表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/620

第一章 第81話 幕間 一般兵士【ゲイリー】の物語③

 ◇◇◇【ゲイリー】の物語③◇◇◇


 傭兵団【鋼の剣】を引き連れた、【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下と、親衛隊隊長【ヴァン・ヴォルフィード】殿が来られてから、今迄の非常に強力な存在に見えたベネチアン侯爵達の支配体制は、アッサリと崩れ去った・・・。


 そして【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下と親衛隊隊長【ヴァン・ヴォルフィード】殿の指導の元で、あれよあれよと言う間にベネチアンは激変していった!


 次々と布告される此れからのベネチアンを良くする為の施策は、特に税制面での緩和策とインフラ整備によって、ベネチアン全体に燻っていた陰鬱な雰囲気が、まるで嘘の様に吹き飛ばされてしまい、一気に大盛況な好景気がベネチアン全体を覆って行った!


 先ず、全ての業種が好景気なので、商店では物が飛ぶように売れて行くし、食事処は客が途切れる事が無いので直ぐに材料が無くなってしまい、凄まじい量の発注が農家や漁師のギルドに注文されて、ベネチアン全体の経済が唸りを上げて廻って行く。


 そんな好景気に湧く街中から離れた元兵站基地の有った場所に、俺や同僚達は例の傭兵団【鋼の剣】所属していて俺達に、協力を求めた人物に案内されて集められた。


 「いやー、大変遅くなって済まなかった! 俺が【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下の親衛隊隊長【ヴァン・ヴォルフィード】と云う者だよ!」


 そう言って、驚いた事にヴァン殿は簡単に頭を下げて謝って来た。


 俺や同僚達は、そのヴァン殿の行動に面食らってしまい、二の句が継げなくなっていると、俺達を案内して来た男が可笑しそうに顔を緩ませながら、俺達に話しかけて来た。


 「君達が戸惑うのはもっともだが、ヴァン殿は非常に気さくな方でざっくばらんな物言いを好む方なんだよ!

 然も、身分等で人を見下す事を非常に忌み嫌う方なので、礼儀が必要な時以外は平等に接してくれるよ」


 と今迄のベネチアンでは、有り得ない事を説明してくれた。


 最初は慣れなかったが、徐々にヴァン殿と会話して行くと、非常に話し易くて俺達の思いを汲んでくれる、実に魅力的な人物だと云うことが良く判った。


 そして1時間の会談の後に、ベネチアンの街への帰路についた俺達は、すっかりヴァン殿に魅せられてしまったので、ヴァン殿から提示された幾つかの選択の内、最も訓練が厳しいがヴァン殿と関われる、親衛隊員を志望する事にした。


 そして此の話を、俺の幼馴染であり兄貴が前ベネチアンの【奴隷取り引き】で殺された友人に話し、勧誘する事にした。

 当然、此の非常に素晴らしい話しに友人は乗ってくれて、涙を流して喜んでくれた。


 「今度、ベネチアンの支配者に成られた【アンジェリカ・オリュンピアス】公女殿下には大変感謝しているし、その親衛隊隊長【ヴァン・ヴォルフィード】殿に仕えられるとは望外の喜びだよ!

 御二方のお陰で、兄貴の仇だった連中は全てお縄になり、惨めな虜囚生活だそうじゃないか!

 全く有り難い話で、此れからは此の御恩を返して行こうじゃないか!」


 そう言って、友人は母親に許可を貰って俺とともに翌日から親衛隊の屯所に向かった。


 親衛隊を志願した人数は凡そ千人に上り、全員が一旦屯所に有る宿舎に寝泊まりする事になり、その日から、厳しくはあったが非常に充実した訓練の毎日が始まった。


 厳しいカリキュラムはとても厳しいものだったが、充実した医療体制と食事内容により、殆ど脱落者の無いまま基礎訓練の3週間を終了出来た。


 俺達も全員が合格出来た上に、明らかに訓練前より身体つきや運動能力が上がっていることを実感出来て、頑張った甲斐があったと喜び合う。


 そして、基礎訓練を終えた俺達は、それぞれの特性に応じた専門訓練が始まった。


 俺と友人が進んだのは、親衛隊の中でも最精鋭と言われる、【PSパワードスーツ】部隊である。


 此の世界では昔から、インフラ整備や人が行うには問題の有る仕事場では、人形ゴーレムが働いていてそれを操るゴーレム・マスターは重宝されている。


 そのゴーレム・マスターでも、高機能の人形ゴーレムに自ら乗り込み動かす事は、非常に珍しいのだが、此の軍隊では画期的な技術を保有しているので、超高性能の鉄人形ゴーレムである【PSパワードスーツ】が部隊として確立されている。


 その部隊に俺達は入隊し、非常に専門的な訓練を受ける事になった。


 先ず、俺達は様々な座学を受けさせられた。


 座学は、従来のゴーレム・マスターに必要な魔術の教育では無くて、【科学】という新しい学問を学ぶ事から始まったのだ。


 【科学】は非常に複雑ではあるが、一旦、基礎を学ぶと理知的な学問であり、理に適った思考力を養うには向いていて、学べば学ぶほど自分が賢くなって行くのが実感出来た。


 座学を午前中に修めて、午後からは実地訓練で【PSパワードスーツ】の練習機体を乗り回すのがカリキュラムである。


 初日は専用のパイロットスーツと呼ばれる服の寸法合わせと、ヘルメットと呼ばれる高度な甲を与えられて、その使用方法を学んで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いきなり、中世から現代文明へと切り替えるのが、早いですよね。結構、戸惑うと思うんですよ。まぁどっかのコミックでも奇跡という定義を述べてましたね。例えそれが偽りでも、難しいですよ。こうした異世…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ