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第7話 alone

 結局村の少年と話せずにいた少女は、誰にも会わないように隠れてながらエルと村の様子を見ていた。


 この日、屋敷に帰って何やら考え込んでいた。

「あの男の子達、剣術とか格闘技かな?稽古してたよね?私も出来た方がいいかな?エリスティアお嬢様に反撃…しちゃ……ダメか…。でも何かあったらエルは私が護るからね!大丈夫だよ!」


 いつもゴミ扱いしバカにしてくるエリスティアに何も言えずにいた。口答えした場合、面倒なことになるのは目に見えるので、黙ったままが一番であると理解していた。それは別として、自己防衛手段があるに超したことはない。


「いざって時に護身術出来たら助かるよね?よし、やってみよう!」


 やると決めた少女はこの日から見よう見まねの特訓を始めた。

「エルの手足だと相手にならないよね?」

イヌの前足ではさすがに組み手は無理。一緒に出来そうなからなるべくエルとやりたかった。

「エルは側で見てくれるだけでいいよ。後で今日読んだ本の内容教えるね」

一緒に出来ないのが残念だったのか、ちょっとふて腐れているエルに笑顔で声をかけた。



 それからの少女は屋敷の厨房で食糧調達、エリスティアの授業観察、護身術の特訓が日々の日課になった。エリスティアが自分を探している時は、嫌々だが付き合っている。

 屋敷の人達に存在を忘れられた少女が何をしてようが、もはや関係なかった。少女も屋敷の人達のことをもう気にしてはいなかった。毎日エルと話して遊んで、楽しく過ごしていた。





 体を動かす事の増えた少女は空腹を感じる日が増えていった。そんなある日、エルが食べ物を受け取らなかった。

「エル、どうしたの?私にくれるの?私、そんなにお腹空いてないから平気だよ?」

少女の大丈夫と平気は絶対に違うと分かり始めたエルは、頑なに少女からパンを受け取ろうとしない。

「沢山あれば分けてもお腹いっぱい食べられるよね?…………そうだ、狩りに行こう!上手く行けばいっぱい食べられる!」

名案を思い付いた少女はやる気と気合充分だ。人と関わらない事に関しての行動の速い少女は狩りに行く気だ。

「猟場は確か…お屋敷の裏山だったかな?」



 天気のよく晴れた日、朝から少女は裏山の探索を始めた。

「そうだった……狩りのやり方考えてなかった、あと道具が無いね。今日は…下見だ。うん、下見だ下見」

 少女は行き当たりばったりできたので、何も準備していなかった事に気がついた。そこで、魔法で何か作れないかと手の平に魔力を込めた。するとキラキラ光る透明な宝石で出来たナイフが作れた。そのナイフの見た目と材質はいつも少女を守る何かに似ていた。だが少女はそのことに気づいていない。

「切れるのかな?」

辺りの枝でナイフの試し切りしてみると、スパッと良く切れた。

「いい感じかも!エル、なんかいいの出来たよ。他にも出来そうだね」

少女は思い付くままに造りだした。弓矢、槍、剣、盾の武器から鳥、犬、馬、山羊等の動物を造ってみた。どれも透明なガラス細工のような物であった。

「こういうの家に飾るとキレイだよね。エリスティアお嬢様好きそうだね」

貴族が好きそうな調度品に思えて、そこから連想するのはエリスティアで少女はゲンナリした。

「色々出来そう…。だったら……火。火、出したいよね」

 魔法で火が出せると暖を取ったり料理も出来て便利そうである。少女は燃える炎をイメージし、両手の平に炎を造り出すべく魔力を高めた。出来たのは赤いルビーの様な宝石の置物の炎であった。


──確かに…火だけど……なんか違う。違くないけど、形は火だけどなんか違う、そうじゃない…


 肩をガックリ落とした少女は、「エル、火打ち石探そうか」と探し出した。自分の魔法で火は出ないかもしれないと過ったからだ。

「いろいろ練習だね。狩りの練習、魔法の練習。武器の練習。弓矢とナイフあたりかな?罠もいいよね。あとは獣の捌き方の勉強。やりたい事が増えたね。」

エルの頭を撫でながら、楽しそうに話した。

 それから少女は、食べられそうな木の実、キノコ、葉っぱを見つけては食べて確かめながら歩く。どんな動物がいるかも確認していた。鹿、猪、兎等食用になりそうだなと見ていた。単独行動の動物もいれば親子らしき動物もいる。



──独りでも生きていける、虚しいけどね……

動物にも家族があるのにね……

私には無いの…何でだろうね…

いつも一緒にいてくれてありがとね、エル

エルは家族が欲しくない?

いつまでも私といても幸せにはなれないよ?


 少女が寂しく呟いた。私は大丈夫だよとエルを安心させるように笑顔を作って見せるが、大丈夫では無いと強がっているのが隠せていなかった。

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