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第一章 第57話 大公国内乱③

 いよいよ討伐軍を称している大公国軍凡そ3万人が、国境の街【ドラド】から約50キロメートルの街道筋に陣を張って夜を過ごす様だ。


 「・・・此の距離で陣を張って夜を過ごすとは、悠長な事だ・・・」


 「仕方無いすよ、奴等は未だに昔ながらの戦争の常識に生きているんですから」


 「そうそう、俺等だって此処3ヶ月間の、PSパワードスーツでの戦闘訓練が無ければ、戦場予定の場所から50キロメートル離れてれば、安全距離と判断してますぜ!」


 「それもそうだな、いきなり戦争の常識が200年以上も進んだら、困惑してしまうだろうからな」


 「全くでさあ! 如何に夜間とは云え、此処まで気付かれずに敵陣地に近寄れたのは、PSパワードスーツの駆動音の静粛性による所が大きいですからね! 今から奴等の混乱する姿が目に浮かびますぜ!」


 「俺等も、此の3ヶ月間の戦闘訓練と、PSパワードスーツを始めとした、幾つものヴァン様が提供してくれた、超先進技術で作られた魔導具類のお陰で、常識って奴がかなり変わっちまったからな!

 それを、いきなり喰らう立場の敵である大公国軍は、気の毒でしか無えよ!」


 そんな会話をしていると、準備が整ったらしい部下から報告が上がって来た。


 「報告します! 【魔法榴弾投擲装置】設置完了しました。

 一定数の投射後、直ちに撤収致します!」


 「了解した! 帰りも無灯火での撤収だから、焦らずにゆっくりと帰還せよ!」


 「ハッ! 了解です!」


 そのやり取りを終えると、部下は後方に設置した【魔法榴弾投擲装置】に向かい、最初に投射する照明魔法榴弾を装填する。


 準備が整ったサインが送られて来たので、俺は号令した。


 「照明魔法榴弾、発射!」


 その号令に従い、部下達は照明魔法榴弾を直ちに投射する!


 ヒュルルルルー――。


 と1キロメートルを飛んだ照明魔法榴弾は、見事に大公国軍の陣の上空で爆発して、夜闇を一気に明るくして大公国軍の陣を肉眼でも細かく観察出来る程に浮かび上がらせた。


 「行くぞ!」


 そう命令を発すると部下の乗るPSパワードスーツ5機が、フィーーンといったモーター音を響かせた!

 次の瞬間、俺達合計5機のPSパワードスーツが、整地されていない荒れ地を夜の暗がりの中、俺の乗るPSパワードスーツを先頭に直列で進む!

 整地されていない荒れ地は、ローラーダッシュというPSパワードスーツの足の後方に伸びた車輪を、回転させる推進装置のお陰で、問題無く進んで行く。


 大公国軍の陣にあと100メートルの距離になり、其処から真横に方向を変えて周囲を廻る様にして、PSパワードスーツの手であるマニピュレーターに持たせたバズーカ砲を、PSパワードスーツ全機が発射する。


 ドドドドドォォーーーン!!


 照明魔法榴弾が炸裂して、夜闇が失せた事で困惑していた大公国軍の陣地は、いきなりの攻撃に混乱してしまい陣地内で右往左往し始めた。


 「何だ、何が起こったんだ!」


 「敵の攻撃かっ?!」


 「敵と言っても何処に居るんだよ? 全く見えないぞ!」


 「そもそも此の明るさは照明魔法だろうけど、何でこんなに長く明るいまま何だ?」


 「上空で、一定間隔に爆発しているから、その所為だろ!」


 「それよりもこの攻撃は何だ? 爆発しているが爆裂した様子も無く、攻撃された者達は一様に痺れて動けなくなってるぞ!」


 「もしかして、雷魔法【サンダー】の弱い奴を受けた症状なのか? だが何の為に?」


 「それよりも、此のフィーーンと響く、やけに高い音は何なんだ?」


 「敵は、どうやら陣地の周囲から撃っているみたいだが、姿が見えない上にやたらと早く動いているらしく、撃たれた後に追っても全然追いつけない!」


 そんな様々な声も、ドンドン撃って行き動いている者が見えなくなると、別の場所に移動して同じ事を繰り返す・・・。


 1時間程の間、本来の雷魔法【サンダー】三分の一と麻痺魔法を組み合わせた、複合魔法を封入した魔法石弾を、PSパワードスーツに持たせたバズーカ砲で発射し続けたので、動く者の無くなった陣地は夜とは云え静寂に包まれてしまい、とても3万人の人間が居るとは思えない。


 「良し、作戦終了。 撤収する」


 俺の命令を受けて、全くの無傷で作戦を終えたPSパワードスーツ全機は、フィーーンと云うモーター音を響かせて帰路についた。


 ある程度の距離、敵の陣地から遠ざかると、部下の一人が話して来た。


 「・・・奴等、こんな目に合っても進軍して来ますかねえ・・・」


 「普通ならば、俺達が何故殺傷能力の無い魔法での攻撃を仕掛けたか、意図を読んで進軍せずに退却かその場での駐留をして、大公国の指導部に進退の指示を仰ぐだろうが、恐らく無理矢理の進軍をして来るだろうな・・・」


 「どうしてですかい?」


 「以前の籠城戦を思い返して見ろ、兵士達は戦意を失っていたのに、司令部が攻撃を強行させていた。

 なので、俺が司令部を壊滅させたら、アッサリと兵士達が投降して来ただろう? 恐らく今回も同様な事が起こると俺は想像している」


 「ひでえ話しですね」


 「嗚呼その通りだよ、だからなるべく兵士達を傷つけず、且つ、士気を落としてくれる様にしたのが、今回の作戦だ。 まあ、3時間も麻痺して動けない経験をしたのに、無理やり進軍させられたら戦意も湧きようが無いだろうな」


 「全くですね」


 そんなやり取りをしながら、我々は途中で【魔法榴弾投擲装置】設置班と合流して、帰路についたのであった。

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