第一章 第51話 国境の砦での戦闘⑭ 【アンジェリカ・オリュンピアス】視点
◇◇◇【アンジェリカ・オリュンピアス】視点◇◇◇
ドガガガガガガーーー!!
凄まじい連続する激突音が、木霊しながら周囲の空間を揺らしたの。
ヴァンが、守備兵や傭兵達に超人形と偽って操縦する、強化PSと守護機士【アテナス】が接敵した様ね・・・。
此処に至るまでに、私達は守備兵と傭兵達と共に、あらゆる準備を怠らなかったわ。
◆◆◆30分前◆◆◆
守護機士【アテナス】は上半身を起こすして、下半身をずらしながら専用のキャリアーの横に立ち上がった!
その状態から動かない守護機士【アテナス】に対し、私達は作戦通りに攻撃を開始したわ。
その作戦とは、幾つもの事前に準備して置いた武器と罠で、徹底的に攻撃して注意を砦に向けさせる事。
砦に設置している投石器とカタパルト、そして砦に居る守備兵による遠距離魔法攻撃、そして土中に設置していた幾つかの罠での攻撃で、守護機士【アテナス】の注意を確実に砦に向けさせて、注意深く守護機士【アテナス】の状態を確認して行ったの・・・。
投石器とカタパルトで投擲して、狙い違わずに激突した砲丸と大岩だけど、守護機士【アテナス】は小揺るぎもせずに立っているわ。
次に、遠距離魔法攻撃を各種類に分けて放って行ったの。
すると、守護機士【アテナス】の手前で遠距離魔法攻撃は、雲散霧消してしまい、何の被害も存在しなかった様だわ。
此の事から、一応、守護機士【アテナス】はアンジーの予想通り、基礎防御能力が発動していて、通常の攻撃では何の痛痒も与えられない事実が確認出来て、基本動作も問題無く出来そう。
私達の確認攻撃が終わると、ゆっくりとした動きで、守護機士【アテナス】は身体の胸部に有る外装がスライドして、何やら砲口の様な物が見えて来たわ。
(・・・やはり、使えるのね【ブラスト・キャノン】・・・)
その砲口が段々と赤くなって行き、正視出来ない程になった瞬間、灼熱した様に赤い光線が、砦の壁面に突き刺さったわ!
ドゴゴゴーー、ゴガガガーー!
かなりの防御魔法を幾重にも施していたにも関わらず、砦の壁面は防御魔法を貫かれて、頑丈に作られた壁が一部崩壊してしまう!
幸いな事に、守備兵達が配置されていない箇所の崩壊なので、恐らく人的被害は軽微だろうけど、このまま攻撃され続ければ、被害は拡大し続けてしまい、やがて人的被害も深刻なものになってしまうわ・・・。
同じ判断をしたと思われるヴァンが、伏せていた焼け野原の塹壕から、強化PSパワードスーツを飛び出させて、そのまま光学兵器ブラスターを連射したみたい。
それが冒頭の凄まじい連続する激突音なんだけど、それを視認せずに私達は傭兵達と守備兵の精鋭で構成された約千人程の軍勢で、砦前の戦場から遠くに退避している残存王国軍に対して、予め伏せていた草原から全員支援魔法で強化した身体能力を駆使して、一気に飛び出して早足で移動を開始したの。
どうも、残存王国軍は遥かに離れているのに、空間を揺らす轟音に魂消ているのか、まるで私達の接近に気付いた様子も無いわ。
お陰で先手を問題無く取れるので、私達はヴァンから提供された肩に担ぐ形の武器であるバズーカ砲に、火魔法でも上位の【爆裂魔法】を封入した【魔法石】を装填して、一斉に残存王国軍の少し上空に投射したわ。
バズーカ砲で投射された【爆裂魔法】を封入した【魔法石】は、100メートル程の距離を飛んで残存王国軍の少し上空で爆裂したの。
ズズズズズズンンッ!!
重低音が響き、此方にも衝撃波が襲って来る程の爆裂は、至近距離で喰らった残存王国軍の全員を打ち伏せさせて、完全に彼等の耳目を奪ったわ!
そして撃ち終わったバズーカ砲をその場に捨てて、私達はラング団長の指揮のもと【鋒矢の陣】に陣形を組み替えて、混乱している残存王国軍に襲い掛かったわ。
「吶喊!」
ラング団長の威勢の良い号令の元、私達は残存王国軍の中央目指して、早足で突っ込んで行ったの。
混乱している上に、爆裂魔法で耳目を奪われた残存王国軍は、先の戦いで半数に減っているとは云え、未だに2千人以上は居る筈だから、私達の居る軍勢の2倍以上の兵力を保持しているけど、こんなに混乱していたら軍としては機能出来る筈もない。
まるで薄い紙を破る様に、私達の軍は残存王国軍の中央を引き裂いて行き、中央突破を成功させると、そのまま円運動する様に速力を維持したまま、今度は真横から残存王国軍に突っ込んだの。
私は、今迄も王国軍に仕返しする場面は有ったけど、あくまでも魔法等の遠距離攻撃でしか無くて、直接剣を振るって遣り返す場面は無かったので、今回の戦闘で多いに無念に殺されて来た公国民や、公国の部下達の為に報いれた思いが胸中に溢れてしまい、アンナに指摘されるまで自分が涙を溢れさせていた事に気付かなかったわ・・・。
此の2回の吶喊と、その後の残存王国軍の兵士への個別に狙いを定めた攻撃魔法で、殆どの残存王国軍の兵士は倒れ伏したわ。
勝負が着いたと判断したラング団長が、剣を持つ右手を天に突き上げて、「勝ったぞーーー!」と勝鬨を上げたので、次の瞬間に私含む軍勢全員が勝鬨を上げたの。
「「「おおおーーー!」」」
此れで、ヴァンが守護機士【アテナス】に勝っていれば、私達の完全勝利に近付いた筈なので、私達は残ってくれる守備兵の方々に後始末を頼み、砦前の戦場に向かったわ。