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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第2章 【人形師】
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第12話 校外学習

 今日は校外学習のため、王城へと訪れていた。



 外から見ただけでもかなり大きく荘厳な城だが、近くで見るとよりそれが際立つ。



「これより校外学習を実施する。」



 ラインハート先生が騎士団らを紹介し、俺たちには『アルバート』という隊長が務め、他に2人ほど補佐がいた。



「諸君にはこれより、我々が日々行っている訓練や職務について紹介させてもらう。訓練といえど、気を抜かぬようしっかりと励むように。」



 まずは王城の中を簡単に案内される。


 とはいえおそらくは重要な場所については教えてくれないんだろうけど。



 にしても、城の中は本当に豪華だった。


 天井からはシャンデリアがいくつも並び、窓にはステンドグラス。


 床は塵一つ無い赤い絨毯が敷かれている。


 ……こんな凄い場所にアリシアさんは暮らしてるんだな……



 女子たちはこの豪華な城内に盛り上がっていた。



 様々な部屋を紹介された後、騎士団の訓練場所へと連れられた。


 そこでは筋骨隆々な騎士の方々が汗水垂らしながら走り込んだり筋トレしたり素振りをしたり、あるいは組手をしていた。



「そこ!!もっと腰を下げろ!!」


「さっさと立て!敵は待ってはくれんぞ!!」


「貴様!!それでもやる気があるのか!!」



 訓練所には怒号も飛び交う。


 男子は少し圧倒されてた。


 女子の中でも数名、鍛え上げられた筋肉を見てウットリとする者もいた。



「ここではこうして毎日トレーニングを行っている。日々の鍛錬の積み重ねが、王城、ひいては王国を守る盾にも剣にもなる。」


「……あの……」



 クラスの男子が手を挙げて質問する。



「なんだ?」


「ジョブがあるのに、何故わざわざ訓練を?」


「ジョブというのは偉大だ。しかしながら、なんでもジョブ任せにも出来ん。キミたちの中に戦闘職のジョブを持った者は?」



 その質問に何人か手を挙げる。俺も手を挙げるべきか悩んだが、とりあえずは辞めとこう。どうせバカにしてくる奴がいるし。



「……ふむ………戦闘においてジョブが(もたら)す効果は絶大だ。しかしながら、ジョブは魔力が無ければ発動しない。もしも戦争ともなれば、戦闘が長引くこともままある。そんな時に備え、ジョブを使わずとも戦えるよう鍛えておく必要があるのだ。

 他に質問は?」


「……あ、じゃあ……基本的にどんなジョブが騎士団になれるんですか?」


「……そうだな………ここで多いのは【騎士(ナイトランサー)】【剣士(フェンサー)】【闘士(ウォーリアー)】【弓士(アーチャー)】。それから数は少ないが、【治癒士(ヒーラー)】【走者(ランナー)】【観測士(オブザーバー)】もいる。あとは【軍師(ストラテジスト)】だ。」



 アルバート隊長がそう言った時、アリシアさんをチラッと見たが、彼女は目を瞑って興味が無さそうな顔をしていた。



「あの〜、【人形師(マリオネイター)】とかは居ねぇんスか〜?」



 アーサーは馬鹿にしたような声で質問する。



「……【人形師(マリオネイター)】が騎士団に所属した過去は無い。しかしながら、どんなジョブでも、いずれ人の役に立つ事がある。」


「人形を使って敵を楽しませるとかッスか〜?」



 今日はやけに絡んできやがる。



「……ふむ………キミの名前は?」


「アーサー・ドラグルス。」


「ふむ。いいかドラグルス君。キミたちの世界とこの世界ではジョブの齎す効果は絶大なのは理解しているだろう。キミは【人形師(マリオネイター)】をバカにしているかもしれないが、そんなことではいずれ足元を掬われる。他人のジョブを下に見るよりもまず、自身の腕を磨くように。」


「………りょーかいッス。」



 アーサーはアルバート隊長に窘められたのが頭にきたのか、不貞腐れたような表情をしていた。


 ざまぁみろ。



「……他に質問は?」


「……あ………じゃ、じゃあ、俺から。巷で噂の黒衣の騎士って、本当に騎士団の誰かじゃないんですか?」



 そう質問したのはルイスさんだ。



「……黒衣の騎士、か。我々の方でも確認したが、騎士団の中に黒衣の騎士なる人物は誰も該当しなかった。突然現れたことから、さすらいの冒険者なのではないか、との見立てだ。」


「……そ、その黒衣の騎士って、騎士団より強い…ですか……?」



 続けて質問したのは南野さんことフェン・メリディエス。



「………実際に手合わせした訳では無いのでハッキリとは分からぬが……噂が全て真実というのなら、相当の手練であろう。彼の刃が我々に向かんとも限らぬ故、日々鍛錬を積むのみである。」



 アルバート隊長はハッキリとは言わずに濁した。


 ……ということは、俺の人形ってかなり強いってことか?


 俺は先程アーサーにバカにされた事も忘れ、口元が少し緩んでいた。




 その後は街の外へと案内され、近場の森の中での活動について紹介された。



 テントの場所、組み方、水の煮沸。食べられる木の実の種類や魚や罠の張り方などなど。


 さすがは騎士団員。全員手慣れた手付きでテキパキと進めてる。


 注意事項として、森の中で野営を組む場合は魔物の他に盗賊や山賊に注意するように、との事だ。


 魔物によっては火に怯えないやつもいること。



 それらを伝えた後、いくつかのグループに分かれて魔物の生息域の調査へと出掛ける。


 戦闘職以外の者はテントに残って飯炊きだ。



 一応念の為にAxel(アクセル)は近くの森の中に潜ませている。


 というのも、来るかどうかは分からないけど、もしかしたら御堂が潜伏していて俺たちを襲撃してきた時のためだ。



 戦闘班に何人か隊長共に同行するのを俺は見送った。


 アリシアさんも居残りのようだ。



「では、我々も早速取り掛かりましょう。」



 騎士団員の号令で早速炊事に取り掛かる。


 とはいえ、調理に関しては元居酒屋店長であるジャック・ハイザンがいるので、俺たちは水を汲んだり枝を集めたりキノコや山菜、木の実などを調達する。



「……戦闘班、大丈夫かな?」



 俺はアキとトーヤと共に枝を採集しながらつぶやいた。



「アーサー氏も態度こそ横柄ですが良いジョブ持ちですからな。それにリュゼ氏やロータス氏もおります。」


「…そ、それにアルバート隊長さんもいるから大丈夫でしょ。」


「……だといいんだけど。」


「気になるようでしたら、Axel(アクセル)で様子を見に行かれては?」


「……うーーん………」



 俺は生返事をしながら枝を集め、テントへと戻ることにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……ふぅ……仕込みはこれで充分かな。」


「さすがは【調理師(コック)】だね。あっという間にこれ程の仕込みを終わらせるなんて。」


「ホントホント!……あぁ楽しみ……!」



 ジャックさんのジョブのお陰で沢山の料理の下準備が整っていた。


 さすがは創作料理系。順応や応用力が素晴らしい。



「……それにしても、遅いですな……」



 騎士団員が戦闘班の帰りが遅いのを少し心配していた。



「まぁ、隊長がいらっしゃるので大丈夫かと。おそらく、獲物を探すのに手間取っているのやもしれませんし。」



「ではでは、私の華麗なる歌を、この大自然と共に堪能してくださ〜い!」



 持て余した時間を埋めるためか、サイラスが【音楽奏者(パフォーマー)】のジョブを使用して音楽を奏でる。


 サイラスは杖を右手に持ち、エアバイオリンを弾く。


 すると、バイオリンの音色が実際に聞こえ始めた。



 長閑な自然の中、バイオリンの音色がリズミカルに流れ、この大自然と不思議と調和する。



 皆は先に紅茶を飲みつつ音楽とこの自然を嗜んでいた。



「少しいいかしら?」


「んえっ!?」



 突然女神様が俺に声を掛けてきたので驚いた。



「な、なんでしょう!?」


「あなたの好きなラーメンサラダは無いようね。」


「……え……?………あっ………」



 そうだ。


 俺はそういえば前世で人生で一番くだらない嘘を付いたんだった。



「……ま、まぁ……ここは異世界ですから……」



 無くていいんだけどね!


 別に好きじゃないし!



「……それよりも、皆御堂のこと、忘れてるようね。」



 ……御堂……か………


 俺も忘れた訳じゃない。


 ただ、あまりに何も無さすぎるのと、指名手配されてるくらいだから俺たちに手を出しづらいのかと安心していた。というのが正しい。



「……アリシアさんはこのタイミングで御堂が襲ってくる、と?」


「そうじゃないわ。御堂が来た時の対策について、皆なにも考えて無さそうってだけ。」



 指名手配されているから大丈夫だろう。


 というのは、おそらく日本人生まれが故の平和ボケなのだろう。


 実際、師匠と出会う前の俺は完全にそれだった。


 でも、この世界は日本でも無ければ、増してや地球ですらない。


 自分の身は自分で守らなければならない。


 御堂が俺たちを殺しにくるかもしれないのなら、本来は協力してジョブの訓練やら複数人で行動するなどの対策を講じておくべきなのだろう。



「……アリシアさんは何か対策でも……?」


「私は常日頃から訓練を欠かさないようにはしているわ。もし万が一、彼がまた私を殺しに来た時に、今度は反撃出来るように。」



 この世界に転生できて俺は幸せだ。


 だってこんなにも女神様とお話出来るんだから!


 ………まぁ、話題のほとんどが御堂関連なのは置いておこう……



「………それにしても、遅すぎるわね。」



 確かにそうだ。


 戦闘班と分かれてすでに3時間。


 当初は1時間半ほどで戻ってくる予定だったのに、いくらなんでも遅すぎる。



「………あ、あの………ちょっとだけ俺、トイレに……」


「気を付けてね。」



 本当はもうちょっとだけ女神様とお話したかったけど、催したものは仕方ない。


 いや、本当は催してなんか無いけど。



 俺はアキとトーヤと合流し、人目の付かない茂みの中へと隠れた。



「ハル氏、Axel(アクセル)を起動なさるので?」


「うん。ちょっと様子を見てこようかと。」


「じ、じゃあ僕らはその間の見張り、だね。」


「悪いけど任せたよ。起こす時は適当に叩いてくれ。」



 そう言って、俺は校外学習前に予め森の中に潜ませておいたAxel(アクセル)へと憑依し、戦闘班が進んでいた森の中へと駆け抜けさせた。

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