しスキルを習得する。
熟練度3 カウンタースキルを習得する。
熟練度4 剣術スキルがさらに上昇し、手放した剣を引き戻す事が出来る。
熟練度5 居合切りスキルを習得する。
熟練度6 『残心の心得』を習得。敵を倒すとスタミナを回復させる。
熟練度7 剣術スキルが飛躍的に上昇する。
熟練度8 『剣帝』スキル。周囲を威圧し、熟練度が7以下の者に麻痺を付与。
熟練度9 『大剣豪』スキル。刃こぼれが起きなくなり、凄まじい剣圧にて防御壁を崩壊させられる。
熟練度10 究極秘奥義『ソードレイン』スキル。任意の場所に幻影剣を出現させ、敵に向けて射出する。
【騎士】
熟練度1 槍術スキルが上昇し、馬術スキルも上昇する。
熟練度2 鎧の耐久性が上昇する。
熟練度3 槍術・馬術スキルがさらに上昇する。
熟練度4 馬の能力を上昇させ、一時的に剛力・俊敏を付与できる。
熟練度5 鎧の耐久性がさらに上昇する。
熟練度6 『人馬一体』スキル。手網が無くとも馬を自在に操れる。
熟練度7 『鉄壁』スキル。魔術により防御壁を展開できる。
熟練度8 『リフレクトシールド』スキル。相手の如何なる攻撃をも跳ね返すシールドを展開できる。格下の敵では破れない。
熟練度9 『神通砕牙』スキル。威力を溜めた渾身の一突き。一帯に巨大な風穴を通す。
熟練度10 究極秘奥義『円卓の騎士召喚』スキル。魔力により11人の騎士を出現させ、戦闘に参加させられる。召喚した騎士の能力は術者よりも低級となる。
【治癒士】
熟練度1 小効果の治癒魔術を使用できる。
熟練度2 『魔法薬生成』スキル。小効果の魔法薬を生成する。
熟練度3 小効果解毒魔術を使用できる。
熟練度4 中効果の治癒魔術を使用できる。
熟練度5 中効果の解毒魔術を使用できる。
熟練度6 中魔法薬生成。
熟練度7 高効果の治癒魔術を使用できる。
熟練度8 あらゆる状態異常を回復する解毒魔術を使用できる。
熟練度9 以下不明。
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……ふむ……
かなりの量だ。
でも、面白い情報だな。
俺の【人形師】は、と…………お、あった。
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【人形師】
熟練度1 人形を操れる。
熟練度2 精度が増す。
熟練度3 以下不明。
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……短っ!!!!
短すぎて見過ごしてたわ!!
以下不明ってことは、【人形師】がそこまで居ないか、負けジョブが故に相手にされていないかのどちらかってことか。
……ってか、適当すぎんだろ、これ。
その後、この熟練度の分かる鑑定台は訓練ルーム前に置かれているので、自分の熟練度を知りたい者は自由に使え、と先生から説明された。
壊したら相応の罰と弁償が待っている、と脅されたが。
そういやアリシアさんの【軍師】についてだけど、何故かこのジョブに関しての記述がなされていなかった。
だけど、誰もそのことに触れようともせず、アリシアさんもまた『さも当然』のような表情をしていたな。
「……なあ、アキ、トーヤ。」
「なんですかな?」
「なんでこの表には【軍師】について書かれて無いんだ?」
「……あ……そっか。ハルは知らないんだっけ。」
「……何が?」
「……え、ええっとね……」
「【軍師】というのは非常に稀なジョブでしてな。このジョブは戦争に関わる際にとても役立つジョブなのです。」
「……へぇ……それで?」
「役立つ、ということは、それだけ秘匿したい事も多いのですな。地球でもあったように、所謂『軍事機密』というわけです。」
「情報が漏れ、【軍師】の能力を知られないようにするため、か……」
「き、きき、気をつけてね、ハル!【軍師】について知ろうとする事は、変な疑いを掛けられちゃうから!」
「………分かったよ。」
【軍師】についてこの2人との会話はそれで打ち切った。
しかしながら、【軍師】って一体何ができるジョブなんだろうか?
地球での軍師っていうと、戦術とか組み立てる系の偉い人だ。
その人の裁量1つで戦局が大きく傾く事もある。
じゃあ、そのジョブってことか?
いい作戦を思いつく、的な?
うーーん、わからん。
にしても、そんなレアジョブがなぜアリシアさんに授かったんだ?
今までの授かったジョブは、何かしら前世と共通点がある。
アーサーは前世ではプロボクサーだったし、リオさんは看護師だ。
だから2人は【闘士】とか【治癒士】ってジョブを授かってる。
アキとトーヤ、それに俺も、前世と何かしら繋がりがある。
それなら、アリシアさんの【軍師】は?
もしかして、アリシアさんって自衛隊で司令官だった……とか?
……いやいや、そんな馬鹿な。
これは彼女が司令官足り得ないとかそういう話じゃなく年齢的に、だ!
なんなら、俺だってアリシアさんの元で働きたいっての!!
俺だって女神様に仕えたいって!!
……また脱線したな。
彼女の何が【軍師】というジョブを授けたのかは不明だけど、彼女は争い事とかそういうのから遠くにいそうな印象だったけど、案外そうじゃないって事かな?
「ところで、ハル氏は熟練度の鑑定は行わないのですかな?」
俺が考え事に耽っていたところへ、突然アキから質問が飛んできた。
「……ん〜〜、まぁ、気が向いたら、かな。」
「た、多分凄いんじゃない!?だってあんなに…」
「トーヤ氏、気をつけてくだされ。誰かに聞かれるとまずいですぞ。」
「……あ………そ、そっか………」
帰りがけに訓練室前を通ってみると、そこには熟練度を知りたい生徒らがズラリと長蛇の列を作っていた。
鑑定には3分ほど掛かるため、おそらく最後尾は調べられるのに2時間は掛かるな。
「アルフィード。お前も鑑定か?」
掛けられた声に振り向くと、そこにはラインハート先生がいた。
「……え、と……た、たまたま通りかかっただけです……」
「……ふむ………いいかアルフィード。どのようなジョブでも、大事なのは使い方だ。お前もローガン・グレンダー氏を知っているだろう。」
「……えぇ、まぁ。」
知ってるも何も、俺の尊敬する偉大すぎる師匠だ。
「彼はジョブを授からなかった。しかし、彼は諦めずに鍛錬し、そのおかげで去年の大会に優勝した。そればかりか、先の魔人襲来の際も、彼が居たからこそ討伐できたのだ。」
うん。
知ってるも何も、俺も当事者だ。
「た、たしか、そこに黒衣の騎士も居たんですよね……?」
「………らしいな……先日、ウェアウルフに襲われそうになっていた我々を救うばかりか、あのローガン殿と対等に肩を並べられるほどの逸材……一体彼は何者なのか………
……それよりも、もし調べるにしても、寮の門限には遅れるなよ。遅れた場合は減点だ。」
「し、承知してます。」
「じゃあな。」
先生はそう言ってツカツカと職員室へと向かっていった。
熟練度ねぇ。
気にならない、と言えば嘘になる。
一応俺自身で体感した感じだと、俺の熟練度は少なくとも5はあると思ってる。
ただ、熟練度が上がったからといっても、【人形師】については分からない事が多すぎる。
鑑定台で熟練度8とか言われても、それでなんのスキルが使えるのかが分からない。
「ハル氏。そろそろトーヤ氏の馬車が着きますぞ。」
「……あぁ、今行くよ。」




