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第一章 第42話 国境の砦での戦闘⑤

 王国軍との守備戦を戦った砦の守備兵と傭兵団【鋼の剣】は、警戒の為に常駐する兵士を除いて、街に家の有る者や官舎に寝泊まり出来る者は帰還した。


 改めて、この街に駐在している代官と、今後の方針を話し合う事になった・・・。


 代官は、名前を【ボロビッツ・テムス】と云い30歳の少壮の男である。

 貴族出身だが五男という事で、早々に家を継ぐ事を諦めて、官僚になるべく努力を重ねて来て、首都の大学を次席で卒業する優秀な成績を残し、重要な国境の街の行政官を此の若さで務める程の少壮気鋭な男だ。


 首都に此の街の領主が招集された際に、領主から直々に代官と任命されて、中央から派遣される予定だった代官を追い払っている。

 つまり、領主に任命された事に忠実に従い、動きが怪しい昨今の中央の指令は、領主の指示が無い限り従わないという、理非曲直が非常にしっかりとした豪の官僚だ。


 その事を念頭に我々は話しを進める。


 「代官殿、報告書でご存知だろうが、王国軍は我々との戦闘で半数に及ぶ損害を出して、撤退して行ったのだが、王国には帰還せずに、中途半端な街道筋の場所に駐屯して、此方の様子を窺っている様だ」


 「ふむ、それは私も不自然に思い、王国側から来る行商人や駅馬車郵便の人員に、その様子を聞いてみたのだが、どうも王国の首都への連絡と、どうも鳩を利用した連絡を、大公国の首都と取り合っている様だ。

 つまり、我々の頭越しに現在の大公国の首脳陣と、王国の首脳陣との間で談合が行われていると思われるのだ。

 当然、国同士の戦争である以上は、前線とは別に国のトップ同士の交渉は、有って然るべきだが。

 どう考えても、大公国側は正統なトップである大公が、決定権を持っているとは思われないのに、王国側とやり取りを頻繁にしている。

 胡散臭くて仕方が無いよ。

 然も、明確な王国軍との防御戦闘を結局指示しないまま、なし崩しに我々は防御戦闘に入ったのに、それへの対応指示も無いままだ・・・。

 これらのことを考慮して、私はやって来る救援軍と称する大公国軍に対し、警戒を持って対応するつもりだ!」


 かなり胸襟を開いた話しをいきなりし始めた代官に、最初に話しを振ったラング団長は、俺と守備兵の司令達と顔を見合わせて頷き合う・・・。

 恐らく代官は、今までも度々本国の指導部に煮え湯を飲まされていたようで、かなりの不信感を大公国の動きを怪しく見ているらしい。

 ならば、


 「・・・それでは、私共が掴んでいる或る情報を報告します・・・。

 実は、救援軍としてやって来る筈の大公国軍は、明らかに軍隊とは思えない部隊を連れて来ていて、詳細な諜報活動で正体を確かめて見ると、何とその正体はならず者や野盗の類でした。

 其奴等は此処に向かう道中でも、既に有り得ない事に自国の民衆に対して、略奪を繰り返していて本来それを取り締まる側の、大公国軍本軍も見て見ぬふりをしています。

 恐らく此の無法者達を、此の国境の街で解き放ち、混乱の巷と化させて王国軍と連携し、王国軍に国境を越えさせて、そのまま首都まで王国軍を侵攻させて、事実上大公国を王国に降伏させて、新宰相がそのまま大公達を追い出して、王国から統治委任を任せる形で、新宰相を統治者とする目論見ではないだろうか?」


 その提言を受けて、代官は。


 「・・・あり得るな・・・、此処まで状況証拠が整っているのだから・・・。

 つまり、我々とこの街は奴等にとって、生贄のスケープゴートとして利用する存在という訳だな・・・」


 と、心情を吐露して来たので、諸々の擦り合わせをして、今後の展開を予想して俺達は、代官を巻き込んで様々な対策を検討して、幾つかの対処法と対応策を決定した。


 代官の要望としては、領主の家族を安全な場所で保護して欲しいという事なので、幾つかの段階で対応して行き、最終的には傭兵団【鋼の剣】の拠点ホームで匿う事が決まった。


 その為に拠点ホームの護りを強固な物にする為、俺の持つ幾つかの技術と、傭兵達が手隙の時に逆茂木や木製の高さ5メートルに及ぶ壁を作る事となった。


 又、街の方でも従来の門や壁を強固にする措置が取られ、以前は無かった大公国側への警戒線も準備して行く・・・。


 そんな対抗策と準備が整って行く中、いよいよ救援軍と称する大公国軍が遠目に確認出来た。

 その間、代官は幾度も近づいて来る大公国軍に、救援は必要が無く、王国軍は問題無く退けていると、連絡を軍使を使って往来させているのだが、言を左にしていて全然話が通じないらしい。


 どうやら危惧していた通り、大公国軍は王国軍と連携して此の国境の街を攻め落としてから、王国軍を国内に招き入れるつもりの様だ。


 (こんな卑劣な策を講じてきた奴等には、それ相応の報いをくれてやろうじゃないか!)


 そう思いながら、俺は大公国軍に対して代官達を伴い、軍使の体を装い向かうのであった・・・。

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