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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第1章 はじまり
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第1話 初恋

 俺の名は形代(かたしろ)春人(はると)。大卒で広告代理店に就職し、今年で社会人3年目の25歳。


 ちなみに、彼女いない歴も25年だ。



 毎日出社し、クソ上司のパワハラに耐え、帰宅してはゲームをするだけ、っていうつまらない男だ。



 自分で言うのもなんなんだが、昔はつまらない男なんかじゃなかった……と思う。




 小学生の頃、俺は人気者だった。


 勉強も出来たし、何よりもサッカーやかけっこではエース。


 まあ、サッカーに関しては地元のクラブチームに早くから在籍していたからってのもあるけど。


 でも、そんな栄光は高学年になるまで。


 転校生が現れ、俺のポジションはあっという間に持っていかれた。


 そいつはスポーツ万能。おまけに顔も良い。


 スポーツにおいては、俺はそいつに全く敵わなかった。


 この時からだろうな。


 俺が、『世の中の天才には凡人は絶対に敵わない』って思い始めたのは。



 それまで厳しくも楽しかったサッカーもあっさり辞め、ゲームの世界にのめり込んだ。



 中学に上がるころには、物静かでゲーム好きな、所謂『陰キャ』の烙印を押されてただろうな。



 中学の頃に、かけがえのない親友と出会った。


 兵頭秋彦と加賀美冬馬(とうま)


 そいつらも俺と同じくゲーム好きな奴らだ。


 と言っても、秋彦はミリオタで、冬馬は恋愛シミュレーションが好きっていう、ちょっとばかり変わった奴らだった。


 でも、俺はそいつらとつるんでいる時間が何より大好きだった。



 勉強に関してはそれなりに出来た方だったもんで、俺たち3人は進学校へと入学できた。



 んで、その高校での入学式の日。



 俺は1人の人間に、生まれて初めて心を奪われた。


 その人の名は桜庭愛梨沙(ありさ)


 彼女は新入生代表として壇上で挨拶をしていたが、何もかもが完璧だった。



 黒く艶やかな髪。凛とした姿勢と表情。モデルのようなスラリと長い足。透き通るように胸に染み渡る声。



 恐らく、これが俺の初恋なんだろうな。



 俺は桜庭さんに少しでも振り向いてもらうべく、勉学に勤しんだ。


 彼女はテストは常に1番。


 学校内でも彼女は誰からも1目置かれている雲の上の存在だ。


 彼女に振り向いてもらうには、テストの点で彼女に勝てば振り向いてもらえるのでは、という虚しいものだ。



 でも、やはりスポーツでもそうであるように、勉学でも要領のいい奴とそうでない奴がいる。


 俺は後者だった。



 テストの順位はジワジワと上がるものの、結局はそれまで。



 寝る間を惜しんで勉強しても、天才には敵わない。



 2年の夏になる頃には俺はすっかり元の鞘に収まり、親友らと好きなゲームやアニメの話をしたりして時間を過ごしていた。



 ただ、その頃。彼女に変な噂が立てられた。



 なんでも、『桜庭は教師を誑かしてカンニングしている』だの、『校長と寝た』だの。


 最低だったのは『桜庭は性病』だ。


 根も葉もない噂ではあるものの、彼女はやがて孤立していった。


 そん時、俺が手を差し伸べるべきだったんだろうけど、出来なかった。


 理由は、誰かも知らない俺なんかが彼女の助けにはなれない。


 それと、俺がこんなタイミングで彼女を助けようとするってことは、俺が変な噂を立てた張本人と思われたくないってとこだ。



 今思うと、クソみたいな自己保身だよな。



 でも、彼女はそんな噂や周囲の目も気にしていなかった。



 ……いや、気にしていたのかも。



 彼女は凛とした表情から、少しばかり冷たい表情をするようになっていた……気がする。


 自分と他人の間に、壁を貼っていたような感じだ。


 3年の時にせっかく同じクラスになれたのに、彼女はいつも孤立していたな。




 それからの俺は……色々あったな。



 fps型の対戦型シューティングゲームで実力を見込まれ、とあるクランに加入。


 大会で優勝すれば、プロゲーマーとして雇ってもらえるほどデカい大会に参加するためだった。



 順調に敵を倒してた所だったが、突然運営者から中止を宣告された。



 『本ゲームにおいて、不正ツールを使用したものがいる。』



 そうアナウンスされ驚いたが、もっと驚いたのは、そのチーターは俺のクランにいた仲間だった。



 当然俺たちのクランは参加資格を剥奪され、1年間の出禁を喰らったよ。



 お陰様で、俺にまで悪評が飛び交った。


 ネットにおいて一度付いた汚名は、もう消すことなんて出来やしない。



 ふざけんじゃねえよクソが。




 その後は、大した目的もなく大学へ行き、卒業し、広告代理店でクソ上司の元で仕事をしてる。




 そんな時に、一通の封筒が送られてきた。



 開けば、高校3年時のクラスの同窓会を行うとのこと。



 正直、行きたいか行きたくないかで言えば、半々くらいだ。


 秋彦や冬馬とは今でもちょくちょく会うから、別に同窓会でも会う必要は無い。


 迷っているのは、桜庭さんと会えるのかどうかが少し気になるってだけ。


 まあ、彼女からすれば俺の事なんて記憶にすら残ってないだろうけど。



 秋彦と冬馬に聞くと、俺が行くなら行くってさ。


 全く、適当な奴らだよ。



 ただ、この案内状、返信先が私書箱宛になっており、名前も『幹事 宛』としか書かれていない。


 幹事が誰かは来てからのお楽しみってことか?



 それはともかくとして、同窓会に出席するべきか悩み、俺はこの事をピースさんに相談した。


 あぁ、ピースさんってのは、ゲーム友達。



 昔、オンラインゲームで野良で偶然出会った人だ。



 ピースさんは初めてやるオンラインゲームでしどろもどろだったのを、俺が何気無しに助けてから、それから一緒にゲームをやるフレンドになった。


 ピースさんはゲーム初心者ではあるものの、俺のアドバイスに真剣に耳を傾け、拙いながらも一生懸命さは伝わってきた。


 色々と聞いて分かったのは、ピースさんは俺と同い年。


 あまり普段からゲームはしないものの、気晴らしにゲームをやり始めていたみたいだった。


 歳の割に冷静で客観的、それでいて今欲しい助言をかけてくれ、最近では俺の方がお世話になってる良き相談相手である。



「ピースさん、お疲れ様です。いきなりなんですが、同窓会の誘いが来たんですけど、、、行った方がいいと思います?」



 気付けば俺はピースさんに向けてDMを送っていた。


 すると早速既読となり、暫くしてから返事が来た。



『カタパルトさん、お疲れ様です。同窓会、行くのが嫌なのでしょうか?』



 カタパルトとは俺のハンドルネームだ。俺の名前、形代春人から『形』と『春』で『カタハル』。そこからミリオタの秋彦がオススメした名前だ。



「嫌ってほどでも無いんですけど、、、俺、友達あんまりいないもんで。。。」



 自分で打ってて情けなくなるな。



「あ、いないって言っても、何人かはいますよ!ただ、そいつらとは今でもちょくちょく会いますし、同窓会で会う必要もないもんで。。。」



 慌てて追加でタイピングして送信。



『それでも迷われてるということは、カタパルトさん的にどなたか会いたい、もしくは気になる人がいる、ということでしょうか?』



 この人、ホントいつも見抜いてくるなぁ。



「そうなんです!でも、その人が来るかも分かりませんし、来たとしても俺の事なんか覚えてくれてすらいないでしょうし。。。」



 全く行きたくない訳じゃない。


 何せ俺の初恋相手だし。


 ただ、その人が来たとしても、もし既に彼氏がいたら?それ以上に、もしも結婚していて、誰かの妻になってたら………



『それでなら、行ってみてはいかがでしょうか?色々とあれやこれやと考えを巡らせるより、実際にご自身の目で確認された方がスッキリするでしょう。

 行かずに後悔するよりも、行って後悔すべきだと、自分はそう思います。』



 ………うん………そう……だよな………



 彼女の姿をもう一度見れるチャンスなんて、これを逃すと一生来ない。



 ……うん……そうだ。



 何をクヨクヨ考えてんだ俺は。



「ですよね!ありがとうございます!!俺、同窓会に行ってみようかと思います!」


『助けになれて良かったです。にしても、カタパルトさんほどゲームで無双できる人が気になる人、自分も少しばかり気になります。』


「ピースさんは俺の事、過大評価しすぎですよ笑」


『そんな事ありません。カタパルトさんは困ってた自分を助けてくれた。実力差がありながら、足でまといの自分でもフレンドとして迎え入れ、一緒に遊んでくれた。

 カタパルトさんは、自分にとって憧れの人です。』



 ………なんて良い人なんだ……ピースさんは………


 この人は、俺が過去にクランメンバーがチート使用をして出禁になったことも知っている。

 というか、俺がピースさんに愚痴ったからだけど。


 その時も『カタパルトさんも被害者だ!』って、一緒に怒ってくれたっけ。



「そう思って頂けて嬉しいです!ピースさんに失望されないよう、これからも精進します!笑」



 さて、話は終わったし、ピースさんとゲームでもやるか。


 ピースさん、テーブルゲームだけはめちゃくちゃ強いんだよな。




『ところで、その気になる人というのは、女性ですか?』



 ……ん?


 ピースさん、そこまで俺の気になる人が気になるのか?



「そうですね。まあ、俺と彼女とでは住む世界が違いすぎて相手にもされてないと思いますけど笑」


『そうですか。』



 ……なんか、なんとなく……不機嫌……っぽい……?


 ……いや、気のせいかな……?



「今日もゲームします?俺、今回はいい作戦考えてるんで!」


『了解です。今回も返り討ちにしてみせます。』



 良かった。いつものピースさんだ。



 それから俺はオンラインチェスのサイトを開き、夜遅くまでピースさんと遊んでいた。

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