第一章 第41話 国境の砦での戦闘④
王国軍が、砦正門での戦いで撃ち減らされて行くのを遠望し、俺は配下の傭兵達に号令を下す!
「・・・さて、やるとするかな・・・」
「「押忍!!」」
此の応答の意味の言葉は、最近になって拠点に建築した道場で使われている言葉で、其処で傭兵達に武術を教えている際に、俺が毎日心掛けして挨拶していた言葉であり、此の部隊にとって「了解」の意の言葉は【押忍】となっているのである、まあ、あくまでも俺達の部隊だけの時の隠語の様なものだが・・・。
そして俺達の部隊は、隠れる為に使用していた【隠蔽シート】を捲くり上げて、一気に隠れていた土中から飛び出した!
俺達の部隊は昨日の夜の内に、予め砦外の離れた場所で土を掘り、其の上に【隠蔽シート】を被せて、そお土中に待機していたのである。
此の行動は、全ての内容は傭兵団の幹部と、守備兵の司令部のみにしか知らせていない、極秘任務であり、重要な作戦でも有る。
つまり、此れまでの反撃作戦が行われ、王国軍が混乱した際に、前回は用意しなかったが、今回は効果的だろうと考えた、伏兵戦法である!
想定通りに、俺達が土中から飛び出して、一気に支援魔法を全員で発動させて、強化された身体を駆使して脚力を上げた俺達が、王国軍に肉薄しても、気付く王国軍は皆無であった。
ドオオオーーンン!!
此の地響きを伴う爆発音は、凄まじい火魔法でも火力の高い、【ファイアーボール】を封入している【魔法石】を、王国軍の懐に入った俺達の部隊は其処ら中にバラ撒いて、同時に発動させた際の音で、その攻撃は完全に王国軍の目と耳を塞ぐ事に成功する。
当然、目と耳を塞がれた王国軍は、規律の取れた行動を取れる筈もなく、命令が円滑に行われない中、雨霰の様に降り注ぐ攻撃魔法等で、膨大な被害を被って行った。
その間も俺達の部隊は、砦からの攻撃を受けない様に、気を配りつつ要所を選択しながら、適切な地点へ【ファイアーボール】を封入している【魔法石】を投擲して行った。
流石に此処まで一方的に被害が続出する羽目になって、漸く王国軍の司令部は全面撤退の決断をして、銅鑼による撤退命令を戦場全体に鳴り響かせて、王国軍を全軍撤退させて行く。
だが、初戦と違い、王国軍は秩序正しく撤退出来る程、余裕がある訳でも無いので、砦からの遠距離攻撃と、俺達による至近距離での爆裂攻撃で、5000人の兵力の内2000人の兵力を、今回の戦闘で失う羽目に陥ってしまったのであった・・・。
戦場の常識で考えるならば、戦力の40%を失い、又、敵には全く損失を与えられない状況ならば、戦争そのものを止めるのが、セオリーと見るべきだが、王国はどの様な決断をするのであろうか?
そんな事を考えながら、俺達の部隊は全員集合して、部隊員全員が無事な事を確認し、砦に戻って行った。
王国軍はまともな行動も取れずに、這々の体で逃げ出したので、そのまま元いた駐屯地に戻らない兵士も多く、どうやら半数の兵力しか、駐屯地に居ない様である。
俺は、【探査ブイ】に送られてきた情報を、あたかも諜報部員が調べて来たかの様に、その日の夜間に行われた砦の司令部での作戦会議で報告して、如何に王国軍が疲弊しているかを、報告書に纏めて列席者に開陳する。
最初こそ、守備兵の司令官等は驚いていたが、報告している俺が昨夜からの伏兵戦法を見事に成し遂げた、張本人である事を知っているし、又、【隠蔽シート】の効能を理解しているので、直ぐに納得してくれている。
結局、国境の砦としては、王国軍に大損害を与えたので、今後はどうするべきかの判断を、首都の大公や大公国の指導部に宛てて、報告書を携えた一団を編成して送り出した。
その一団は、恐らく救援軍と称している、首都からやって来る大公国軍に補足されるだろう。
その際の、大公国軍の対応次第で、本当に救援軍なのか?、別の意図のある軍勢なのか?、がハッキリすると思われるので、一団には護衛として傭兵団の一人を入れていて、場合によっては直ぐに逃走する様に指示している。
当然、此の一団を保護する為に、探査ブイからの監視の目と、小型ドローンによる保護が行われていて、命の危険が生じたら、疑われない程度の手助けが行われて、無事に国境の砦に戻れる様にしている。
まあ、その場合には、国境の砦を守る守備兵が大公国から、見捨てられた形になるので、幾つかの決定的な対応をする羽目になるだろう・・・。
此の場合を想定して、アンジー達と相談しておこう。