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第一章 第66話 大公国内乱⑫

 海上をフロートの上に乗り背面の追加推進装置で疾走するPSパワードスーツは、周囲の商船に乗る船員達の驚きに満ちた視線を浴びながら、沖に逃れた海軍の艦隊に向けて突き進んだ!


 当然、それ程目立つPSパワードスーツは、海軍の艦船には当たり前の様に見つかっていて、警告と思われる魔法による攻撃が行われ始めた。


 此処は海上であるが故に、火魔法系統の魔法攻撃が行われているが、警告の為か[2クラス魔法]の 【ファイアー・アロー】が主の様だ。


 「どうやら、警告する事で何とか我々を足留めしたい様だな、外から窺うにまだどの艦船も喫水線よりもかなり浅くしか沈んでいない、つまり我々の行動が早すぎて何の補給もまともには出来なかったのだろうな・・・・。

 然も、甲板を見ても兵員と船員の数が少ないのが見てとれる。

 彼等にしても、此の状況は予想外過ぎて混乱しているのが、本当の処なんだろう」


 そう喋りながら、俺達のPSパワードスーツは予定通りに、俺の機体を含む5機のPSパワードスーツで海軍旗艦に乗り込み、残りのPSパワードスーツは周囲の海域で水上を疾走りながら警戒行動をする事にして、敵の魔法攻撃は当たっても損傷は無いので、適宜対応する事にした。


 明らかに他の艦船よりも、二周りは大きい旗艦はその巨体故に目立っているので、俺達にも直ぐに判別出来たので、俺達は一気に距離を詰めてその甲板上に飛び上がる形で乗り込んだ。


 呆然としている旗艦の甲板上に居る水兵達を無視して、俺と他の4人の部下達はパイロット・スーツのまま甲板に降り立つと、そのまま予め【マゼラン】に教えられている船長室に向かおうとした。


 我に帰った水兵の一人が、「キエエエエッ!」と声を上げて俺に向かって青龍刀で斬り掛かって来たが、俺はそれを難無くいなしてその勢いのまま海に叩き込んでやった。


 「他に俺達に抵抗したい者はいるか?」


 と少し気魄を周囲に放つと、他の水兵達は俺に立ち向かっても無駄だと判断し、次々に武器等の得物を放り出して抵抗しない事を示して来た。


 その連中を管理する為に部下を3人割り当てると、部下を一人だけ伴って俺は旗艦の船室に入り込んで行った。


 ([ヘルメス]、他に俺達に抵抗しそうな奴は、後何人位居る?)


 [そうですね、絶対に敵対するかは判りませんが、後5人程がマスターの進路上に待機して居ますので、警戒しながら進む事をお勧めします]


 (了解だ! 室内戦闘はあまり大技が振るえないので、面倒だがな)


 と脳内で応じて、[ヘルメス]が示してくれた5人の位置表示を確認し、付いて来る一人の部下に敵と思われる人数と、大体の位置を教えた。


 彼も、状況が把握出来た為、返事は頷くだけで終わらせて、俺からある程度の距離を取りながら慎重に歩を進める。


 それに比べると、俺はかなり大胆に大股で進んで行き、次の船室へも警戒もせずにドアを開け放ち進んで行く。


 2つ目の船室のドアを開けると、いきなり剣が頭上から襲い掛かって来たが、判っている攻撃程俺にとっては無意味な物は無い!


 その剣が通り過ぎるのを横目に見ながら、俺の右肘は襲い掛かって来た水兵の左脇腹を貫いていた!


 「グムウウッ」


 と呻きながら、左脇腹を必死な形相で抱え込んでいる水兵を無視して俺は進み、後から来た部下が蹲る水兵を素早く両手の親指同士を針金で強く結んで行った。


 同様の行動を計5回繰り返すと、想定された敵対対象は居なくなり、船長室に残る【ドライガ】のみが敵対対象として残る形となった。


 ある程度探査された船長室のドアをゆっくりと開け放つと、室内から銛撃ち銃で撃ち放った銛が俺の土手っ腹に突き刺さった!


 いや、突き刺さった様に【ドライガ】には見えたのだろう。


 「ハッハッハッハッ! ザマアミロ、まさか船長室に本来は船首に備え付ける、クジラ用の銛撃ち銃が有るとは思わなかっただろう!

 此れは、イザという時の為に最後の手段としてとって置いた俺の切り札だ!

 さて、残りの奴もこの馬鹿と同じ目に合いたく無ければ、甲板上のお前の仲間に言って、俺を大人しく通させて別の船で俺が逃げる事を、見逃す様に説明して来い!」


 と【ドライガ】が俺の部下に指示していたが、俺の部下は呆れた顔をして、くの字になっている俺を見ているだけだった。


 その様子に苛立ったのか、俺の部下に再度指示しようと声を上げそうになったが、その前に俺が屈んでいた上半身を伸ばして来たので、驚きで声を失ったのか声を詰まらせる。


 「・・・中々酷い目に会ったな・・・」


 「そんな風に、アッケラカンとまるで大した事では無いとばかりに立ち上がられると、相手のショックは半端じゃないと思いますよ」


 「いや、結構驚いたよ! まさか此の至近距離で銛が撃たれると、流石に余裕を以っての対処は俺でも難しいよ」


 「そんな事を言っても、信用出来ないですよ! 案の定銛はヴァン様に当たっておらず、脇腹を掠めただけだし、その威力すらもヴァン様が脇で挟んだだけで殺しているじゃないですか!」


 「まあな、中々面白い事態だったので、思わず楽しんでしまったよ」


 「これだもんなー、何時も思いますが、ヴァン様の敵には同情しか無いですよ!」


 そう言いながら、俺の部下は俺から銛を受け取り、銛と反対側の部分を先端にして、【ドライガ】の鳩尾を突きこんだ!


 「ウグッ」


 そう短く呻いて【ドライガ】は悶絶して、そのまま蹲る。


 「お美事! 大分、棒術も理に適った動きで出来る様になったな!」


 「有り難う御座います! まあ、ヴァン様の部下として、そして【紅の公女将軍】の親衛隊員としては、此のくらいは当たり前ですよ!」


 笑い合いながら、俺達は【ドライガ】を肩に担いで船長室を後にしたのだった・・・。

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