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転生者狩り、成敗す。

 ワシの名前は真黒金蔵(まくろ きんぞう)

 超有名な大物政治家である。


 先日、長年の汚職がバレてマスコミから袋叩きになっておったが……くっくっく、よもやこうも都合の良い話があるとは。

 連日のマスコミの追求に心労で倒れたところに女神と出会ったワシは、異世界転生によって別の世界に来ている。


 こちらの世界でもワシは遺憾なく弁舌の才を発揮し、民意を操作……もとい支持を集めておる。

 今では元の世界以上に酒池肉林の毎日じゃ。

 本当に、あの女神には感謝しておる。

 あのような作り話にコロッと騙されるとはな。


「女神様、弁明させてください! あの金は……仕方なかったんです。

 ワシは自らの財産を投げ売って孤児院を経営しておるのですが、昨今の不況の影響もあって資金が底をつき……」

「まあ! 私ったらとんでもない勘違いを。

 いいですわ。あなたは私の力で異世界へと送って差し上げましょう」


 と、こんな具合だ。

 まったくあのバカ女神には呆れを通り越して笑いが出る。


「ねぇ~ん、パパぁ。お仕事はしなくていいのぉ~?」


 自宅に呼んでおった嬢の1人が、仕事の話を振ってくる。

 女神はワシを異世界転生させる際に、この世界の魔王および魔物たちをなんとかしてほしいと言っていた。

 ワシは女神からもらった『金集め』の能力を活かし、各地から優秀な傭兵を集めて組織し、形だけ魔王討伐に派兵した。

 しかし、今のワシにはもはやなんの関係もない話だ。

 この嬢はどうやら早くパーティをお開きにさせようという魂胆らしいが、そうはいくか!

 今夜はとことん楽しませてもらうぞッ! がっはっははは!


「お楽しみ中のところ失礼します。金蔵様にお目通りを願うものが階下に来ておりますが……」

「放っておけ! ワシは今忙しい! 今日はもう話しかけるな!」


 ワシが怒鳴ると、秘書は素早くお辞儀をして戻っていった。

 フンッ、楽しい気分に水を差しおってからに。


「ねぇ~ん、パパぁ。じゃあドンペリ開けていい~?」

「しょうがないのう。いくらでも開けるがよい。その代わり、朝まで付き合ってもらうぞッ!」

「やぁ~ん、だめぇ」


 ――バタンッ!

 そのとき、勢いよくドアを開ける音がした。

 ドアの方に振り返ると、目付きの鋭い刃物を持った男が立っていた。


「な、何者じゃ!?」

「……ったく、女神に言われて来てみればとんだ悪党じゃねえか! あの女神の頭はどうなってんだ?」

「ええい、ここを誰の屋敷と心得る! 衛兵を呼べ!」

「お前が真黒金蔵……だよな。お前の転生者としての蛮行は目に余る。よって女神ノルンに代わって成敗するッ!」


 男はワシめがけて飛び上がり、襲いかかる。

 ワシは咄嗟に嬢を盾にした。


「卑劣な野郎だ。だが、無意味だ」

「……へっ?」


 男は持っていた刃物で、嬢ごとワシを刺し貫いた。


「強制送還ッ!」


 男がそう叫ぶと、ワシの目の前は真っ白な光りに包まれた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 奴の刃物で刺し貫かれた瞬間、ワシの前にはさっきまでとは違う光景が広がっていた。

 周りには人、人、人――――。


「えっ? ここは……」

「今、真黒金蔵大臣が姿を現しました! 大臣、今のお気持ちを一言!」

「消えた4億円はどこにいったんですか!?」

「国民への説明責任を!」

「「「真黒大臣!!」」」

「う、うおぉぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」


 ワシは報道陣にもみくちゃにされ、頭が真っ白になった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「俺が持つ女神の秘剣ミストルティンは転生者にのみその力を発揮する。……成敗、完了ッ!」


 俺の名前は土方斬魔(ひじかた ざんま)

 女神ノルンに頼まれて不埒な転生者を元の世界に送り返している。

 巷では『転生者狩り』と呼ばれている。


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