第一章 第70話 大公国内乱⑯
大型揚陸艦に載せた機体は、俺の特別製PSと標準型PS20機にアンジーの乗る守護機士【アテナス】の計22機である。
守護機士【アテナス】は専用キャリアー毎運び入れていて、その専用キャリアーは既にチューンナップを行っていて、防御力強化と攻撃力も付与していて、アンナとミレイがその専用要員となっている。
更に大型揚陸艦の特別室には、アンジーの妹達【リンナ】と【リンネ】も乗船している。
此の2人に関しては、俺達が殆ど全員出掛ける間の安全面を考慮した側面もあるが、本人達の希望で公国の現状を見たいと云う事なので、心情を察して希望を叶えたと云うのが真相でもある。
大型揚陸艦は、隠蔽モードを維持したまま空中を移動している為に、それ程早くは移動出来ないが人目に付かない夜間航空をした為に、一夜の内にベネチアンから公国に移動出来た。
「・・・此れが今の公国の姿・・・」
一夜明けて、公国首都を眼下に見下ろしたアンジー達は、それぞれの思いを胸に声を詰まらせている様子だった・・・。
俺から公国の首都とその周辺の様子を見ても、今までにも【探査ブイ】からの中継画像は見ていたが、直接見るとその非常にうらぶれた雰囲気と、まるで生気を失った様子はカメラを通した画像とは違い、リアルで見ると非常に良くわかった・・・。
その様子を見ながら、俺は自分の昔を回想する。
(・・・俺はまだ赤ん坊だったから、生まれ故郷の星【アース】が滅ぼされる瞬間は、リアルタイムで見る事は出来ず、後でライブラリー動画で観る事は出来た・・・。
その際にアンジー達と同様に、遣る瀬無い気分に陥ったものだった・・・。
だが、俺とは違いまだアンジー達の故郷である公国は存在し、幾らでも取り戻す手段は存在する!
今からその一歩を歩みだすぞ!)
回想しながらもその決意を胸に抱いて、俺はアンジー達に語りかけた。
「・・・アンジー・・・、それにアンナとミレイにリンナとリンネも、ショックなのは良く分かるが、考えてみてくれないか、君達の故郷が非常に元気無く寂れているとは云え、幸いにもそれ程荒れ果てている訳では無いし、人が死にまくって居るわけでも無い!
つまり此の気分が滅入る雰囲気は、人々は王国の圧政の為に未来が見えず、気が晴れる事が無さすぎて、生活に希望が見いだせないから生気が無いだけだ!
ならば、此の状態を一変させる為にも、俺達が行動する事で彼等を導かなければならない!
さあ、作戦通りに行動しよう!」
「そうね、私達が行動する事で、必ず人々は己の境遇を変えるべく行動しだす筈よ!」
「そうですね! 私達は以前と違い王国に対抗できる軍力も国力を、ヴァン様から頂きました!」
「その通りよ! きっと私達の行動を見て、嘗ての同僚や部下達も決起をしてくれるわ!」
「姉様が顔を見せれば、きっと城で働いていた人達も元気になって合流してくれるよ!」
「私もそう思うよ! ああ、早くみんなに会いたいなー!」
とそれぞれが、自分自身に活を入れる様に気合いを入れ直し、俺と共に格納庫に向かった。
格納庫には、既に準備の整った俺の部下である親衛隊が、PS20機を始め様々な戦闘車両に搭乗し、今か今かと出撃命令を待っていて、カイル副団長を始めとした【白虎軍団】500名も己の武装チェックに余念が無い様子だ。
格納庫を上から臨める場所でマイクを取り、アンジーは演説し始めた。
「皆さん、私の故郷、【オリュンピアス公国】の解放の為の作戦を開始します!
此の作戦こそが、大公国に巣食う【フランソワ王国】の手先に対しての手痛い一撃となります!
私は、故郷である【オリュンピアス公国】の解放を成し遂げた後に、大公国首都への電撃作戦を開始します!
皆さんには、大変ご苦労をお掛けしますが、此のスピードこそが悪辣な敵である連中をこれ以上のさばらせない為の作戦なので、尽力をお願いします!」
その演説に格納庫に集合していた軍人全員が、怒号のような歓声が上がる!
「「「オオオオオオオーーー!!」」」
その大歓声を背に、俺はアンジーからマイクを受け取り、親衛隊と【白虎軍団】に作戦の始動を告げる。
「それでは作戦を開始する! 大型揚陸艦が公国の首都を望める高台に着底したら、俺と親衛隊は直ちに王国の占領軍が駐屯する屯所目指して強襲を行い、【白虎軍団】は一気に公国の首都に雪崩込み、予め周知していた重要拠点を占拠せよ!
当然、王国の占領軍は反撃して来るだろうが、一切容赦無く打倒せよ!」
「「「了解!!!」」」
俺の作戦始動の命令を受けて、親衛隊と【白虎軍団】はそれぞれの乗機のエンジンを始動させ、乗機に映る自分の攻撃する場所の最終確認を行って行く。
いよいよ、此の世界の軍隊に対して、俺の持つ科学技術を施した軍隊が戦いを挑む事になる前哨戦が始まろうとしていた。