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第一章 第85話 幕間 一般兵士【ゲイリー】の物語⑦

  ◇◇◇【ゲイリー】の物語⑦◇◇◇



 【魔人ブレスト】の件は俺達がどうこう出来る話しでは無いので、上層部に任せるとして、俺達は残存する王国の占領軍を捕虜にして、全員を武装解除した後に大きな空き倉庫3つに押し込んで、尋問と今後の扱いの説明を開始した。


 その間に、公国の首都民達へ俺達は王国の占領軍を駆逐して、公国を解放した事を大大的に広報して行った。

 当初は、一年近く王国に占領されて来た事で、公国民は解放された事が信じられなかったらしく、おっかなびっくりで街路に出て来たが、俺達の軍隊が渡して行く布告文やテルミス城の前で、雄々しく立つ【オリュンピアス公国】の象徴でもある守護機士【アテナス】を見て、驚愕しながらも徐々に信じ始めて来て、歓声を上げながら民衆は周り近所を誘い合わせて、大勢でテルミス城前の大広場に集合し始めた。


 その民衆達の前に、テルミス城の城門前に立つ守護機士【アテナス】が堂々と立ち、テルミス城の上階に張り出したテラスの上に立つ、【紅の公女将軍】の正装をした【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下と、両脇に立つ【リンナ・オリュンピアス】そして【リンネ・オリュンピアス】の双子姫、その後方でヴァン親衛隊隊長とカイル副団長が控えている。


 俺達も、警備と武威を見せる為に【PSパワードスーツ】に乗って、周囲を警戒しながら公国民を観察していると、当初は怯えていてまるでやる気の無さそうだったが、徐々に自分達が王国の占領軍から解放された事が理解出来たらしく、目を輝かしてテラスの上に立つ、【紅の公女将軍】の正装をした【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下と周辺の人々に注目し始めた。


 そして【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下の演説が佳境に入り、殿下が空を指し示しそれに併せて、隠蔽インビジブルモードで城の上空を滞空させていた【大型揚陸艦】が、隠蔽インビジブルモードを切って、その巨大な姿を現した!


 その余りの巨大さに、公国民が色めき立って騒ぎ出したが、続く殿下の演説に落ち着きを取り戻し、殿下が頭を下げて公国民にベネチアンへの疎開を願い出ると、公国民の中でも若い人々が先ず声を出し始めた。


  「俺は、【紅の公女将軍】を信じるぜ!

 だってよお、このまま此処に残れば、碌な事がねえのは判り切ってるじゃねえか!

 そんな未来が無い場所より、新しい土地でやり直そうじゃねえか!」


 「そうね、あたいもこれ以上王国軍のクソッタレにビクビクするより、ベネチアンで一稼ぎしたいわ!」


 「私も公女様に付いて行くわ!」


 「僕も、付いて行きたい!」


 そんな若者達の声を受けて、年配の人々も声を上げた。


 「・・・そうだな・・・、未来の無い老人の我々よりも、子供や孫たちに明るい未来を残すべきだろうな・・・」


 「わたしゃ、孫たちの明るい笑顔を一緒に見たいから、迷惑だろうけど船に乗せて貰いましょうかね!」


 「そんなことより、わしゃあベネチアンとやらに行って見たいわい! 何でも海が近くにあるそうじゃないか!

  一度で良いから海とやらを拝みたいわい!」


 そんな公国民の声を聞いて、俺は自分達のしている軍事行動が、人々の希望を掻き立てた現実に、非常に誇りが持てた。



◆◆◆◆◆◆



 其処からは非常に忙しかった・・・。


 先ず公国民の殆どは、引っ越した経験の無い人々だったので、財産の類も殆どが固定資産に類する物だったので、ヴァン親衛隊隊長の所有する【星人ほしびと】の超技術である【亜空間スペース】の出番である。


 従来の魔法による【亜空間収納】では、精々2メートル4方の物体までしか収納出来なかったが、【亜空間スペース】ならば僅か5センチ程度のボックスに20メートル4方の物体が収納出来る。


 つまり、事実上、家そのものを収納出来るので搬送の為の荷造りが必要無く、皆、手荷物一つなく【大型揚陸艦】に乗り込んで行く事が出来て、なんだか公国民全員を団体旅行に連れて行っているかのような気分になりそうだ。


 そんな気分もいざベネチアンの郊外の空き地に着いたら、忙しくて大変だった。


 先ず、初めての公国民疎開組なので、500人だけの半分試験的な疎開で、一旦は、更地になっている空き地に【亜空間スペース】に収納させていた家を出して、取り敢えず必要な荷物を取り出してから、もう一度【亜空間スペース】に家を収納させて、準備されていた高層住宅群に入居して行った。


 ただ、急いでインフラ整備しながらの高層住宅建築なので、未だに十分な数は出来ておらず、重機がそこら中で動いている。


 まだ重機や人形パペットに慣れていない、公国民の安全と色々な案内を受けさせる為に、俺達親衛隊員も借り出されていて、不慣れな交通案内や入って来る物資の搬送まで手伝わされる羽目になった。


 だが、この凄まじいまでの喧騒に満ちた状況は、嘗てのベネチアンには望みようも無いもので、其の事を考えると今の騒々しい賑わいは、俺達の望みそのものだったと言って良いだろう・・・。


 つくづく主君の【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下とヴァン親衛隊隊長には、感謝してもしきれない思いだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 時々、読めない漢字をググりながら、異世界特有のイベントリィ(亜空間~)で物資を運んで、、しかし、設定魔ですよね。どっかのラノベの至高の恩方(ナ〇ラ)さんみたいな(笑)
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