第7章:真実
Loe-Frize帝国が滅亡して、その領土を3分割してから早くも半年が経過した。この俺が一国の領主になったのだ。俺ら3陣営は、統合こそしていないが、仲がいいし、領内では内乱も起きていない。この平和の世を、いつまでも謳歌し続けていたかった。
ーー1つ、気掛かりなことがあったのだ。Steam帝国の存在だ。元々この惑星は、全てこの帝国のもので、Steam軍事政権も、Taw-ya-kar独立政府も、亡Loe-Frize帝国も、この帝国から独立したものだったという。
1月に1度、俺らは「会議」と称して食事会を開いた。そこで俺はゼータとアークに聞いた。
「君らはなんで独立しようと思ったのだ?」
「「帝国が気に食わないからだ。」」
一斉に噴き出した。なかなか笑顔を見せないナシュまでもが笑っていた。普段は正反対な2人がこれほどまで息があったのは初めてだった。
「気に食わないってどういうことだ?」
「国民の統制が厳しすぎるんだ。」
「紛らわしければ一発アウトだしぃ。」
「しかも配下の兵の装備は結構良いんだよな。」
「一部の兵は壁を作ったりしてきて厄介だった。」
「それで、俺らは辺境の地に国を作ることになったんだ。」
「皇帝に通告したら意外にもOKされちゃったんだけどね。多分ここが過疎地域だし、開拓でもさせてやろうとでも思っていたんじゃないかな。」
ーーこの2人、息があいすぎだろ。1人で話しているかと思えるほどだ。
「で、問題なのが、この世界を維持するために必要なエネルギーが少しずつ失われている。...というか、奪われていることなんだ。」
「俺らはこれを止めたい。」
「"誰が"エネルギーを?」
「いい着眼点だね。追究している段階ではあるけど、恐らく国家全体が奪っているわけじゃないみたいだ。Steam帝国の皇帝かその側近だね。少なくとも、宮廷の周辺で大量のエネルギーが移動している。」
「なるほど?で、それはどうして問題なんだ?」
「現段階の予測では、このままでは100年も持たないうちにこの星が崩壊してしまう、ということだ。あくまでも予測の域を出ないけど。」
「それは大変だな。まぁ、予測というんだからまだ確証はないんだろう?」
「もちろん。可能性でしかないから、気にすることもないし、公表もしていない。」
「じゃあ、この際Steam帝国に、これを口実として宣戦布告してみるか?"開拓させる"ために認めたのであれば、豊かになりつつある今、向こうから襲ってくる可能性もゼロじゃないだろ?」
「手ごわい相手ではあるが、可能ではあるやもしれんな。」
静かにしていたクロッサスが急に口を開いた。
「5年前に我が村がLoe-Frize帝国に滅ぼされたのは知っていよう。我は、Loe-Frizeを滅ぼした帰りに訪れたのだが、その時に一つ、不審な物を見つけたのだ。」
そう言って、機内から筒のようなものを取り出した。側面が錆びて穴が開いている。
「これだ。この前の戦いで使われたのを見なかったことを考えると、これは明らかにLoe-Frize帝国のものではない。だが...Steam帝国の兵士はあの地にいなかったはずだ。」
「ってことは...Loe-Frize帝国の"お抱え盗賊団"を一掃するために、村ごと焼き払ったのだろうな。」
「Loe-Frizeの奴らによる被害は免れたけどってところか。」
「それでも村を破壊しつくしたのには間違いがない。」
「これが誰の仕業だと思うか?」
「消去法で考えるならSteam帝国じゃないか?」
言葉が飛び交う。クロッサスの右隣に座っていた、Taw-ya-kar独立政府の新しい幹部、マーキー・ファイヤーがクロッサスに耳打ちをした。
「ん?君、それを見せてくれないか?」
「あぁ。分かった。」
「あ、これ、Steam帝国が5年前に発明した地雷だね。爆薬は容器の劣化とともに流出したみたいだね。」
「じゃあ、Steamの連中は新兵器を試すために焼き尽くしたということになるな。」
「統制の厳しさ、エネルギーの窃盗、軍国主義...。」
「止めない手はないな。」
「では、我ら3か国連合は、Steam帝国に宣戦布告をしよう!それでいいな?」
「「「「「「「「「「あぁ!」」」」」」」」」」
ーー革命は終わっていない。むしろ始まったばかりだ。もちろん敵はLoe-Frize帝国より強力だ。でも、この仲間となら...!