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第一章 第67話 大公国内乱⑬

 船長室を後にして、俺達は旗艦の甲板上に戻ると10人程の水兵が、縛られていて一箇所に集められて、俺の部下の一人がそれを見張っていて、他の残った水兵は此の海軍の旗艦をベネチアンの軍港に戻すべく、指示を出し合って旗艦の舳先を180度変えて、ゆっくりとではあるがベネチアンの軍港に戻り始めた。


 そんな中、此の船に於いて【ドライガ】の次に階級が上の人物を探したが、2番手の副長は俺が船長室に向かう際に悶絶させた人間の一人で、敵対意志が大きいと判断し、俺は3番手の現在音頭を取って旗艦を操っている水夫長を、臨時の船長にして海軍の旗艦に随伴して来た他の艦船にも、旗艦と同じくベネチアンの軍港に戻れと【手旗信号】を出させて、従わない場合は沈めると脅させた。


 弱冠他の艦船は戸惑っていた様だが、改めて【ドライガ】は我々に拘束され、今後は大公の孫にして【オリュンピアス公国】の【紅の公女将軍】がベネチアンを暫定的に統べる事を説明すると、海軍の軍人達は殆どが困惑しながらも協力する事を約束してくれた。


 暫くの間旗艦に乗っている事になったので、船長室から押収した資料を元に【奴隷取り引き】の実態を、水夫長に知っている限りの事を話して貰った・・・。


 「結局、君達には知らされずに【奴隷取り引き】をしている他国の奴隷商人と、【ドライガ】と副長が主導する形で他国の奴隷商人と取り引きし、その金額的な上がりはベネチアン侯爵に上納していて、場合と要望によっては大公国の指導部に直接奴隷を上納した事も有ると言うことか・・・」


 「その通りです、【ドライガ】と副長は他の者を【奴隷取り引き】に噛ませずに、其処から得られる膨大な利益を独占する事で、【奴隷取り引き】から生まれる利益をチラつかせて海軍を私物化して行き、ベネチアン以外の国でも拠点を持っていたので、ベネチアン侯爵が貴方方に捕らえられた事を知った【ドライガ】と副長は、急いでベネチアン以外の国の拠点に向かい、海軍の艦船毎その国に身売りしようとしてましたよ!」


 「ふ~む、因みにその【奴隷取り引き】をしていて、【ドライガ】と副長が海軍の艦船毎身売りしようとしていた国家とは何処なんだい?」


 「・・・それは、貴方方にとって因縁の国家・・・、王国・・・、【フランソワ王国】です・・・」


 「・・・そうか・・・、何となくそうでは無いかと思っていたが、やはりか・・・」


 「ええ、恐らくは【ドライガ】と副長のベネチアンでの私邸には、ある程度の資料も残っているでしょうから、ベネチアンの軍港に戻りましたら私がご案内しますよ」


 「嗚呼、是非頼む!」


 そう言ってはみたが、実際には時間が掛かり過ぎるので、参謀の【ミケル】に通信機コミュニケーター越しに依頼し、素早く【ドライガ】と副長のベネチアンでの私邸に手勢を派遣して、事実上接収してくれる事を頼んだ。


 結局此の判断が良かったらしく、逃げ出そうとしていた滞在中の【フランソワ王国】の奴隷商人を捕らえる事に成功した様だ。


 参謀の【ミケル】の手勢に、俺と水夫長そして俺の部下達がベネチアンの軍港に着港して、合流してから私邸に踏み込んで、様々な資料を得る事が出来た。


 其れ等を全て纏めてから、ベネチアン城で様々な事務仕事を、アンナとミレイと共に頑張っていたアンジーに、簡潔に説明して上げるとアンジー達は絶句しながら、感想を述べて来た。


 「・・・案の定、我々の大敵である【フランソワ王国】は、他の国と【奴隷取り引き】をする事で、巨万の富を得ているのですね・・・」


 「とすると、我々の故郷である【オリュンピアス公国】の国民も、奴隷として奴隷商人に売られている可能性が高いですね!」


 「そうね、その可能性は非常に高いし、今後アンジェリカ様が表に出られてベネチアンを統べる事を、世界に向かって公表したら当然【フランソワ王国】は、強硬的な態度を取って更に現在占拠している、【オリュンピアス公国】の国民に対して奴隷の身分に落として、【奴隷取り引き】を行いかねないわ!」


 「・・・ヴァン・・・、本当に何時も頑張ってくれている貴方に対して、申し訳が無いのだけど、どうかお願いするわ!

 貴方の【星人ほしびと】としての実力でもって、【オリュンピアス公国】の国民達を守って欲しいの! 物凄く大変なのも判っているし、傲慢な願いなのも判っているけど、私には貴方しか頼れる存在はいないの・・・。

 此の神の御業でしか叶えられない願いの代償なんて想像も出来ないけど、貴方の望む限りの願いを叶えるべく私は努力するから、どうか【オリュンピアス公国】の国民達を救って下さい!」


 そんな事を言い放って、頭を深く下げて俺に願って来たアンジー達を見て、俺はアンジー達に歩み寄って行き、アンジーの前に立つと肩を掴んでゆっくりと頭を上げさせてから、アンジーを柔らかく抱きしめてポンポンと背中を叩いて上げて、俺は宣言した。


 「そんなに深刻にしないで良いよアンジー、今現在もアンジーも知っている母艦【天鳥船アメノトリフネ】が、【探査ブイ】と小型ドローンで【オリュンピアス公国】は徹底的に観察してるし、それに加えて【オリュンピアス公国】の国民達を守れと命令すれば良いだけだよ・・・。

 だけど、それだけでは安心出来ないだろうから、此のベネチアンをある程度統治出来たら、【オリュンピアス公国】に出向いて国民には、一旦、ベネチアンに避難してもらい、何れ国力を整えて大公国を本来の主に取り戻させたら、【オリュンピアス公国】を必ず解放するべく動いて行こうな・・・」


 そう言ってアンジーを安心させようとしたが、アンジーとアンナにミレイはブワッと涙を溢れさせて、アンジーは俺を力強く抱きしめ返して来て、アンナとミレイは共に抱き合って泣いている。


 (彼女達は、今迄も必死に故郷への思いを封じて、何とか頑張って来ていたが、やはり心の奥底では相当に心配して居たんだな・・・)


 そう思い、俺は改めて彼女等に故郷を取り戻させて上げようと、心に誓ったのであった・・・。

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