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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第2章 【人形師】
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第11話 Axel 01

 学校での生活は大変だけども楽しい。


 何より、親友のアキとトーヤもいるからだ。



 さすがにこの世界には俺たちの好きな娯楽は無いが、それでも何かと楽しみを見つけるのが人間というものなんだろう。


 今は、とある計画に夢中だ。



 勉強に関しては着いていくのがやっとだ。


 今までは初歩的な国語や算数、歴史や体育といったものだったのが、急激に難易度が上昇したせいだ。



 特待生とはいえ単位を落とす訳にはいかず、俺は必死に勉強した。



 それだけじゃなく、師匠から課された日課も1日たりとも欠かしたことは無い。



 入学してからしばらく経つが、御堂の影どころか噂すらも聞こえては来なかった。


 ただ、ラインハート先生から俺たちに通達があった。


 『俺たちと同じ転生者が、殺人を犯した』と。


 白骨化した死体は御堂の転生先の両親で間違いないとの事だ。


 しかも、調査の結果、死後から既に6年は経過しているそうだ。



 ……6年前……というと、10歳。



 アイツはおそらく、自分のジョブを知った後に両親を殺したってことだ。


 ここまで発覚が遅れたのは、御堂の家は俺よりも更に田舎にあり、自給自足で生活していたからだそうだ。


 『転生者』だということは伏せられてはいるが、御堂は国内で重要指名手配犯として捜査が行われているそう。



 この話を聞いて安堵したのか、今では緊張感を感じなくなっている。




 そして、入学から2ヶ月。



 初めての試験が近づいている。


 試験は筆記試験のみ。


 この一週間は試験のために午前中で授業が終わる。



 俺はアキとトーヤの3人で試験のために勉強会を開いて対策していた。



 試験が終わる頃には皆ヘトヘトになってたけど、アリシアさんやリュゼ、ルイスさんは普段と変わらない様子だ。


 やっぱりこっちの世界でも優秀ってわけか。



 それと、この世界でも成績がボードに張り出され、そこには試験の点数の順位表が書かれていた。


 1年生総勢165名。


 その中で、アリシアさんはこっちの世界でも堂々の1位だ。


 さすがです!!


 んでもって、2位にはリュゼ。


 3位に僅差でルイスさん。



 ……俺は……と………あった。


 俺は58位か。


 パッとしない順位だな。



 結構頑張ったのにこの順位か……



 アキとトーヤは俺よりも成績は良かった。



 この頃には、クラス内で御堂のことは皆完全に忘れているようだった。



 試験の1週間後にはイベントの校外学習がある。


 この校外学習ではエルミリア王国騎士団の方々の演習を見せてもらったり、簡単な討伐クエストに同行し、その実力や凄さを見せてくれるイベントらしい。


 さらには、希望者が居れば騎士団と模擬戦も行えるとか。




 その頃、巷ではとある噂が立っていた。



 なんでも、魔物に襲われて死にそうだったところ、黒いコートを着た何者かに助けられた、とか。


 他には、暴漢に襲われた少女が、黒の服を着た人があっという間に暴漢どもをねじ伏せた、だの。



 噂が噂を呼び、その者は『黒衣(こくえ)の騎士』として市民の間で名付けられた。


 騎士団に問い合わせがあったものの、該当者はいないとのことで、黒衣の騎士の正体は分からずも、名を名乗らず、報酬も受け取らないその黒衣の騎士を皆は英雄として持て囃した。



 俺はその正体を知っている。



 何を隠そう、その黒衣の騎士は俺が操っている人形のことだからだ。



 俺は入学早々、アキとトーヤの協力の元、とある計画を立てていた。


 その計画こそが、今回の黒衣の騎士だ。



 前まで使用していたぬいぐるみの人形では限界があった。


 そこで、ロボットとは言わないが、鉄製の人形が欲しかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…ふむ……つまりは、動力機構は不要であるが、手足などの関節が一対になっている人形が欲しい、と。」


「あぁ。憑依が終われば手足が欠損してもしばらく動くけど、憑依前だとダメなんだ。」


「いいねいいね!!で、ど、どどどんな人形作る!?」


「トーヤ氏、落ち着いてくだされ。まずは自分が設計図を書いてみましょう。」



 アキは【設計士(デザイナー)】のジョブにより、紙に緻密な人形を描いた。


 ロボットの関節を作る際、1つの関節だけだと装甲が干渉して可動域が(せば)まる。


 この問題を解決するには、装甲を柔らかい物にするか、もしくは二重関節を組み込まなければならない。


 そこで、アキはまず骨組みに二重関節の機構を肘や膝関節に組み込み、関節を曲げる際には装甲も動く仕組みを考えた。


 と言っても、これは日本のロボットプラモデルの仕組みそのまんまだと言う。


 各種兵装については、両腕に仕込んだ剣。


 アキは銃も持たせたいと言っていたが、地球で使われているような弾薬には無煙火薬と雷管が必要なので、今は保留となった。


 予備のナイフは太ももの内部に仕込んであり、ボタンを押すとナイフが飛び出してくる機構だ。



「どうですかな?」


「……すごい……としか言いようが無いけど……そもそもこれ、トーヤに作れるのか?」


「ま、任せて。僕のジョブ【鍛冶師(ブラックスミス)】なら朝飯前だよ。ただ、材料が居るけど……」


「材料なら多分これで足りるかな。」



 俺は今までギルドのクエスト報酬で貯めてきた金を出した。


 さっそく鉄を購入し、トーヤの家へとお邪魔した。



 トーヤの家は………マジでデカかった……



 庭は凄く手入れされており、そこかしこに意匠を凝らした石像が立っている。


 部屋は50個くらいはあるそうで、使用人の数も沢山おり、帰ってきたトーヤを一斉にお出迎えしてた。


 俺たちの大量の手荷物を見てブランドン氏は怪訝な表情を浮かべていたが、説明すると分かってくれたようで、逆に鉄を買いに行くなら使用人を使え、とまで言われた。


 いやいや、さすがに人様の使用人まで使わせて貰う訳にはいかないって。



 50個くらいある部屋の中、トーヤの両親はトーヤのためにと鍛冶場まで拵えてくれていたようだ。



 さっそく鍛冶場での作業を見せてもらった。



 トーヤの手捌きは見事なものだ。


 地球で、鍛冶の動画を見たこともあった。


 通常『鍛冶』と言えば、鉄を高温で柔らかくして叩いて整形する。


 トーヤも鉄を熱するところまでは同じだが、鍛冶ハンマーでひと叩きするだけで目的の形状へと鉄が変化した。


 同じ要領で各部パーツをどんどん拵えていき、組み上げる。


 普通なら旋盤が必要なパーツでも、トーヤは正確に作り上げていて驚いた。



 3日もすればついに人形が完成し、その出来栄えにはトーヤの両親も感嘆としていた。



「……それで、アルフィード君のジョブでこれを動かせるというわけかね?」


「はい。」



 ブランドン氏は興味津々の様子だ。



  俺はさっそくジョブを発動させ、人形へと意識を憑依させる。


 すると見事に人形は動き出し、その場にいた皆は歓声をあげた。



 俺は一通りの動きを再現して確認したが、ぬいぐるみとは比べ物にならない。


 体を捻ったり、動きに緩急を付けるにも、この人形だとスムーズに動く。


 そして、人形を動かしてみて分かった事が幾つかある。



 【人形師(マリオネイター)】で動かした人形は、実際の俺よりも格段にパワーもスピードも兼ね備えている。


 いくら師匠に鍛えてもらったとはいえ、人間の俺でだとさすがにここまで動けない。


 それと、ジョブの熟練度が4になった時に、より繊細な動きができそうな感じがするってやつ。


 今はこの人形に指が加えられたお陰で、針仕事もできるぞ!


 ……ってのは冗談だ。


 いや、冗談ってほどでもないが、指での細かい作業が出来ることに変わりは無い。


 もし本当に銃があれば、精密な射撃も行えるだろう。



 ただ、何点か気になる部分もあった。



「ハル氏、実際に動かしてみて気になった点などございましょうか?」


「……そうだな……長時間動かすと関節が動かしづらくなってるかも。もしかすると摩擦熱かな。あと、足。このままだと滑る。靴を履かせればいけるかな?」


「……ふむふむ……」


「…た、確かにハルの言う通り、関節部がすごい熱だよ。それに、この腹部のシリンダー?の形、ちょっと変形してるかも。」



 そこからは改善に次ぐ改善だ。



 まず関節部の熱についてだが、ブランドン氏が協力してくれた。


 ブランドン氏は自身のツテから鉄よりもさらに耐熱性と耐久性の高い鉱物であるタングステンを仕入れてもらった。


 さすがに全身をタングステンにするほどの量ではないので、重要な部分にのみタングステンを使用する。


 関節部にはベアリングを用いて摩擦熱の発生を抑えた。


 そして足元には靴の他に、万が一脱げた場合、足の裏からスパイクがでるよう仕込んである。



 こうして、俺たちの人形の第1号が完成した。



 俺はさっそく試運転させ、模擬戦としてフォーゼン家の護衛と手合わせをさせてもらったが、結果として圧倒した。


 護衛の力量は申し分ないのだが、人形は人間では成し得ない動きすらも可能にする。


 更にいえば、俺は師匠に鍛えて貰ったのもあるが、そもそも根っからのゲーマーだ。


 やってきたゲームの中には、アクションゲームや格闘ゲームもある。


 それらの経験値が、俺の人形さばきを巧みにしていた。



「…凄まじいな……まさかこれ程までとは……!!」



 ブランドン氏は感動していた。


 いつの世界でも、メカニックなものにワクワクするのは男の性なのだろう。




「ブランドンさん、ご協力ありがとうございます。ただ、材料費についてはもうしばらく待っていただければ……」


「何を言う。私は息子が友達たちとこれ程までに楽しそうにしているのを見れてとても満足している。そんなチンケな費用のことなど、気にする必要も無いぞ。」


「……え、ほ、本当にいいんです……?」


「勿論だ。それに、キミたちとこうして物を作るという楽しみを味わ合わせてくれて、むしろ感謝しているくらいだよ。ハッハッハッ!」



 ブランドン氏は満足そうに笑っていた。



「あ、ありがとうございます!!……ただ、折り入ってお願いがありまして………」


「……む?なんだね?」


「この人形のこと、秘密にしていただければ……と。」


「……ふむ………理由を聞いても?」



 俺はブランドン氏に説明した。


 御堂のことを。



「………なるほど………しかして、キミはこの人形を用いてその御堂とやらと戦うために温存させておくのかね?」


「……いえ、せっかくなので、それまでもっと有効活用させていただきます。」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 という経緯だ。



 正体を……というより、中身がロボットであるのを隠すために甲冑を模した装甲に黒いコートを着せていたが、それが相まって巷で『黒衣の騎士』と名付けられたのだろう。



 一応名前はある。


 その名も『Axel(アクセル) 01(ゼロワン)』。


 名前を考えたのはアキだ。



 俺は完成後、早速ジョブを発動させて夜の街をパトロールさせたり、森の中の魔物を討伐したりしていた。


 ぬいぐるみではC級が限界だったが、AxelだとB級でも余裕だった。


 おそらくA級でもいけるとは思うが、都合よくそんな魔物がいるはずも無かった。



 そんなわけで、Axelの噂を聞いた俺たちは、陰で喜んだりしていた。




 そうして幾日が過ぎ、いよいよ今日は校外学習の日を迎えた。

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