第一章 第45話 国境の砦での戦闘⑧
大公国軍の駐屯地から帰還して、砦の司令部で代官を含めた合同会議を開いた。
代官から、
「どうやら、本当に大公は幽閉されるか拘束されていて、実権は新宰相の【ジャイガーン・オロカノ】の手に握られている様だ。
このままだと、我々は奴等の企みによってすり潰されかねない!
ならば、此の国境での戦闘を切り抜けた後に、幾つかの対策と方針を決めたいと思う。
先ずは、全力で戦い抜き、王国軍を追い返し、大公国軍は首都に撤退させようじゃないか!」
と宣言されたので、俺達全員が頷き合いながら、意志を一つのものとして戦う事を確認した。
幸い、大公国軍が早々に尻尾を見せたので、余計な物資の供給をする必要が無くなったので、十分な物資の備蓄が有るので、数ヶ月は余裕で戦い抜ける。
その事と今後の作戦案を全員で練っていた処、緊急の連絡が拠点から上がって来た。
内容は、どうやら公国つまりアンジー達の故郷である、【オリュンピアス公国】からとんでもなく巨大な荷馬車の様な代物が運び出されて来て、数日中に此の国境の砦に到達するそうだ。
そして、その巨大な荷馬車の様な代物と、積載されている物体の正体の推測が、アンジーとリンナそしてリンネには想像がつくと云う報告も上がって来たのだ。
俺には皆目見当もつかなかったが、アンジーの推測では恐らく、オリュンピアス公国の誇る守護機士【アテナス】であろうと云う事だ。
それを聞いた、守備兵の司令官を始め軍人達は驚愕し、代官は一気に顔を青褪めさせ、ラング団長達も渋い顔をし始めた。
(・・・其処までとんでもない代物なのか・・・)
今迄もアンジー達との情報交換や、色々な会話で守護機士の話しは出ていたが、母艦や探査ブイのセンサーによる探査で、ある程度の位置関係は把握出来ていたが、その能力や実力はセンサーでは判らず、どれ程の存在なのか理解は進んでいなかった。
改めて、詳細な情報を得るべく、センサーの強度を上げて見ると、何と完全に遮断された上に魔力でのバリアーが張られた!
(何だと!)
俺は、此の惑星に来て、初めて驚愕してしまった!
正直な処、此の惑星の科学文明と魔法文明が、総力を上げて立ち向かって来ようとも、俺の持つ超科学と他の惑星で得てきた技術ならば、十分勝てると云う思いが有り、舐めて来たと言って良いだろう・・・。
しかし、此の守護機士【アテナス】と云う存在は、明らかに俺の持つ技術であるマルチセンサーでの最高強度のセンシングを、見事に遮断した上に防御して見せた!
だが、俺の心の内に巻き起こったのは、怒りや焦燥では無くて歓喜である。
(嬉しいぞ、守護機士【アテナス】よ! 伝聞で把握していたが、もしお前が嘗ての【星人】が齎した、人類を守る為の存在であるならば、俺は嘗ての星人に対して挑む形になるだろう。 さあ、俺が持つ技術と武術そして、嘗ての星人が本来守りたかった【人類同胞】を、王国軍が歪ませようとしている現状を、是正してやろうじゃないか!)
俺は新たなる思いの元で決断した、母艦に保存している強化PSを、降下艇に載せて降下させる様に指示した。
此の強化PSは、前に立ち寄った【恐獣惑星】にて有る恐獣を相手にする為に製作した、特別製のPSで有り、そのコンセプトは通常のPSを遥かに超える防御性能と、圧倒的な出力を誇る。
だが、此の強化PSでも、一切の探知を受け付けない守護機士【アテナス】に、対抗できるか微妙な所だ。
なので、母艦からの亜空間を通したエネルギーリンクと、幾つかのオプショナルパーツ、そして外部に取り付けた武装を有効に使用する事で、何とかなるかも知れない。
(・・・此の強化PSは、【恐獣惑星】でも最強クラスの【ギガントサウルス】を倒した俺の愛機だが、守護機士【アテナス】を相手となると、些か心許ないな・・・)
そう思いながら、俺は愛機である強化PSを更に強化するべく、[ヘルメス]に命じて流体金属により関節部分を覆う事としたり、戦場になると思われる砦前の広大な空き地に、【植物惑星】から持ってきた、幾つもの植物の罠を敷設する事にした。
此れ等の事前準備を整えて、俺は戦う事になる守護機士【アテナス】に対して、変な話しだがワクワクとした期待に満ちた思いを抱かずには居られなかった。