第一章 第77話 大公国内乱㉓
お陰で公国民の間では、【リンナ】と【リンネ】の双子姫の人気は鰻登りで、グッズ等の売上が凄いと最近オープンさせた【デパート】の担当者から報告を受けたと、ベネチアンの商会ギルドの首領とも言われていた、現在はベネチアンに於ける物流及び商務統括大臣となった【シェヘラザード】から報告された。
【シェヘラザード】は、前ベネチアンの支配者であったベネチアン侯爵と、奴隷取り引きの元締めであった元海軍司令官の【ドライガ】を相手にして、此れまで様々な嫌がらせを受けていたのに、それに対して丁々発止と対応して見せていたのだ。
なので俺とアンジーの様々な政治的要望を伝え、出来れば協力して欲しいと要請すると、自ら意欲的に様々な施策と今後の展望を述べて来たので、物流及び商務統括を担って欲しいと伝え、正式に受任して貰っていたのだ。
彼女は自身の商会を解体した上で、商会の幹部や従業員そして己の直轄の手駒としていた商会ギルド員を、そのまま物流及び商務統括大臣付きの職員にして、組織そのものを無駄無く乗っ取った!
此れが自分の利権等の為なら大問題だが、そもそも昔の貨幣経済ならあり得た話しだが、現在推し進めている仮想通貨を主とする新しい経済システムだと、本当の意味で仮想通貨経済を統括しているのは、母艦【天鳥船】に存在する主幹コンピューターなので、利権が生まれようが無い。
つまり、【シェヘラザード】はあくまでも円滑に組織を運営する為に、自分が鍛えていた人材をそのまま大臣付きに登用したのである。
当然俺とアンジー達も面接しているので問題は一つも無くて、寧ろ良くぞ来てくれたと思う人材だった。
それは、【シェヘラザード】周辺の商会ギルドだけの話しでは無く、他には冒険者ギルド・職人ギルド・人材派遣ギルド・漁業ギルド・傭兵ギルド等の様々な職能ギルドで、やる気のある人材は国家運営に役立つと考え、ドシドシ採用して行き国家の官僚として採用して行った。
お陰で能力は兎も角、やる気のある人材はドンドンと元々ベネチアンに居た住民だけで無く、疎開して来た【オリュンピアス公国】の公国民も応募して来たので、かなりの人数が国の職員として登録されて行った・・・。
正直な処、実際の国家運営には応募して来た人材には、現在な処期待していない。
実際に役立つ人材と期待しているのは、新設した【学校】で様々な英才教育を受けている若者や子供達なのだ。
【学校】で様々な英才教育を受けている彼等には、俺が星雲間航行中に母艦【天鳥船】で受けていた【催眠教育】の簡易版を、要所要所で受けさせる予定なので、若者や子供達は此の世界の教育水準を遥かに越えた人材となる筈だ・・・。
そんな事を反芻しながら【シェヘラザード】の報告を聞いていると、国家運営の為に頑張っている住民達だけでは無くて、民力の代表として国としてもかなりの投資をした【デパート】と、幾つもの【リラクゼーション・エリア】では相当な人数の雇用が行われていて、非常に客入りも良くてみんな活気に満ちている様だ。
(・・・今はまだ、家側が民間にも注力して、様々な方向に導かなければならないだろうが、大公国の首都を正常化して大公国内だけでも落ち着けば、もっと国家体制を良く出来るだろう・・・)
そう思いながら、【シェヘラザード】の報告を聞き終わると、隣に座っているアンジーが彼女自身思うことがあったのだろう、俺と一緒に執務室で軽食を食べながら話し掛けてきた。
「ねえ、ヴァン。 後3日で大公国の首都に到達するけど、私達が解放して先程の報告でも聞いた通り、ベネチアンは昔よりもヴァンのお陰で凄く発展して、物凄い活況を呈しているわ!
それに比べて見てよ外を!」
そう言いながら、執務室に備え付けられている大型パネルを起動させて、今迄の首都への進軍で見てきた街道筋の街々の姿を映し出した。
其処には、大公国の首都に近付いて行けば行く程、ドンドンと活気が無くなって行き、昨日過ぎ越した街ではとうとう人通りが全く無くなり、まるでゴーストタウンの様な状況になっている姿が映し出されている・・・。
「ヴァンも見ていた通り、大公国の首都に近付いて行く程に街は寂れて行ったのは、まあ、今の首都の指導部の事を考えれば判らなくは無いけど、人が明らかに減って行って昨日の街ではとうとう人が居ない様だったわ!
余りにも不自然だし、不気味だわ!
きっと首都には何らかの、私には想像もつかない事態が待っている気がしてならないわ・・・」
そのアンジーの言葉を受けて、俺も[ヘルメス]から報告を受けていた事態を反芻し、返事をした。
「・・・アンジー・・・、あまり君には見せたく無かったんだがな・・・。
しかし、やはり秘密にして置くには無理のある話しだったな・・・」
そう言って、俺はある動画を大型パネルに映し出した・・・。
それを観て、アンジーは声を詰まらせながら呟いた。
「こ、これはどういう事なの・・・」
そう言ってアンジーは、呆然と画面を見つめ続けて固まってしまった・・・。