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第一章 第84話 幕間 一般兵士【ゲイリー】の物語⑥

 ◇◇◇【ゲイリー】の物語⑥◇◇◇


 余りにも信じ難い事をなした男は、よくよく見ると奇妙な服を着ている。


 俺達がパイロットスーツの下に着ているインナースーツに似ていて、ピッチリと肌に張り付いた服で、身体を動かすのに特化した様な服である。


 その男の様子を俺達は窺っていると、突然ヴァン親衛隊隊長が乗られていた特別機体の【PSパワードスーツ】から降りてきて、奴と対峙した。


 そのヴァン親衛隊隊長の行動に、当然ながら【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下は狼狽えた様子で、ヴァン親衛隊隊長の行動を止めさせようと訴えた。


  「ヴァン! 何で【【PSパワードスーツ】から降りたの?!

 その男が異常だとは、センサーで判っている筈よ! 直ぐに【PSパワードスーツ】に戻って!」


 奴の危険性を伝える【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下に、ヴァン親衛隊隊長は落ち着いて答えた。


 「・・・いや、攻撃目標として人間サイズは、元々【PSパワードスーツ】には不向きな存在だ!

 それに無手の相手に重武装の【PSパワードスーツ】で挑むのは、俺の矜持が許さない!

 まあ、奴の相手は俺がするので、城の制圧は【白虎軍団】に任せるから、アンジーは守護機士【アテナス】で他の邪魔者の警戒等をしていてくれ!」


 その様子を見ながら、奴は馬鹿にした様子を崩さずにいて、俺達を遠巻きにしながら城の制圧に向かおうとしている【白虎軍団】の軍人達の前に、瞬間移動したかの様に移動した!


  (は、速すぎる!)


 そう心の中で呻きながら、ヴァン親衛隊隊長も奴と遜色ない程の瞬間移動をして、奴が【白虎軍団】の軍人に手刀を放とうとしている前に飛び込んで、【白虎軍団】の軍人を抱え込みながら奴の手刀に向けて廻し蹴りを放つ!


 ドガッ! ドカカッ!


 【白虎軍団】の軍人を他の者に放り投げて、ヴァン親衛隊隊長は廻し蹴りの回転を殺さずに二段蹴りを放ったのだが、奴に簡単に弾かれてしまい地面を転がりながら体勢を整えて、【騎馬立ちの構え】を取った。


 ヴァン親衛隊隊長の構えを見ながら、奴は不審そうに首を捻り声を上げた。


 「何故だ?! 何故あの距離を一瞬で詰めれたのだ?

 然も、魔力を一切使用せずにそんな蹴りを放てるんだ?

 それに、今でも闘気は感じるのに魔力を感じないのは何故なんだ?」


 奴は訝しみながら、ヴァン親衛隊隊長を警戒し始めて漸く本気で構えを見せ、ヴァン親衛隊隊長も【騎馬立ちの構え】を変えて【三戦立ち】をとって、相手の攻撃を受けて反撃をする事にした。


 其処からは、凄まじいの一言に尽きる程の激闘が始まる!


 俺達には残像しか捉えられないが、土煙が立ち込める中、とても人の格闘で起こり得ない激突音が周囲に響き渡る。


 ドドドドッ、ガカカカカッ、ゴガガガガガッ!


 (・・・信じがたいレベルの攻防だ! とても人の領域の戦闘とは思えない・・・。

 ヴァン親衛隊隊長も凄まじいが、奴も凄まじ過ぎるレベルの戦闘で、誰も援護にも入れない!)


 何時でも介入して援護しようと思うのだが、とてもでは無いがヴァン親衛隊隊長の迷惑にならずに、援護出来る自信が無いので、結果的にただ見つめている事しか俺達は出来ないでいた。


  暫くの間、奴とヴァン親衛隊隊長の高速戦闘が続いていたが、城内を制圧したらしい【白虎軍団】が城の前に出てきて大声で報告して来た。


 「報告します! 【テルミス城】の制圧は完了しました!

 内部には殆ど人間は居らず、数人の者が食事の用意と清掃をしていただけの様でした!」


 その返事を聞きながらも、奴とヴァン親衛隊隊長の高速戦闘は続いて行き、決め手を双方与えられないまま、やがてどちらともなく戦闘を止めて睨み合った。


 「・・・本当に愉しい、愉しくて仕方無いが・・・、これ以上は城を奪われたのに居座る訳にも行かないな・・・。

 大体、私の気紛れで此の城には居座って居ただけだし、そろそろ仕事をしなければ【ソロモン】に怒られてしまう。

 ヴァンよ! 些か残念ではあるが、此の勝負は次回に持ち越しだ!

 何れ、最初から本気で勝負する機会は必ず有る! それまでは他の者に負けるなよ!」


 そう言い放つと、【ブレスト】は背中からコウモリの翼を生やして、空中に飛び上がった!


 「ヴァンよ、忘れるな! 貴様を討つのは此の【魔人ブレスト】だと言う事を!」


 そして【魔人ブレスト】は、大きくコウモリの翼を羽ばたかせて、俺を含む全員が呆気にとられる中、一気に王国の方角に飛んで行った。


 残されたヴァン親衛隊隊長と俺達全員は呆然としながらも、此の戦争が実は単なる人間同士の諍いでは無い事を、感じざるを得なくなっていたのであった・・・。

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦闘シーンはありましたが、決着はつかなかったんですね。次回の布石用ですかね。それとも、新たなる必殺技を用意して、、修行シーンとか、、どうなるか楽しみにしています。
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